王宮までの道のり
シュナイゼル・ナルキッソス・ドゥ=ミフル・アルメニア。
このアルメニア王国で知らぬ者はいないだろう、何故ならこの国のやんごとなき第一王子なのだから。
国王似の涼やかで意思の強い春の空を映したかのような瞳。春の日差しを閉じ込めたかのような鮮やかな金糸の髪。
その美しく鮮やかな容姿から虹彩の貴公子というあだ名までついている。
容姿だけなら一級品だ。容姿だけなら…。
「はぁ…。」
私は馬車の窓枠に肘をついてため息を零した。
「お嬢様、背筋を伸ばして下さいませ。ため息も淑女らしくのうございます。」
「ため息もつきたくなるわよ…。言っちゃなんだけど…ほら、これから会うのはあのシュナイゼル殿下よ…?」
「…お嬢様、ファイト!で御座います。」
「ファイトって…貴方ねえ…。」
これ以上の言及は受け付けないとばかりにアザレアはふい、と視線を逸らした。
ずるい…ずるいわ…!他人事と思って…!
そう1人心の中で地団駄を踏んでいると私達を乗せた馬車が止まった。
「あぁ…。着いてしまったのね…。」
どうか平穏無事に今日という日を乗り越えられますように…。
果たしてそのささやかな私の願いは、叶うのだろうか…。