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また巡り会えるならば
「ーーー貴方の夜は私が晴らすわ。」
長い長い、途方も無く長い玉虫色に移り変わる巨大な穴を独り落ちゆく。
どうやら、はるか下で輝く光がこの穴の終着点のようだ。今はまだ米粒程の光だけれど。この巨大な穴の作用なのか、記憶は徐々に薄れ彼の顔も名前も、体温も忘れつつある。
しかし、未だ私の心に灯り続ける温かな愛、それだけは残さず持っていこう。
この愛は、貴方に愛され貴方を愛した瞬間から私の心に根付いて色褪せず染み付いたものだから。
ごめんなさい。
さようなら、愛しい貴方。
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聖暦1000年、12月21日。栄えあるアルメニア王国の1000年目の建国記念日に美しい少女は生まれ落ちた。
その瞳に夜明けを、その手に「神の涙」と呼ばれる尊き宝石を握り持って。
この話は、のちに夜明けの女神と呼ばれる、エリーザベト・ディセントラ・フォン・カサブランカの愛と試練の物語である。