01-00:プロローグ
魔法少女って知ってるか?
昔は魔法を使って人知れず人助けをしたりしていたそうだが、最近ではもっぱら魔法を使って戦ったりする少女のことだ。
野郎ばかりが戦ってても画面映えしないとか、萌えの文化が浸透し、戦闘にさえ萌えを追求した結果、少女を戦わせるといったことになったのだと思う。
特に流行りだした初期の作品は変身シーンに気合を感じる。少女の着ている服が光で消えて下着姿やら裸やらになってそれからコスチュームを纏う。狙っていなかったとは言わせない。
おっといけない話が逸れた。今はそういった経緯はどうでもよくて、大事なのは俺の目の前に魔法少女がいて、化物と戦っているということだ。
「いやー、俺もそういうのは好きだけど、まさか妄想を具現化するほどオタク力が鍛えられているとは思わなかったわ」
空を飛びビームを放つ魔法少女。それをささっと避ける蛇のような化物。ビームが被弾して吹き飛ぶ民家。
魔法少女は盛大に町を破壊していた。
ん?空を飛び、ビームを放つ少女が何故魔法少女なのかって?
え?異能力者や超能力者ではダメなのかって?
魔法少女も広義の意味では異能力だと思うけど、俺が彼女を魔法少女と思う理由はその恰好がメカメカしてないから。
え?どんな格好かって?
何と言うか、そう、夏のレジャー施設にいそうな格好っていえば分かるかな。
ビキニの上からベストを羽織り、短パンでブーツを履いてる。腰にはデッカイリボルバーとバレットベルトを巻いて太腿にも小さい銃を巻き付けてる。
え?へそは出しているのかって?ビキニだしそりゃ出るだろ。え?脇?お前らちょっと黙ってろよ。先に説明させろ。
何より髪が水色に輝いている。ブーツも輝いてる。ビームを撃つ時デッカイリボルバーも輝いてる。
きっとあの水色の輝きが魔力なんだぜ。魔法を使う時に光るんだ。ブーツが輝いているのは空を飛ぶというよりも空中を駆ける類の魔法を使っているんじゃねーの?解んねーけど。
いいんだよ、細かいことは。
彼女は魔法少女。
そういうことにした方が面白いじゃねーか。
あ、馬鹿なこと言ってたから大技見逃しちゃったよ。うん、山が一つ無くなってらー。
化物死んだんじゃね?
あ、生きてた。地中に潜って回避したのか。やるじゃないか。
あれ?なんか化物こっちに来てね?来てる、来てる、化物来てる。
あれ!?魔法少女こっちに銃口向けてね!?多分化物に向けてるんだろうけど、射線の延長線上に俺がいること気付いて無くね!?
やばいやばいやばいやばい魔法少女光り出したよ!
あ、撃ちやがった。
魔法少女が放ったビームは民家を吹き飛ばし、化物を吹き飛ばし、そして俺を吹き飛ばした。
幸い直撃でなかったおかげで民家の破片が腹に刺さったまま空中を錐もみ飛行で移動する俺。
着地の衝撃でゴチャリとかブチュアァといった変な音を出しながら梅雨明けの微妙な温度のコンクリに文字通り己を刻むのであった。