魔王の娘、暗殺未遂事件。
姫の解放路線は続いている。
魔族12諸侯は野にくだり、
ふたたびその座を取り戻したり、
固執したりすることは無かった。
彼らは、サルシャ姫の下す裁定を畏れて、
隠れ潜むように過ごすようになったからだ。
「でも危ないんじゃないか突然、
うしろから刺されたりしない?」
「そうね勇者」
今や完全に勇者パーティーの一員となったサルシャ姫、
一時は感情的に敵対していたのが嘘のような、
馴染み具合だ。
「その時はそこまで遠くは無いようね」
彼らの乗った馬車を待ち伏せするように、
黒いローブの一隊がこちらに駆けてきた。
「敵襲!?」
勇者達は急ぎ馬車から出て、応戦する。
黒いローブの一隊と切り結ぶと、
相手の顔が明らかとなり、
魔族であると知れた。
それを見たサルシャ姫は馬車から身を乗り出して答える。
「我が名はサルシャ、魔王の娘なり!
貴様らは何者の差し金で動いているのか!」
ローブの相手は答えようとしない、
それどころか、攻める手を止めず、
サルシャ姫のほうににじり寄ろうとする。
「させるか!」「おう!」
勇者の剣と盗賊の短剣が相手をし、
敵を一身に受けてそれを凌ぐ。
「なかなかの手練れだな」「そのようだ」
何合も切り結んで、倒せたのは数人か、
魔族の中でも選りすぐられたものであるは知れた。
「死ぬがいい!」
「させない!」
僧侶が杖で一撃を払うと、素早く魔法使いが詠唱し、
「アイスフィールド!」
攻め手こようとする相手を凍りつかせた。
「ふぃー危なかったな、
さて吐いてもらおうか、
誰の差し金か?」
「!?勇者!みんな!避けて!!」
突然の詠唱!
爆発!
「みんな無事か!?」
馬車は大破し、襲ってきた一隊はすべて、
はじけ飛んでいた。
「自爆魔法とは穏やかじゃないわね」
魔法使いは詠唱痕から敵の魔法を察知した。
「彼らからは何か強力な信仰が感じられました」
僧侶は自爆特攻までする敵の忠誠心から推測した。
「何にしろ、やばい連中を相手にしてるのは確かだ」
盗賊は遺骸を足で転がすと、魔族の顔を確認した。
「姫さん、こいつらに見覚えはないか?」
「分からない、でもこれだけは言えるわ、
連中は大魔王を信仰してるテロ組織だってね」
サルシャ姫の推察によると、
「今現在の魔族領は大魔王回帰派と現魔王派閥に、
分かれていて、魔界からの直轄統治を望む連中が、
少なくないのよ、その一派が私の命を狙ったのね」
「テロとなると穏やかじゃないぜ、
敵を推測するにも、少数で瀕発する連中だろ?
当たって砕けろの連中相手に戦いは挑めないしな」
盗賊に続いて魔法使いが答える、
「更には相手は爆弾なんてちゃちなものじゃない、
即座詠唱できる、自爆魔法持ちの連中よ、
爆弾なら入手ルートから特定できるけど、
魔法は完全に秘匿して教育が可能だから、
これからも容易に自爆特攻を仕掛けてくるはず」
「さすがに自爆する相手に戦いは挑めないな」
「彼らの信仰が確固たるものであるほど、
攻撃は激しくなるでしょうね」
勇者と僧侶はお互いの無事を確認しながら、
サルシャ姫のほうに向きなおった。
「大魔王を討伐するしかないわね」
サルシャ姫は大魔王討伐の為の作戦を、
練ることを決めた。
この先生き残ることができるのか?




