戦後処理の必要
まだ魔族と人間の戦いの歴史癒えぬ大地で、
互いに禍根が残る中の出来事である故に、
すこしずつ自浄作用が働き始めたそう捕えてよいものか?
「剥製は丁重に扱って人間の村に墓地と慰霊碑を立てますわ、
もちろん全費用は魔族が持ちます」
サルシャ姫はそう言うと、
部下の魔族たちに委ね、
また僧侶は、
「戦没者もふくめ犠牲者は、
こちらで埋葬いたしますので、
魔族の方々もぜひいらしてください」
そういうと、
戦後裁かれなかったブレイバル将軍の墓まで作って、
全体のいきさつを正確に記録し、各地の僧にこれを伝えた。
歴史的な出来事だった、
戦後、法の不遡及で裁かれることを逃れていた、
ブレイバル将軍を、現在進行形の罪で、
勇者達に裁かせたのである。
多くの魔族は魔王の方針転換だとしたが、
かくいう魔王は大量の蔵書に囲まれて、
今日も感想文という名のファンレターを書く毎日を送っている。
魔族はこのことに畏れおののいた、
現在も人間に対し迫害を加える魔族諸侯が、
多くいたからである。
ブレイバルの一件はみせしめとなった。
「さてと勇者様方」
「なんだいお姫さん?」
「わたくしサルシャは更に進まなければなりません、
ここで立ち止まっては死んだブレイバルが、
地獄で孤独を味わうことでしょうから」
茶器で茶を飲むサルシャ姫と勇者一行、
「まあ、そうね、
まだまだ魔族、いえ、
魔王の罪は残っているのだから」
魔法使いは魔法使いの里を滅ぼした張本人を探していた。
「分かっているのは、
一方的虐殺や生贄の儀などを、
行った魔族は後を絶たないということ、
そしてその名前が知られるところになって、
人間界、魔王領両者で畏怖の対象になってること」
「魔王の配下にも沢山の罪人がいるようだな、
まっ俺たちは今回の一件で、
多少、王国での評価が戻ってきたようだが」
勇者達が死刑執行人として働くことで、
結果的に国際関係の微妙なバランスに作用し、
魔族、人間族両方にとって腫物扱いである存在に、
鉄槌を加えられる。これは両者にとって朗報であった。
「次行こうぜ姫様!
俺たち血に飢えた獣!
喉がかわかないうちにな!」
「ええ、論調が我々に有利なうちに、
動く必要がありますわね」
「次の相手のことはよく知ってるわ、
魔力の限界を極めようとした大悪人」
魔法使いが語る、
その悪人である魔族は、かつて人間であった。
人間であったその男はある時、
魔法使いとしてより強い力を得るために、
大魔王と契約した。
それにより大魔王に生贄をささげることで、
果てしない魔力を獲得する事となり、
人間界で畏れられ、実際に魔法使いの里に住む、
人間という人間を生贄に捧げて、
大魔法使いとして、デーモンとしての格を引き上げ、
地獄の公爵を自ら名乗る極悪非道の輩である。
「おれは盗賊だが、そんな大悪党に成り下がるのは御免だぜ、な勇者」
「ああ、俺たちの正義は揺るがない、
魔王の娘と仲間たちが示す確固たる証拠がある限り、
その剣を振るうことは法に基づいた執行になる、だろ?姫様」
「ええ、そうよ、たたかうことに大義なければ、
誰も振り向いてはくれないわ、
私たちは法の下で現実に起こってる罪を裁いているの」
敵の名は地獄の公爵グレッペター、
いかな罪を抱えた存在でどう裁かれるのか?
今度の相手はデーモン、
そして魔族諸侯の一人、
人間から成り上がったエリートだ!




