01-04
一樹の武器が決まると九重は「ちょっと練習しとこうか」と言って、屋敷の裏にある山を登り始めた。一樹も茶々もそれに続く。
山頂は一樹の通う学校の校庭よりも広かった。縦横五百メートルはある。
「さぁ、練習の前に一樹の妖刀の銘を見て能力を教えてあげよう。銘は鞘に彫ってあるから見てごらん」
言われた通り鞘には『竹千代』と彫られていた。
「竹千代かあ。竹千代は植物型、季節・夏、夜を有している能力の多い妖刀だ。まずは身体強化を練習してみよう。鞘から竹千代を抜いてごらん」
一樹は言われた通り竹千代を抜く。露わになった刀身は美しい。色白く光を反射する刀身はまるで魂を吸い込まれるかのように惹きつける。
刀身に見惚れる一樹を見て「まぁ、妖刀だしね。魅了するくらいはするかもね」と呟くが一樹の耳には届かない。
九重はパンパンと手を叩いて一樹の意識を戻す。
「さて、竹千代の能力を練習する前に一樹君には一通り素の状態の限界値を知っておいてもらう必要がある」
「つまり?」
「これより体力テストを行う」
九重の言いたいことは理解できる一樹であるが、体力テストとなるとかなり時間をとる。今の一樹にそんな時間はない。
そんな一樹の心情も察しているかのように九重は「心配は無用だ」と言ってその理由を教える。
「一樹君がいるこの場所はね、もう気付いてるかもしれないけれど、普通じゃない場所だ。どう普通じゃないかといえば、僕の意志で何処にでも繋がれる、一樹君が暮らしている空間と違って時間の流れを操作できる。最大この場所での一日を向こうで一時間くらいまでに出来る」
つまり、ここで一日練習をしても現実では一時間しか経たないと。その場合ここを出てもまだ午後七時前ということになる。
ご都合主義め。
それから一樹は九重に言われるがまま体力テストを行いへとへとになるまで走った。
「よし、こんなもんでいいだろう。少し休んだらいよいよ妖刀の能力の練習をするよ」
九重は茶々の淹れたお茶を啜りながら休憩している。対して一樹は地面に寝転がる。そうして休憩時間が過ぎていく。
「さて、そろそろ始めようか」
九重のこの一声で始まるのは異能の練習。
「まずは身体強化から始めよう。さっき計ったタイムだと百メートル12秒といったところだ。まずは二倍の6秒を目指そうか」
そう言って身体強化のやり方を教えるも、基本的に能力は妖刀頼みのため、初めは妖刀とのコミュニケーションの取り方からだった。
具体的に言葉にしてやれば妖刀はそれを体現してくれるという。ただ基準が分からないため、それを教える意味でも先程までやっていた体力テストは必須だったようだ。
「俺が全力で走って百メートル6秒くらいになるように身体強化を頼む」
一樹がそういうと竹千代が光った、ような気がした。
とりあえず走る。すると先程までとはまるで違う速度が出て物凄い驚いた。タイムを計っていた茶々さんは「6秒ジャストです」と教えてくれる。
「いい感じじゃないか。今日はしっかり口にしないといけないけど、一週間もすれば念じるだけで伝わるようになるはずだよ」
ほー、そのうち口に出さなくても出来るようになるのか。
「とりあえず今日のところは二倍速で自由に動き回れることを目標に頑張ろうか」
それから九重の言う通り二倍の速度で自由に動けるように練習をした。といっても思考の速度も肉体に合わせて加速しているので一樹としては普通に運動しているようにしか思えなかった。
むしろ一樹は肉体よりも少し思考を加速するように竹千代に頼んだ。具体的には2.2倍速。こうすることで思考が少しだけ先行し、咄嗟の出来事にも対応できるように工夫を凝らした。ただやはり考えるよりも少し遅れて身体が動くため違和感はぬぐえなかった。
「うん、基礎能力は十分かな。後は徐々に慣れていって三倍、四倍と速度をあげれれば盤石かな。明日は形態変化について練習しよう」
「明日もあんの?」
「え?いや別に一樹君がしたくないならしなくていいよ?僕は一樹君が魔法少女達と戦えればそれでいいわけだし、練習もなしに異能が使いこなせるならいいんじゃない?
曰く、努力とは結果を出すために行うものであり、結果を出せる者には不要、と言うしね。練習を拒否していざ戦闘になったら使えませんでした、で困るのは僕じゃないし」
「はい、がんばります」
「よろしい」
「練習ってここですんだよな?」
「そうだよ?」
「ここってどうやってくんの?俺今日道に迷っただけなんだけど」
そう、一樹はこのよくわからない場所への行き方を知らない。今までの会話の中から今日は九重が無理矢理取り込んだらしいのだが、本来ここは魔法少女の結界という魔法と同質の異空間。普通にやってこれる場所ではない。
「それに関しては問題ないよ。ここへの来方は竹千代にお願いすれば竹林堂への道に繋いでくれる」
「そういや竹千代ってどうすればいいんだ?」
「どうすればとは?」
「いや、だって刀だし持ち歩けないだろ。持ってないときに襲われるとか嫌なんだけど」
ああ、そゆこと。と九重は一樹の不安を察し問題ないことを教えてくれる。
「竹千代に限っては問題ないよ。何せ竹千代の型別能力は『形態変化』色、形、大きさ、重さを自由に変えられる。一樹のイメージが具体的であればあるほどより精巧になる。時計や衣服、指輪なんかにもなれるから何処にでも持っていけるよ」
「指輪や時計か」
「そう、植物型は持ち運びに便利なんだよ。木にだって出来るから飛行機の中にも持ち込める」
「何それ超便利」
「けどあんま変なものに変形させると怒るから気を付けて。妖刀にも自我があり、人格がある。好き嫌いも当然あるんだ。刀の形をした人だと思っておくれ」
「刀の形をした人、ね。ということは人間にもなれるのか?」
「当然。ただ人間に形態変化させる場合に限り、一樹君のイメージは反映されない。妖刀の意志に基づく姿になるからね」
「何それ見てみたい」
「必要に応じてしてくれるよ。それじゃあ何か小物を選んで竹千代に形態変化をしてもらおう」
「小物か、学校なんかで常に身に付けていられるようなものが良いな。それでいて目に付きにくい物、となるとネックレスか?」
ネックレスなら常に身に付けられて服の下にも隠せるから便利だ。
「ならイメージしてくれ。どんなネックレスにするか」
一樹はイメージを固める。
まずあまり大きいものではなく、派手でないもの、となると小さな十字架?しかしそれだけじゃアレだな、プラスアルファが欲しい。
そうして一樹がイメージしたのは三日月をバックに置いた十字架のネックレスとなった。
「うん、なかなかいいんじゃないかな。月を背後に置いたのが良いよね」
竹千代のデザインを褒めた。心なしか竹千代が喜んでいるような気がした。
九重が「それじゃあ今日は解散ね」と言ったとたん、一樹の視界がぐにゃりと歪曲する
。
くらっときて膝をつく一樹。
顔をあげればそこは一樹が突っ切ろうとしていた神社のすぐ裏だった。
少し歩けばすぐに道路へと出る。時計を見れば時刻は午後八時、一樹は財布を確認し、駅前の自転車屋へ足を運んだ。
新たな自転車を手に入れた一樹は颯爽と乗り込み車よりも早く駆けていった。その首には三日月をバッグにした十字架が気持ちよさそうに風に揺られていた。
翌日、学校ではこれといった変化はなく、何者かに見張られているということはなさそうだった。ただ久しぶりに幼馴染にして学校一の美少女が話しかけてきたことでクラスがざわついたくらいだろう。
一樹も詩音とは久しぶりの会話だった。小学生の時は一緒に遊んだりもしたが、中学に進学した辺りから疎遠になった。そのころに姉が変死した事件があったからそれも原因の一つだと思うが、幼馴染なんてそんなもんだろう。アニメや漫画の幼馴染のように高校になってもべったりという方がどうかしている。
ただ詩音が話しかけてきたとき、竹千代が震えた様な気がしたが、シャツのボタンにでも当たったのだろう。
放課後、九重のところに行くのは自宅の自室からと決めていた一樹は寄り道をせずに真っ直ぐ帰った。よくよく考えれば昨日の九重は不用心だったと思う。監視がつけられているかもしれない一樹を人目につくような場所で開放するというのは如何なものか。
ひょっとしてわざと魔法少女に気付かせ無理矢理にでも戦わせようという算段なのでは?と疑ってしまう。
ともかくどう転んでもいいように準備をしておかなくてはならない一樹は、九重に言われたように異空間、九重空間にやって来た。
竹千代によって連れてこられた一樹が見たのは昨日と同じ石畳の道と竹林。どうやらここからしか入ってこれないらしい。少し歩けば竹林堂・茶々に到達する。
ひょっとして竹林堂って門番的な役割だったりするのだろうか。
魔法少女に妖刀に異能力に異空間。妄想が捗る捗る。茶々さんも美人だから薄い本も期待できるのではないだろうか。
いやいやと妄想を打ち切り現実を見据える。そんなことを考えていると知られた日にはどんな仕打ちをされるのか、考えただけでも怖ろしい。人によってはご褒美かもしれないが一樹はまだその扉を開いていない。
竹林堂に入店すれば昨日同様レジには誰もいなかった。声を掛ければ店の奥から茶々が出てくる。
「一樹様、どうかしましたか?」
一樹は笑顔で出てきた茶々に違和感を覚えた。心なしかちょっと刺々しい気がした。
さっき薄い本みたいなことを妄想したからそう感じるのだろうか。
違和感はさておき竹林堂へ来た理由を説明し、九重と連絡を取ってもらう。
「いや、昨日九重に言われた通り来たんですけど、昨日の場所は分からないし、九重に声を掛けるべきなのかも分からないしで、とりあえず聞いてみようかと」
一樹が説明すれば茶々も納得を示し、レジの横にある電話に駆け寄る。
ここって電話使えるんだ。そう思っていたら「内線だけです」と茶々に言われた。
あれ?おかしいな。口には出していないはずなんだけど。それに茶々さん後ろ向いてたよね?表情から察したとかじゃないよね?ひょっとして心の声が聞こえるとかそういうのだったりしますか?
もしそうだとしたら入店したときに感じた刺々しい雰囲気はまさか、そういうことなのか?
一樹は混乱するもすぐに落ち着き払うと心を読める相手と相対したときの攻略法を実践してみる。
一樹の妄想の中で今、茶々はぐちょぐちょの濡れ濡れにされ一樹にされたい放題になっていた。そんな妄想によって一樹の身体の一部が反応しかけたその時、背後を見ていたはずの茶々の手からボールペンが投擲された。
咄嗟に一樹は身体強化と思考加速を発動させる。
投擲されたボールペンは一樹の眼球直撃コースだったが加速された思考と肉体によって辛うじて回避に成功した。本当はかっこよく掴みたかったが、二倍速では出来ないほどの速度だった。
そして一連の動作で確信した。茶々には思考、もしくは心が読まれている。
なんてことだ!俺は美人に笑顔で蔑まされることに喜びを感じられるほどの手練れではない。美人さんとはイチャイチャしたい。ぎゅって抱き締めたり。
ヒュン
妄想の途中で飛んでくるボールペンを回避しながら一樹は九重を待った。
その日、茶々さんは一切口をきいてはくれなかった。
竹林堂にやって来た九重はまず最初に何があったのかの説明を求めた。
というのも一樹が心を読めるらしい茶々の能力っぽいものの検証のために薄い本的な妄想を茶々でしているとヒュンヒュンボールペンが飛んでくるのだ。
これは読めているに違いないと確信した一樹は妄想の内容を更に過激な物へとしていった。最初こそ営業スマイルだった茶々の顔が次第に赤みを帯びてきて、目にちょっぴり涙を溜めてうるうるしているその表情がたまらなく愛らしいかったのでついやり過ぎてしまったのだ。
その結果、竹林堂の店内には壁に刺さったボールペンやペーパーナイフなどの切っ先が尖った道具が幾つも壁に刺さっているという状態だった。
説明を聞いた九重は若干呆れて「あんま茶々をからかわないように」と一樹を注意し、茶々には竹林堂を片付けてから来るようにと指示を出した。
昨日の山は竹林堂の裏手にある細道を行くとあった。あまりにも竹が密集し過ぎていて周囲が見えないようだ。
「さて、今日は形態変化の練習をしようか。身体強化と思考加速は竹林堂の様子から言って大丈夫そうだし」
「形態変化ってどう練習するんだ?イメージに呼応して形を変えるんだろう?」
イメージを反映させ形態を変化させる。そう教わった。イメージをしなければいけない能力。剣道なんかの技のように肉体を動かし方のような具体的練習の仕方が想像できなかった。
「それについては昨日説明しなかったことを話そう」
九重の説明では妖刀の能力は基礎能力と型別能力でやり方が違うらしい。
まず最初に異能を使うには魂を何らかの形へ変換する必要がある。それはエネルギーだったり物質だったり生命力であったり様々な形態がとられる。
基礎能力である身体強化と思考加速は物質、生命力、エネルギー全てを扱うため使い方さえわかれば割と簡単に出来るのだそうだ。実際日常生活の中にもあるらしい。
そんなまさかと思うが、鍛冶場の馬鹿力やスポーツ選手なんかが言っているゾーンと呼ばれる現象がまさにそれらしい。
もっともそれらは一番レベルの低い状態で、妖刀の基礎能力は現在可能な限り最大限まで引き上げられているので格が違うとのことだ。
言われてみれば確かに似ているのかも、と一樹も思う。
基礎能力は己の魂を己の肉体の内に作用させるというのを押さえてればいいよと総括された。
対して型別能力は己の魂を体外に放出しなければいけない。
形態変化は己の魂をイメージとともに妖刀に注ぎ込み、妖刀が形状を変化させる、というもので、まず自身と妖刀にスムーズに魂を行き来させることが出来るようにしなくてはいけないという。
注ぎ込むだけなら簡単なのだが注ぎ込み過ぎると命の危険があるそうで、適切な量を注ぎ込む練習が必要になってくるらしい。
しかし、九重は竹千代ならばその練習は後回しでいいという。
「竹千代の人格はかなりしっかり出来ていて、こと制御に関しては僕の妖刀の中でトップファイブに入る。意思疎通が出来れば制御を竹千代任せにしてしまっていいと思うよ。とりあえず予めイメージを固めておいて、すぐにそのイメージが出来るようにした方が実戦で役に立つよ」
「イメージか。正直どう使えばいいのか分かんねーんだよな」
「それはどう戦えばいいのか分からないということ?それともどう変化させればいいのか分からないということ?」
「変化の方」
妖刀だから身体強化で機動力を増し、高速で近付いて刀によって切り捨てる。おそらくこういう戦い方になるのだろう。この中でどう竹千代を変化させるのか。
変化のさせ方がいまいち想像できないという一樹に「これらを参考にするといいよ」と
九重はどこから取り出したのか、休憩スペースにあるテーブルの上に本を積み上げた。
手に取ってみれば、それは漫画だった積み上げられた山は全てが漫画。百冊は軽くある漫画を手にして九重に見せる。
「これは?」
「知らない?昔の漫画なんだけどさ、丁度いいかなって思ったんだよね。ほら、主人公が刀を使っているだろう?」
そう言って漫画を開いてみせてくる。
軽く読んだが、主人公の少年は死神代行とかいう肩書で登場人物である死神たちは、特殊な能力を秘めた刀を武器に戦うバトル漫画だった。中には刀を伸ばして遠距離から突きをする描写などもあり、これを参考にという意図は何となく伝わった。
とりあえず伸びる突きは参考にしてみよう。
「竹千代さん竹千代さん。ここから刀身を伸ばして、あそこの壁を貫く突きをお願いします」
一樹がさしたのは運動場外周にある壁だった。距離は四百メートルくらいある。
一樹は竹千代の切っ先を壁に向けて突き出した。
視界がぐらっと揺らぐ。そして遠くでズドンという音がした。見れば手に持つ竹千代が伸びて壁に刺さっていた。
「竹千代さん竹千代さん、元に戻ってください」
そういえばみょいーんと伸びた竹千代の刀身がシュルシュル戻って来た。元に戻るまでおおよそ四秒。
さて今やったことについて確認しよう。
「九重いくつか聞きたいんだけど」
「何だい?」
「今、竹千代を伸ばしたんだけど、その時ぐらっと視界が揺れた。あれは何だ?」
「魂を急速に注いだ反動だろう。初めてやるのに結構な量を注いだからビックリしたんじゃないかな」
なるほど、言われて見れば初めてやったんだった。慣れないことをすれば身体が驚くのは当然といえば当然だ。
一樹は九重の言っていることをゲームのMPのような感覚で受け止めていた。MPが尽きたら能力は使えない。そういう認識だった。
しかし、一度にどれくらい使うかによって今のような異変に襲われるのであれば、それが出ないラインの見極めが必要になってくる。
「今ので大体どれくらいの量か分かるか?俺の限界を知っておきたい」
「そうだねぇ、大体一割くらいじゃない?」
「あれで一割。そうなると出来ることは少なそうだな」
あの一撃でぐらっとくる。十発も撃てばもう使えないということはかなり手数を少なくして必殺のタイミング以外では使えない。
しかし、九重はそれを否定する。
「今のは一撃の強度を高め過ぎた結果だよ。
まず竹千代を変化させるのに四百メートルも伸ばした。これで全体の3%くらい消費した。その上あんな離れた位置にいある壁を貫こうとすればどうしたって燃費は悪くなる」
「つまりもっと短ければ5%未満に収まると?」
「強度もあんなに要らないね。あの壁は核シェルターよりも硬く、衝撃に強い。それを貫くとか攻撃力過剰だよ。威力は十分の一以下でも立派に通じる。人体に至っては千分の一以下でも貫通できる」
「つまり出力調整をしないとダメと」
「そういうことだね」
その後、一樹は出力調整を繰り返し、二つの技を作った。
技その一
音速の伸びる突き『音突』一式
最大射程を五十メートルまでに抑え、速度と重さを重視した貫通力突き
派生技も含めて四式まである
技その二
刀身から刃を枝分かれさせ攻撃する『枝刃』
不意打ち重視の斬撃技
一樹の戦闘は基本この二つの技を組み合わせて戦術を立てる方向で決まった。
どれだけ技に時間をかけても結局のところ一樹の手段は竹千代による近接格闘だ。技単一のキレよりも身体全体の使い方の方が重要になってくる。
そのことを九重に相談すると「実践あるのみだね」と言って遅れて合流してきた茶々の手を取る。
すると茶々の身体は一瞬にして一振りの日本刀、いや妖刀へと変化した。
茶々は妖刀だったのだ。
「それじゃあ、ちょっとやってみようか」
そういうと九重は上段に構えた。
「マジで?」と聞けば「マジマジ」と答える九重。どうやらやるしかないようだ。
一樹は竹千代を右手で持ち、切っ先を九重に向けた突きの構え。峰に左手を添えて安定させる。
そして試合は始まった。