表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Legendary Saga Chronicle  作者: ポテトS
9/36

 結局、王族パーティ達が向かったとされる場所には行かなかった。

 では、何処にやってきたのかと言うと伝説に倣って【勇者王のハジマリの地】とされる村があったとされる場所だった。


 伝説に曰く。

 その村には美しく信仰厚い村娘がいた。

 ある日、この村を魔族が襲う。

 そこに現れたのが、神様によって派遣された勇者王だったらしい。

 勇者王は、村を襲っていた魔族を神によって与えられたとされる聖剣で滅ぼしてしまう。

 これが、彼の輝かしいスタートなったのだ。


 「俺みたいに、どっかの建物の中とかじゃなかったんだ?」


 今では、その勇者王ハジマリの地として観光地となりそこそこ発展している街の中。

 甘いものが食べたくなったというレジナが入った喫茶店にて、注文し運ばれてきたケーキセットに舌鼓をうちつつ、二人はこの街のパンフレットをテーブルに広げそんな会話を交わしていた。


 その場所は王都に程近い場所にあった。

 つまり、王都周辺をレジナはあちこち巡るプランのもと行動しているようだった。


 「伝説によれば、勇者自身が神様に言われたとおり動いたら村を救うことになった、とか言い残したらしいよ」


 「でも、よく五千年も村が残ってたね」


 「いやいやいや、村が存続し続けたわけじゃないよ。

 この長い時間の中で、村は人同士の戦争でいつの間にか歴史の表舞台から消えたんだ」


 「え、でもファルゼル王国は建国以来ずっと、少なくとも王族の家系は続いてるんじゃないの?」


 「表向きは、ね」


 アイスティーを一口飲んで、レジナは声を顰める。


 「あんまし大きな声でこんな話すると変な目で見られるからさ。

 んとね、そのことに関しては一部の研究者や陰謀論者達が否定してる」


 つられて、カガリも声を小さくする。


 「そうなんだ」


 「何しろ五千年だからね。

 王族、王室に関する黒い話も多いよ。

 近親相関に暗殺の歴史。これはこれで読み物として知る分には面白いけど」


 と、レジナは街に入る時は必ず身につけているショルダーバッグから、割と新し目な本を取り出した。

 彼女曰く何もないところから物を取り出す、いつものアレも実はとある伝説上の人物が使っていたなんでも収納できるアイテムを使っているのだが、アレもかなり珍しい物であり端から見ると異様な光景に映るのだ。


 「五千年の間に、王家も消えては復活を繰り返してるし」


 「消えたことがあるんだ?」


 「そう、その時代時代の強い国によって侵攻され滅ぼされたりしてる」


 「でも、復活してると」


 「うん。まず、血が続いてる方の説だけど、これは何処ぞの村娘やメイドを手篭めにして産ませたご落胤説と実は王族の生き残りがいて成り上がった説、あとは戦の作法的なもので位の高い女子供は殺さないで保護するっていう暗黙の了解があって、姓は変わったけど血は続いていた説とあるね。

 で、次、血が途絶えてる説だけどこれは簡単。

 戦争で敗けて、一族郎党皆殺しになったけれど誰かが名前を利用して続いているように見せかけた」


 「成り代わった?」


 「そういうこと。肖像画でくらいしか王族の顔なんてわからないし。中の下レベル一般人の家にそうそうそんな絵が飾ってあったとは考えにくいしね。

 そもそも肖像画もあったかどうか。いや、とある壁画から絵の具はあったしイベントごとや特別な存在を絵にして残すっていう文化は国によってはだいぶ古い時代からあったとわかってる。

 ただね、描かれてる対象が赤ん坊だったら?

 そもそも一族郎党皆殺しになったら、成り代わった人物が本物かどうかもわからないでしょ。

 体に特徴的なアザがあったーとか、王家に伝わる家宝をお守り代わりに持ってたなんてところで証明になった時代の話だし。

 ま、そんなわけでファルゼル王国の王家は途中で誰かの成り上がりに利用されて、初代の血がそもそも流れてない説がある。

 まぁ、どちらにしろ本当のところはわからないけどね」


 と、そこで何かを思い出したのかレジナはニンマリと笑って、カガリを見た。


 「そうだ、ついでに面白い話をしてあげるよ。

 もしかしたらこの先、勘違いされるかもだし」


 なんの話だろう?

 コーヒーを飲んで、カガリは続きを待った。


 「あのね、あたしの魔眼についてなんだけど」


 「う、うん」


 「魔法石やらに加工できるって話、したでしょ?

 魔眼持ちが物凄く珍しいとも」


 「うん」


 「で、品種改良と研究をすすめてモンスターからも安定して採取できるようになったことも話したよね?」


 「聞いたよ」


 「じゃあ何故、そもそもこんな魔眼が存在するとおもう?」


 「え、えっと、遺伝子の異常とか?

 俺がいた世界だと人を形つくる情報のどこかが誤作動をおこすかなんかして、髪や目の色素が薄くなる人がいたけど」


 「へぇー、なるほど。その辺は錬金術士関連の研究論文で読んだことあるわ。

 うん、たしかにそういう説もあるよ。

 でも、伝説好きとしてはこっちの説が好きかな。

 この魔眼が伝説に登場する【賢者の石】のオリジナル、違うか元ネタになった説。

 昔昔、この世界を作った神様が、より詳しく世界のことを知るために仕込んだ瞳が魔眼の正体なんじゃないかって話もあるしね。

 本当かどうかはわからないよ。でもだとすると、ちょっとロマンがあるでしょ」


 「そうなの?」


 「だって、この昔話が本物なら神様が存在するってことになるよ」 


 なんとなく、ゲームやパソコン等のプログラムであるバグとかなんじゃないだろうか、とカガリは思ったがうまく説明できる自信が無かったので黙っておいた。


 「と、そうだ。

 この街のことだけど、パンフレットにも書いてあるけどこの街は今から五十年まえに出来たらしいよ。

 その当時は村で、それこそ開拓村だったみたい。

 で、開拓を進めていったある時、とある畑から今使われてるものとは違うデザインの硬貨を発見した。

 色々調べた結果、近くで古い村の痕跡が見つかって、色んな学者が出した答えがその古い村が伝説上の勇者が最初に訪れた村だと分かったらしい」


 「でも、ここには勇者の墓も剣もないよ」


 「うん、でも伝説が遺ってる」


 楽しくて仕方ないとばかりに、レジナが続きを話そうとした時だった。

 店の外が何やらざわついてる事に気づいた。

 同時に、店の出入口から人が転がりこんできた。

 文字通り転がってきたのだ。

 誰かに投げ飛ばされるか蹴飛ばされるかしたらしい。

 穏やかなスイーツタイムが台無しである。

 続いて店に入ってきたのは、王族パーティのメンバーの一人であり、カガリの元クラスメイトでありイジメの主犯の一人とかってに彼が思い込んでいた人物だった。


 短い茶髪のその少年の登場に、レジナとカガリは顔を見合わせる。

 転がった者は男性だった、こちらはなんとか立ち上がり少年を睨みつけた。

 黒髪黒目の歳の頃二十歳ほどの青年である。

 黒髪は長髪で、高い位置で束ねられておりまるで馬の尻尾のようである。


 「おー、痛え。何すんだこのクソガキ」


 口の中が切れたのか、手の甲で拭いながら男は言った。


 「あの女の子は嫌がっていた。それを助けただけだ」


 平然と少年が返した。

 青年が、眉を顰めた。


 「はぁ? お前なに言ってんだ?」


 「とぼけるな! 年端も行かない女の子に乱暴を働いただろう!

 とにかく、役所に突き出してやる!」


 「別に良いけど、たぶん恥をかくのお前だぞ。

 それと、暴行罪で事情聴取されんのもたぶんお前のほう」


 『うっわ、なんだこのガキめんどくせぇ』と青年の顔に書いてある。

 さらにそこにもう一人現れた。

 金髪碧眼の美少女だった。宿にいた王族パーティメンバーの一人である。

 顔立ちから召喚された者ではなく、こちらの世界の者だろう。

 つまりは王族の一人、お姫様だった。


 「それはどうでしょう?」


 凛とした声で少女が言った。

 

 「私の証言もあります。不利なのは貴方ですよ」


 そんなやり取りを眺めていたレジナが、困った顔になった。

 黒髪の方は、レジナの知り合いだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ