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迷惑な紙飛行機

それはとおい未来の話か?

いいえ、今のお話か? むかしむかしの物語?

だれにもわかりません。

「ええい!これでもか!これでもか!」

小説投稿サイトの小説に感想をつけ始めてから200作品を越えたあたりで、

誕生し始めた煩悩は山の様になって、うずたかく積み上がっていた。


「あれも読んだ!これも読んだ!つもりになっていたからか!」

今では湧き上がる感情の落ち着けどころが分からず、

辺り一面に広がるブックマークの数々に翻弄され、

完全に出口が塞がれていた。


「箱庭に入り込んでしまったということか!」

ただ感想の山にいる男はまったく捌けない小説の数々に脅威を感じ、

これをままにしては死んでしまうと生命の危機を感じていた。


「脱出しなければ、なるまい! このまま闇に呑まれてはなるまい!」

男は1つの文を紙飛行機にすると、すっと飛ばした。


「この異世界転生とチートの山のような世界から脱出させておくれ!」

男の祈りは届くのだろうか? ただ紙飛行機は旋回しながら飛び続けた。




そこは異国、異世界、一通のメッセージが届くはずの場所。




「さてと書類を整理しなくては」

一人の背の高い男はそういうと書類の上にのった紙飛行機を見て、


「こんなものあったっけな?」

そう言いながら手につかむと、

再び紙飛行機を窓からスッと飛ばして、


「さて、書類を整理しよう」




紙飛行機は異世界をさまよって、森を抜け、山を越え、

モンスターの親子の下に届きました。

「がおー!! なんだこれ?」

「あっ知ってるわよこれ、こうやって遊ぶの!」


紙飛行機を手に取って再び飛ばす親モンスター、

子モンスターは大喜びで、これを手に取ると、

高く高く飛ばしました。


「うわぉー!!!!」


紙飛行機は旋回してぐるぐると上昇気流に乗って、

海を渡る海鳥モンスターのもとへ、


「ん?翼に何か引っかかったかな?」

何匹もの海鳥モンスターは、

大きな翼に引っ掛った紙飛行機にしばらく気づかず、

やがて次の大陸についた時に、


「おーこんなものがついているとは、

 バタバタッ!」


っと紙飛行機を吹き飛ばしてしまいました。

紙飛行機が落ちたのは王国。

そこには一人の王様がいました。


「暇じゃ」


もちろん衛兵やお妃さまもいますが、

王様は退屈していたので、

ヒマじゃ、と口癖のように言っていました。

王様の目の前に紙飛行機があるというのに。


「?なんじゃこれは」


王の間で王様は紙飛行機を拾うと!


「王様、あぶのうございます!」


王様の近衛兵はこういって、

王様から紙飛行機をとりあげようとしますが、

「ええい!ひかえよ!我はこれが気になるぞい!」


王様は紙飛行機を拾うと観察をはじめ、


「ふむっふむっ」


やがて飽きると。


「なんじゃただの紙飛行機ではないか」


と王城のベランダから放り投げてしまいました。



再び空を舞う紙飛行機、

しかし紙飛行機の命運もついに尽きるのか、

空は雨雲、

しとしとと雨が降り始めてきました。


そうなると紙飛行機は飛べないので、

落ちてしまって、そこはお寺の敷地でした。


「なんだろうこれは」


お寺の小僧さんは紙飛行機を拾い上げると、


「一日のアテを探して迷い込んだ鳥かもしれない、

 一日宿として雨宿りさせてあげよう」


とやさしい気持ちでお寺に雨宿りさせてあげました。


翌日。


「さあ羽を広げてごらん!」


と紙飛行機を晴れた空に向かって飛ばすと、

紙飛行機はふたたび上昇気流にのって飛び立ちました。


ぐんぐんと飛んでいく紙飛行機、

やがて魔王城にまでたどりつくと、

魔王さまの下に落ちました。



「なんだこれは」


魔王さまはすこし警戒しましたが、

それが魔力を放っていないことを確認すると、

紙飛行機を解きほぐして、一枚の文に戻してしまい。


「なになに、何が書かれている?」


読み始めたその時!


「かかったな愚か者め!」

「なっなんだこれは!」


魔王の元に2000000件もの感想の山がどさりと溢れかえり、

たちまち小説の山も頭の上から落ちてきて埋もれてしまいました。


「これは苦しい! どんな魔力が込められていたのだ!?」

「はっはっは!これは感想に悩んだ私の命の軌跡!

 そして封印を解いてくれたなありがとう!

 これで私は完全に自由だ!

 さらば小説投稿サイト生活!

 完全に貴様に託したぞ! ハッハッハッハ!」


魔王は自分の手にある文を読み終えると、

起きた出来事の正体に気付きました。


「おのれ人間め!

 自らが感想をつけるという行為を!

 この魔王になすりつけたか!」


その日から魔王さまは文の魔王となられ、

感想文と苦闘する日々が始まったのです。

紙飛行機を拾ってえらい目にあいましたね。

それはそうですよね。

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