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具現化ヒロイン。  作者: 橘コウヘイ
第一章  出会いと出逢いを
2/23

隠し事

2回目の投稿となります!1回目を読んでくださったかたありがとうございました。

まだまだ未熟ですが、今回も頑張りましたので是非楽しんでください!

 ピピッピピッピピッピピッピピッピピッ



 静かな部屋に規律を乱さずに響き渡る音。朝に最も憎まれる存在。



 目覚まし時計。

そんな彼にまたもおこされる。



「ん......今何時だ?....ってえぇぇぇぇ」



 重い瞼を必死で開けて時間を見ようとする。が、普段は天井が見えるはずの視野範囲には美少女が。ああ、そうだもう一人じゃないんだ。ってそんなことじゃねぇよ! テムリン何で抱きついてるんだよ! そして、声に気付いたテムリンは、



「あ、やっと起きたね....おはよ」



 キャミソールに身を包み胸元を意識外でちらつかせ、起床30秒で悩殺。



「おおお、おはよ。ところでなんでこの状態?....」



「あ あ あぁぁぁぁぁぁあのそーゆことじゃなくて....あのその」



 慌てる姿もヤバイな......質問をしてる最中に頬が染まるのが自分でも分かる。そしてそこはかとなく嬉しい。あぁ困ってるのも可愛い。なんか俺、変態じゃないか? まぁいいか。くだらないことを数秒で数個考えていると、続けてテムリンが、



「その機械のことを聞きたいなと....」



 質問のアンサーにはなってないけど許す。むしろ俺の中では模範解答だよ。



 「あぁ機械のことだよね。じゃあ少し話そうか」



 昨日の夜に眠気と戦いながら話をしていた事を思い出す。今はお腹の虫と決着をつけたいとこなんだが。



「うん!」



 いやそんなに嬉しそうにされると言えないよ。

早く終わらすか。これ以上テムリン直視してると可愛くて禿げるし。



「えーっと、まず俺がこの機械を作ることになった経緯について簡単に話そう。約5年ほど前にこの世界にはフルダイブ機能付VRが発売されたんだよ。

そもそも、この機械が発売された理由というのが少子化の対策。

けれどもこの機械自体は今僕達がいるこの地球を基準とした時の仮の世界。つまり存在を成さなかった。だから、ゲーム内で結婚してもそれ以上の効果をもたらすことは無かった。そんなこともわからない低脳なやつらしかいなかったんだよ。それにフルダイブ機能が付いたことによって脳神経自体を傷付けることで問題になった。そもそも、筋肉神経に信号を送ればそんなこともなかったんだ。んとまぁそれによってVRの存在意義は無いものになった。ここまで大丈夫かな?」



 ずっと見つめているので一度会話をとる。長すぎたな。

 笑顔で、



「うんっ!」



 分かってるのか分かってないのかわからないがいいか。

それにしてもさっきより嬉しそうなんだけども。もう禿げてもいいや。



「おーけー。んで、FdVRの存在を否定された人々は恋愛感情が欠けた。そもそもFdVRが発売された時点で日本国の出生率は5%以下。驚異的で、脅威的な人類滅亡の危機。そこで僕がある人から依頼を受けてこの機械を作るのに乗り出したんだ。この機械ではVRのような理想ではなく、具現化することが出来るから問題は少ない。これが僕がこの機械を作った経緯。分かった...かな?」


 簡単にと最初に言っておきながらかなり長話をしてしまった。若干の後悔。

が、思っていた反応と違う。何故下を向いて頬を赤く染めてモジモジ....っていやそーゆことじゃねぇ!いやでもあながち間違ってないんだよな。



「じゃあ私はそういう目で見られて....」



あぁ、完全に説明ミスったよ。大幅な路線変更だよ

せっかく会話が弾んできたのに....ヤバいよ。

いやまて、もういっそのことそーゆことに....

いやいやいやいやいや無理無理



「いいや違う。否、断じて否っ」



 衝動的な否定。



「そーよね!それでこれからこの機械で何をするの?」



 そして、相変わらずご主人様に献身的な美少女。すぐに信じる。いやぁいい子だ。

でも、理解してなかったのか。



「まず、この機械の設定をする。一つ例に挙げるとすれば、オリジナルヒロインは禁ずる。とかね」



 言った後にテムリンが右手を口に当てるのが見えた。



「へっ!?なんでです?」



「いやぁ、その、興味というか...」



 テムリンは口にあった右手を左手と共に腰付近まで急降下させ、ぶんっと音を鳴らす。そして、上目遣い少し頬を膨らませながら問うてくる。



「なんですか、その興味とは」



痛いとこつかれたな。結構気持ち悪い興味というか趣味というのかなんだか知らないが言いたくない。いやでも言わないとなんか信頼を壊しそうで怖いな。

 悠一は渋々重い口を開く。


「えっと、町中が僕の知ってるヒロインで溢れたら素敵だなと思ったり。あ、あ、あ、あのそれだけじゃない勿論。その....君だけを独占したい。それで昨日、勢い余って彼女になってくれ!なんて言ったり。それにいろんなヒロインが出てきたら、理想を作れちゃうだろ?だから....」



マイナスを消そうとしてプラスを並べていると、



「悠一の理想は私なんだ....」

 


「まぁそうなる....かな」 



毛穴という毛穴から汗が滝のように流れそうな気持ち。それに高まる鼓動。言ってしまったぁぁぁぁ



「ありがと」



えええええええええええええええええええええええ



わええええええええええええええええええええええ



かわえええええええええええええええええええええ



 多分今俺の魂が三回位あの世とこの世を行き来してたよ! 人生勝ち組確定やないか!



 そんなぽやぽやしてる俺に、



「それで、その設定の次はなにするの」



 設定の話をしてたのか。話の軸がどこにあるのかもわかんねぇや。あはははは。自重しよう、これ以上脳内腐ってどうすんだ俺っ!

そして、爽やかに話を戻す。



「あ、そうだな。さっき言ったとおりこの町をヒロインでいっぱいにしたい。そのためにもこの機械を発売してから、半年位この家に引きこもろうと思う。どう?」



いやぁ完全否定飛んでくるわ。覚悟は決まっております神様。とんだ性癖をお直しくださいませ。



「いいと思う。だって悠一が興味あるんでしょ?お世話するよ!」



来たぁぁぁぁぁぁ神様ぁぁぁぁ。ん? いや神様じゃねぇぇ! とんだ性癖を伸びしろにしてくれる天使じゃねぇか! 



「あ、ありがと....」



 ここまで優しくされると人間は声が震えるらしい。この世の誰よりも幸福度が高いな。



「はいっ!」



「それじゃ、決まりだ。明日、本部にこの機械を提出してくる。」



「私も行く?」



もちろん!付いてきてくれ!皆に自慢できる彼女だからな!と言いたいところだが



「いや、家で待っててくれるか?帰ってきた時に寂しくないからさ」



「分かった。待ってるね!」



家を出て忘れ物10回位したいぐらい愛くるしい。



「おう!頼んだ。俺は今から設定を決める。テムリンは好きにしてていいぞ」



「うんっ!」



こりゃ何もかもはかどるわ。



***********************




 悠一は死にかけていた。季節は夏。そして何よりのハンデは高校の最初から現在にいたるまでの自宅警備員という職業を忠実に勤めてきた結果。それに上書きしての人混み。なんたってここはオタクの聖地、秋葉原。レイヤーさんとオタクが入り交じる中をひたすら歩き続ける。




***********



 ある研究施設にて。



「そろそろ創造主がくるぞ。全システム起動準備にかかれ。」



「しかし、全システムを起動させると最悪の場合オーバーロードでここごと吹っ飛びますよ?!」



「構わんわ。創造主が珍しく出向いて来たんだ。それなりの物に違いないはずじゃ」



 施設内にはどよめきが即座に広がる。が、そのざわめきも老人に止められる。



「しずまれぇい!このワシが言っておるのじゃ!聞けんのだったら全員クビじゃぞクビ」



「わ、わかりました。施設内全員に告ぐ。これより超短縮量産装置を総展開する。直ちに定位置に着き防御服を身にまとえ! 元帥様これを」



 そうして、軍服を着たがたいのいい男が差し出したのは黒光りするいかにも硬そうなスーツの様なもの。



「伝達ご苦労であったな志比二等。だが、ワシにそのようなものはいらん」



「ですが....もしものときに....」



「もしものときなど有るわけなかろう。この施設を作ったのは誰だと思っておる。悠一総統であられるぞ」

 

 

「あの、伝説上の人物でありますか?」



 驚きを隠せない様子の二等にまるで恐怖を植え付けるような態度で話を語る。



「そうか。貴様らの時代だと、伝説にしか伝わっておらんのか。だがじゃのう、それはちがう」



「といいますと?」



「悠一総統は実在する。それとお前の見た伝記の悠一はどのような奴であったか?」



「彼は設定上では、我々が生まれる少し前に起きた戦争を止めた英雄でありながら終わった直後に死にかけていた兵士に撃たれて死んだという風に書いておりました。」



「なるほどなぁ。間違いだらけじゃのぉ。まず設定上などでは無い」



「しかしっ、この国の歴史にそのようなものはないはずですよ?」



「あぁそうだろな今の新日本と旧日本の全面戦争で新日本軍側が大敗北したというものだからな」



「......この新日本が負けたのですか」



「それも、たった一人の青年にな」



 それを聞いた二等は、全身に震えをまとわせ言葉を発する。



「その青年というのが......」



「さぁな。ワシも旧日本軍側について居ったからな詳しいことは......」



 まだわからないと言うところで、入り口付近でドアの開く音が聞こえてくる。





**********************





 どのくらい歩いただろうか。いや、多分そんなには歩いてはいない。体感的には2時間歩いている気分が、おそらく20分程度が妥当であろう。あぁ、つまらなくても学校行っとけばよかったな....




 手に負えない後悔を考えながら歩き続け、5分位経ったであろうか。

 表向きな秋葉原のビルとビルの間の狭い路地に足を運ぶ。それからまた少し進んでピタリと止まり右側を向く。そして何もないただの壁に向かって



「リア充?ナニソレ美味しいの?」



「パスワードニンショウチュウ......解。パスワードロックカイジョ」



カタコトな返事が帰ってきてからすぐにドアの開く音が聞こえてくる。そして中からはパソコンを打つ音だけが聞こえてくる。そんな中、一人のおじいさんが歩み寄ってくる。



「これはこれは悠一おぼっちゃま。お久しぶりだのぉ。今回はどんなでき具合じゃ?」



「お久しぶりです。旗佐浜おじいさま。いえ、旗佐浜元帥殿。今回はかなりの自信作を持ってきました!」



 悠一は出てきたおじいさんに今回の内容を伝えようとする。が、先に質問をしてきたのは旗佐浜さんであった。



「悠一おぼちゃま、一つ聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」



笑顔で悠一は



「はいっ!俺に聞きたいことがあれば何でも!」



そして、先程までの孫を見守るような優しい顔ではなく暗い表情と暗いテンポで耳元でこう問う。



「悠一殿。中学の時の思い出とお友達を内容の濃いまま。そして、何をしていたか覚えておりますか?」





と。



どうでしたか?よろしければお気に入りの方と厳しいコメントの方をよろしくお願いいたします。

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