ブレイバル将軍の蛮行
サルシャ姫は再び魔族領を旅することに決めた、
それは何を為す為の旅なのか?
魔王領で前線に位置する場所に屋敷を構える、
魔族はブレイバル将軍はその巨大な体躯で、
幾度となく戦場を駆け抜け戦功を上げたが、
「まったく魔王さまはなにをしてらっしゃるのだ!」
今魔族と人類は停戦協定を結び、
平和な時代に突入していた。
「本などを読みふけるばかりで、
人間が怖れをなすどころか舐められることばかりだ!
何を考えて、これを為しているのだ」
と、一通り憤ってみせたところで、
「これでは人間を剥製にできないではないか!」
ブレイバルの屋敷は数々の人間の剥製で飾られ、
それは戦功の証として、数々の虐殺の証拠として、
高らかに壁に掲げられているのである。
まるで狩りで取った獲物を誇るかのように。
「まあいい、奴隷ならいくらでも買い取ることは出来るし、
命知らずな冒険者の剥製でも作るのも悪くない、
ただ問題は日に日に、銭が掛かるようになることだ、
人間の剥製、これはオレの生きがいだからな」
「ブレイバル将軍、手紙が参りました!姫様からです!」
「なにっ姫様からだと?」
ブレイバルは手紙を読みだすと鼻息荒く、これを読みだす。
「なんと、この前線に来られるというのか!?
これは絶好の好機!
姫様に現状打開を願い出よう!」
さっそくブレイバル将軍は姫様をもてなす、準備をし、
その準備は整った。
「さああとはサルシャ姫さまが来られるのみだ」
「姫様が来ましたよ!」
「ふんぬ!よくぞ来てくれました!
姫様! ブレイバル大いにもてなしますぞ!」
サルシャ姫が馬車から現れた、
「これはブレイバル将軍、元気そうで」
「ささっこちらへ」
客をもてなすための部屋は相変わらず悪趣味な人間の剥製が壁にあり、
全身の剥製もまた、長い廊下にいくつも飾られていた。
「この人間はどこの戦で?」
「はは、千の捕虜を得た戦いで、その名だたる将軍を剥製にしたものです」
「残りの捕虜はどうしましたか?」
「?すべて魔物の餌と致しましたが」
「そうですか、殊勝なことですね」
サルシャ姫は淡々と何度か、飾られた剥製のことを、
聴いて回ったがその度に、ブレイバル将軍は戦功を誇り、
そしてどれだけの人間を屠り、非戦闘員まで惨殺したかを語った。
「この壁に掛けてある剥製は?女?ですか?」
「ええ!敵の農村に攻め入った時に、
一番の美女を剥製にし飾ったものです」
「村をですか? 他の村人は?」
「もちろん殺しましたとも、これでもかと痛めつけてです」
ブレイバル将軍は何度も何度も、
どれだけ戦功を上げたか、
そしてどれだけの人を殺したかを、
ジェスチャー(みぶりてぶり)を踏まえて楽しそうに語ってみせる。
将軍の呼んだ、他の来賓もまたその話を楽しそうに訊いているが、
サルシャ姫の表情は堅い。
(姫様はなかなかの堅物なのだな、だがここは男ブレイバル、
戦いがなんたるかを語って差し上げなければなるまい!)
「姫様、わたくしめが、功績をもっとも功績を上げた戦の話をしましょう、
あれあそこに飾ってある男こそ、敵軍の大将軍たる男で、
奴を打ち取ったことで人間軍は総崩れとなり、一万の捕虜を得ました。
その捕虜もわたくしめが命じて、もっともむごい殺し方をしてやりましたとも、
これは他ならぬ魔王さまに捧げる生贄でしたゆえに!」
「もうよい」
「はっ?姫様、今何と?」
「もうよい、聞き飽きたわ」
サルシャ姫がそう言い終ると、
客をもてなす部屋にローブを目深にかぶった一組が現れた。
ブレイバル将軍の前に現れたものとは?!




