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具現化ヒロイン。  作者: 橘コウヘイ
第二章  記憶との対峙
15/23

トロピカルでトロケテル?

驚いた。



 何故だろう、不思議でならない。あれほど大きくてふわふわした少し柔らかみと膨らみを持っていながらこうなったのか不思議でならない。



 触った感触はふわふわに軽い弾力を足して二で割った感じ。それにかなりさらりとした触り心地で、ずっと触っていたいような気さえもする。一度揉むと直ぐに元に戻り、歩けば一定のリズムを刻みながら上下に揺れ、走ればそれが激しさを増す。



 各々違った形や大きさがあり、好みは人によって変わる。例えば大きさに重点を置く人もいれば形に拘る人もいる。色々なパターン妄想したりするのも人々、否、男共の特権と言えるのかもしれない。

 


 かなり魅力的でこの世の男達は一度はしっかりと触ってみたいという願望に駆られるだろう。その願望に強く駆られるのを思春期などと言うのだろう。



 そこまで惹かれるものとは何なのか? 



それは、



  翼である。



 それで何故不思議なのかと問われればこうだ。



 落下していったのだ。こんなにも夢とロマンと実用性兼ね備えた両翼を持っていながらに落ちたのだ。その両翼の感度が高い故に。数回触られた程度落下にまで陥るのは不思議でならない。

 それに加えて気になるのが、十人弱を軽々翼にのせていたのにも関わらず何故にある特定の男にだけ反応を示す。これは何なのであろうか。

 


 これが好意なのか、それとも違うなにかなのかそれは誰にも知り得ない。





***********************



「いやいや、ここどこっすか。あづいっす。とりあえず東郷さん殴るっす」



 頭部から滝のように流れ落ちてくる汗はヘルメスの苛立ちを増幅させていた。そのせいか近くにいた東郷に強烈な一撃が突き刺さり、二、三歩後方によろめいてから腰をつく。



「お前何すんだよ! いてぇだろ!? 」



 怒声と唾を織り交ぜながら砂浜から起き上がる東郷に興味を示さないテムリンは、炎天下の中相変わらずキャミソールに身をつつみ汗一つ流すこと無く何かに気付いたらしく言葉を発する。



「それより悠一が居ない! 」



「ガン無視かよ......」



 だが、言われてみればそうである。この得体の知れない島だろうか、ここにいるのは悠一を除いた七人。辺りを見渡す限り見えるのは透き通った海に白浜と後方に聳える木々のみ。



「いいんじゃない? あんなやついても邪魔なだけだし要らない。 どうしてあそこまで変態な野郎に付き合ってられるのかが分からないわ」



「まぁまぁ落ち着けよ大天使さんよ。せっかくの綺麗な海と綺麗なお顔が汚れちまぅ......!」



「あ、ゴキブリっす」



 と満面の笑みを浮かべながら痛い台詞を吐く東郷に風を切る音が聞こえる程の会心の一撃を喰らわし再びノックアウトさせる。



「てめぇ......! いい加減にしろよ!?絶対いなかっただろ!? まてぇごらぁぁぁ」



 殴られまたも砂浜に横たわった東郷は立ち上がり、逃げるヘルメスを砂と怒声を上げながら追いかけ、追い付く。



「いでぇ、いてぇっすよ、く、くるしぃ......っす」



 がたいのいい東郷に固められたヘルメスは何故か笑いながら苦しむ。だが決してMっ気が有るわけではなくただこの状況を楽しんでいただけに見える。



「みんな楽しそうでいいないいな。わたしもあそびたいなたいな」



 取っ付きあっていた二人も、海辺で遊んでいた依流とテムリンも、砂に埋まって南国気分を満喫している不知火も、ここに来てから気絶したままの恵を除き、各自やっていたことを止めて視線が一点に集中する。

 

  

「あ、あのすみませんませんっ! 初めて喋ったのにでしゃばって」

 


「ほんとっすよぉー。ここで新キャラ登場とかなめとるんっすか?   ぅうぉぉぉいっでぇぇぇ! 何するんすか東郷さん! 何が悪いって言うんすか!?」



 ヘルメスが気だるそうに話を続け釘をさす。ピクッと肩を震わせ怯える彼女を見た東郷は再び首を締め、黙らせる。



「今お前が言ったことのせいで怯えてるだろ!?」



「私はただ新キャラを叩きのめそうとしただけで......いやよく考えたら私の何が悪いんすか!?」



「分かれよ! どう考えてもそれが悪いだろ!?」



 何が悪いのか全く理解していないヘルメスに呆れる東郷を見た不知火はふっと笑いながら埋まっていた砂浜からゆっくりと起き上がり大人の色気というのだろうか、ねっとりと言葉を発する。


 

「もう可愛いキャラは私で足りてるの、分かる? まぁ分からなーーーー」



 言っている途中で東郷は見張っていたヘルメスから離れ、相手のメンタルをダウンさせるのを得意とする不知火にドロップキックを入れる。



「黙ってろっ! それといつからお前可愛いキャラになったんだよ!? そろそろキャラ安定しろや」



 この壮絶なドロップキックを見て、余計に恐怖心を増して魂が抜けかけていた彼女を見て東郷は咳払いをして話しかける。



「悪いな、こいつらも悪気があってやってるわけじゃないんだ。少し馬鹿なだけというかアホというか。だからさちょっと名前教えてくれない?」



 優しく丁寧に接したつもりだったが逆効果でガタガタと上下に揺れ白目になる。それを見て発せられた声が聞こえてくる。



「何あれ、ナンパじゃないっすか」


 

「どうしてこう男はそういう方向に走るかなぁー」



「東郷さん。ちょっと気持ち悪いです」



「うっざい」



 確かにナンパっぽかったかもしれないなと思い恥ずかしさを感じる。



「悪かったな、じゃあ代わりに誰かやってくれ」



 少しキレ気味で話し出したのが仇になったのかまたも全員が突っ掛かってくる。



「なんすかその態度は。人にものを頼む態度じゃないっすよ」



「はいはい、分かりました、すみませんどうか彼女の名前を聞き出してください。これでいいか?」



 そう言い放ちながら両手を顔面の前で合わせて懇願する。が、納得せずにつまらなそうな顔でこちらを見るヘルメスを見て東郷は決心した。これから言われること全部に返答してやろうと。



「これだから男は」 



「何、お前男関係で何かあったの? 相談のるぜ?」



「実はある男性に大事なものを触られて、」

「その話はまた今度ゆっくりしよう。じゃあ次は......」



 話を打ち切られた依流はえっという顔を見せるがそんなのも目に止めずに不知火の方を見る。いや、正確に言えば見ようとしたの方が正しいだろう。というのも振り向いた刹那に右頬の感覚は痛で埋め尽くされていた。本日三度目の砂浜ベッドにもほとほと愛想が尽きてきた。



「うっざい」



「何故!? 急すぎない!?」



「砂浜埋めたのを忘れたとは言わせないよ? ぶっ潰す」



「あれはお前が悪いだろ!? てか可愛いキャーーー」



 本日四度目である。先程よりも格段に威力が上がり意識こそはあるものの再び殴られた右頬は痛覚を失った。


 

「もういいや」



 無駄に空が綺麗だった。青く清んだ空に浮かぶ白雲達は優雅に泳ぎ続け地平線の彼方へと消えていく。体をジリジリと焼く灼熱の球体は王者のように留まり続け先程まであった意識を朦朧とさせる。その意識が混濁した状態の東郷に覚醒を促したのは小さく細く高い声だった。



「あ、あの、私の名前はですね......」



 横たわった状態で声の発生源の方を向くとそこにはこの状況を産み出した元凶の人物と、青空の青みと青空に浮かぶ太陽の光が海面に乱反射して煌々と点滅するのが分かる。



「名前は?」



「早く言えっていう話っすよ」



「そーよ。可愛いキャラはもういらーーー」



「いいからそう突っ掛かかるな」



 可愛い新キャラ登場に妬いている二人は聞く耳を持とうとせずに、いちいち難癖をつけてくるので途中で流れを切る。

 それとは真逆に、テムリンと依流はこの茶番に興醒めしたのか同一視野上にある海辺で座り込んでいる。



「私の名前はプリモーー」



 と、照れながらも普段より大きさを増した声で名前を言ったが遮られる。それは、依流やヘルメスではなく初めて聞く声だった。



 「おい、おぬしらどこから来た」


高い声に老人の喋りで話しかけてきているがその姿が見当たらない。辺りを見渡す東郷達にこう続けた。



「ここにいるぞ!  足元をみてみろ」



 その声が聞こえてから数秒間探すがやはりそれらしきものは見当たらない。あるのは海と奥に見える岩と足下の砂浜とその上にいるカニぐらいだろうか。



「おい、どこにもいねぇじゃねぇか。まさかお前俺らを攻撃しようなんて......」



「そんなあるわけなかろう」



「また新キャラとかもうこの展開あきたっすよ」



 口を尖らせながら頭の後ろで手を組むヘルメスはそう言いながらも辺りを見渡していた。



「そうね、でもこの声ならきっと可愛いキャラじゃないからいいわ」



「わしはカニじゃ」



「あ、カニだったのか。え? カニだったの!?」



 一、二歩下がりながら驚く東郷に釣られるように聞いていた皆は同様に驚く。見つからない見つからないと騒いでいたがどうやら見つけていたらしい。それがその人物だとはとうてい分かるはずも無いが。



「何ですかこれはこれは。かわいいですねですね」



「そこの女は面白い喋り方をするの」



 カニは鋭い鎌を顎? の位置にあて何かを考え出す。



「お前さんもしかしてプリモラードちゃんか?」



 変な喋り方と言われ落ち込んでいた彼女は顔をすっとあげ少し驚いたように話し出す。



「何で私の名前を知ってるですかですか?」



「そりゃその変な喋り方と可憐な容姿とその輝く金髪を見ればプリモラードちゃん以外思い付かんわ」



「その、どこかでお会いしたりしたことあるですかですか?」



「画面越しでな」



 この時東郷たちもこのプリモラードが具現化されてこっちの世界に召喚された事を知らなかった。そのため東郷は視線を喋るカニからプリモラードに移しかえ疑問をぶつける。



「お前アニメのキャラだったの!?」



「すみません。今まで黙ってて」



「それは良いとしてカニってアニメ見るのかよ!?そっちの方が驚きだわ」



 カニがアニメを見る。というよりもまずテレビを見て理解できている時点で状況がカオスであり頭の整理が追い付かない。そもそも何故にこのカニは喋れているのかも不思議でならない。



「そりゃ見るわい。その女の出ている作品は“靴擦れ姫”のヒロインじゃ。あらすじはこうじゃ。靴擦れした姫は数ヶ月寝込んでしまった、そこで村人ひとりひとりをその姫にキスをさせ目覚めるまでやったといった感じじゃ」



「なぁ少し違うがその起こし方どっかで聞いたことあるんだが。それで起きたのか? その姫は」



 まぁ大体この後の展開は読めると軽い気持ちで聞く。が、思っていた展開とは違い衝撃的な結末を迎える。



「あぁ起きたとも。村一のブサイクを連れてきて口臭で起こしたわ。胸糞悪くて消してやったわい」



 口臭? 普通ならプリンセスがやって来るとこだが流石地球。神の不平等さから産まれた作者の妬みを本に乗せている。



「なんすかホントにその展開まじおもろいっすね」



「いや駄作だろ」



 どこまでも他人には囚われないのがヘルメスの長所であり同姓から人気を得られる理由なのかもしれない。そんなことは別に本人は一ミリも狙ってもいないのだろうが。



「それでじゃがお前達は何のようでこの島に来たのじゃ?」



「不時着です。あのポンコツ天使のおかげさまで」



「ポンコツっていったら可愛そうじゃないですか!謝りましょ!」


 

 ここで東郷の友人の造り出した国民的美少女ヒロインの登場。学校にも要るのではないだろうか。自分の事ではないのにも関わらず急に謝れとか男子掃除してとかその他諸々あるはずである。

 こういう時に何をするのがベストなのか。それは言いなりになることである。



「悪かった。それで俺ら人を探してるんだが、まずここは何処だ?」



「タダで教えるわけにはいかん。せっかくの訪問者だ。勝負をしよう」



 普通の勝負。則ち戦闘系統であるならば九割勝負がついたといっても過言ではない。それを自ら言ってくるとは。なんと優しいのだろうか。



「いいのか? よしじゃあやろうじゃねぇーか」



「じゃあかくれんぼじゃ。二日以内におぬしらがわしを見つけられたらここがどこでどんな場所なのか教えてやろう」



「かくれんぼってたいへんですねですね」



 かくれんぼ。それは圧倒的不利を要される戦い。小さく小回りの聞くカニに勝ち目などほぼ皆無にも思える。



「もし負けたら?」



「ここで私と遊んで暮らすんじゃ」



 どうやら欲望を満たすために使われたということらしい。どこかの誰かに似ているような似ていないような。

 その欲望を満たすための戦いは急に開始の挨拶が訪れる。


 

「じゃあスタートじゃ!」



 そういってからカニは足下をするするっと抜けて聳える木々の合間に消えていく。それを追いかけるようにして依流とテムリンは一緒に木々へと消えていった。



「すっかり仲良くなってやがるなあいつら」



「ど、どうしますます?」



「プリンなんとかはめぐみんと一緒にいてくださいっす。いつ気がつくかわからないっすからね。東郷さんは私と一緒に来てください」



「プリモラードですっ!」



 今だに気絶した状態の恵に配慮したのかヘルメスは指示をだす。名前を間違えられたのが嫌だったのか珍しく声をあげて修正する。



「りょーかい」



 プリモラードを恵の所に置いてからしばらく歩き続け置いてきた二人が点に見えるか見えないか位のところまで歩いた。すると、ヘルメスがいきなり回り続けていた足を止めこちらに方向転換をする。



「東郷さん。あれ多分神っすよ」



「なんで!? どう見てもただのカニだろ! お前カミとカニをボケるとかセンスあるぜ」



「また殴られたいんすか? 至ってがちですよ。恐らくあれは海洋神のポセイドンさんっす」



 あのカニを神だと信じるのには無理があると言いたそうな東郷だったが普段のふざけているヘルメスの顔でなかった為に信じざるを得なかった。



「それでそいつは強いのかよ」



「あぁそれなら心配ないっす。強さはゼウスっちのちょっと次に弱い位なんで、ただ厄介っすよ彼は」



 カニに負けるゼウス、又の名を最高神は果たして最高神なのだろうか。そんな事を思ったりもするが決して声には出さなかった。



「取り敢えず探すしかないだろ。そんなに時間もあるわけじゃねぇーし」



「そーっすね。あ、それなら私に良い案があるっすよ!? 乗るっすか?」 



 こういっては何だが彼女はどこまでも男子中学生のような脳をしている。考える事全てがアホであると言っても過言ではない。



「聞こうじゃねぇか」



 だがこういうヤツの考えは時にずば抜けて冴えていて面白かったりする。そう思って話を聞き出す東郷であった。


更新遅れて本当にすみません!受験生ということもあり中々更新速度あげる事が出来ずにいます。次回も、もしかしたら遅れてしまうかも......ですがこれからも自分のペースで楽しく更新していければなと思います。他の作品を作ることも検討してみたり......時間無いですけどね笑笑

誤字、脱字、あると思います。ご指摘頂けたら嬉しいです。コメント頂けたら必ず返信したいと思います!

 今回も読んで頂きありがとうございました。

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