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プロレスラー、異世界で最強無敵の剣闘士に転生する!   作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ほのぼのエメラ【12歳の春】

明けましておめでとうございます!

元旦なので三作品更新しました!

 息を切らしながら、私は町の外を走る。


 ヤマトさんは少し離れた場所で剣を振りながら私の走りを見ていた。


 私は、沢山食べろと言われて肉や野菜、果物などを毎日食べている。なのに太らない。ヤマトさんが言うには、身体を動かす為の筋肉を鍛えるにはまず脂肪が必要と言われた。だから、ちゃんと食べてしっかり寝て、私は太らないといけない。


 ヤマトさんには、兄さんと一緒に必死に生きていたあの時からすれば信じられないような生活をさせてもらっている。だから、なんとかして太りたい。


 でも、どうあっても太れない。


「よし! そこまでだ!」


 ヤマトさんの声が聞こえ、私はゆっくりと走る速度を落としながらヤマトさんの下へと戻る。


「中々走れるようになってきたな。偉いぞ」


 そう言って頭を撫でるヤマトさんを見上げ、私は荒い呼吸を整えながら頷いた。


「さぁ、皆のところへ帰ろうか」


「はい」


 ヤマトさんの言葉に笑顔で返事をして、私はヤマトさんと一緒にマット剣闘士団のテントへ向かう。


 今のマット剣闘士団は五十人も団員がいる。だけど、剣闘士として戦えるのは僅かに十五人。


 残りは医療士のアンクルさんを除いて皆私と同じ孤児の子供達だ。


 だから、大きな街の興行はまだ出来ていない。


「あ、お帰りなさい!」


 孤児だった子の一人の女の子がヤマトさんを見て笑顔でそう言った。それにヤマトさんが微笑み、返事をする。


 キャメルという名前の子だ。最近入った子だけど、キャメルは私と同じ歳だ。茶色の髪で、可愛らしい丸顔をしている。そして、ヤマトさんに凄く良く話しかけ、ご飯も一緒に食べる。


 ヤマトさんがキャメルと話して笑ってると、少しムッとしてしまう。


 孤児の子供達が笑顔でご飯を食べてるのを見て、私は嬉しくて仕方なかったのに、何でなんだろう。


 私がそんなことを考えながらご飯を食べていると、ヤマトさんが肉を刺した串を私の前に出した。


「ほら、肉も食べろよ? そんなんじゃアジャにはなれないぞ」


「あ、ありがとうございます」


 私はヤマトさんにそう言ってから串を受け取り、お肉を食べた。


 そうだ。今の私の仕事は太ることだ。お肉をつけないと!


 私がそう思ってお肉に集中していると、クレイドルさんが歩いてきた。


「お、今日も食べてるなぁ。もうちょっと練習量減らした方が太るんじゃないか?」


 クレイドルさんがそう聞くと、ヤマトさんが腕を組んで唸った。


「今も三日に一回筋トレをして、それ以外は運動を減らしてるんだがな。だから筋肉は多少ついてきただろう?」


 ヤマトさんがそう答え、クレイドルさんが私の身体を上から下まで眺める。中々太れないから少し恥ずかしい。


「……分からん。筋肉ついたか? まぁ、前みたいに骨が浮かなくなっただけ良いか」


 クレイドルさんに正直な言葉を言われ、私は肩を落とす。やっぱり、あんまり変わってないんだ。


 私が気落ちしていると、ヤマトさんが笑いながら私の頭を手のひらで包むように撫でた。


「大丈夫だ。今は基礎体力をつける為に走ってるが、ある程度走れるようになったら筋トレの割合を増やす。走ると脂肪も減るからな。あんまり体重が増えないのは仕方がない」


 ヤマトさんにそう言われ、私は浅く頷いて肉を食べる。困ったことに太れないことへの悲しみなど飛んでいってしまった。


 ヤマトさんに慰められて頭を撫でられている。頭にヤマトさんの手のひらを感じると、思わず子供のように笑顔になりそうになるのだ。


 頬がピクピクするのを我慢しながら肉を食べていると、キャメルが意地悪そうな笑顔でこちらを見ていた。


「エメラちゃん、すっごい真っ赤!」


「や、やめてよ。言わないで」


 顔が熱いから赤くなっているのは自覚しているのに、改めてそう言われると余計に恥ずかしい。


 最近はどうもヤマトさんに撫でられると恥ずかしい気分になる。嬉しいし、凄く落ち着くのに、恥ずかしい。


 何でだろう。変な病気とかじゃないと良いけど。


 私がそんなことを思っていると、ヤマトさんが私の右のほっぺたに手のひらを当てた。


「ひゃっ!?」


 思わず変な声を上げて飛び上がってしまった。ヤマトさんはそんな挙動不振な私を見て困ったように笑い、また手を伸ばす。


「ほら、エメラ。口に食べカスが付いてるぞ」


 そう言ってヤマトさんに唇を指で拭われた。


 あ、ダメだ。


 茹で上がってしまう。


「あ、あり、ありが、と、とう!」


 お礼だけは何とか言えた。私は素早く串を両手で掴み、座り直してご飯を食べる。


 すると、クレイドルさんが押し殺したような声で笑い、キャメルちゃんが意地悪そうな笑顔で私の顔を下から覗き込む。


「…………お願い。見ないで……」


 掠れた声だけど、なんとかそれだけは言えた。



最初は無難に誕生日イベントをしようとしたのですが、タイトルに春と書いて変更しました。

やっぱり、思春期は青春ですよね!

乳酸菌が珍しくラブコメを書いたよ!(何か違う)

少女漫画ファンからの罵声をお待ちしてます!(笑)

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