第13話 バトル・マリーナ
ダニャ、顔に迫った丸い球体の音の爆弾をかわすと、それは桟橋の杭に当たった。超音波の爆弾は、木の杭を一瞬でひび割れさせて、破裂させた。
そのお返しにダニャも風の手裏剣を投げる。
芽衣に当たったかに見えたが、体をすり抜け飛んでいく。芽衣が使う蜃気楼が作った分身が、どれも幻覚の芽衣だけなので、隠れた実態に当たらない。
揺れる桟橋の上、芽衣もダニャも互いに決め手になる攻撃をあたえられずにいた。
だがこんな戦いで手間取っているため、船積みが出来ない芽衣、苛立ってくる。
「ねえ、あなたの望みは何?」
「望みですか?」
ふいに芽衣がダニャに聞く。唐突すぎて戸惑うダニャ。
「私、戦いはあまり好きじゃないの。出来たら平和的な解決をしたいと思っているわけなんだけど。・・・・・・今日、箱を船に乗せるだけの仕事なのよ。これ手伝ってくれるなら、それなりのお礼をするわ」」
芽衣の申し出はとても自然に聞こえた。
「それで、こういうのはどう?断言は出来ないけど、私たちこれから、東京を抑えるつもり。それが出来たならこの江戸川区あげるわ。だから私たちの仲間にならない?どう?いいでしょこれ。・・・ここは貴方の土地になるの。・・・・」
「それで住民はみんな下僕。僕が王様に成れちゃう権利、・・・そういって誘惑されたって。サトジュンさんが話していました。とても素晴らしい話だと思うのですが、僕は王様にならなくていいので、お断りします」
と、ダニャは微笑む、いつもの笑顔で対応。
「じゃあ、あんたなんか死んじゃいなさい。死ねばいいわ」
芽衣、音波弾を出す。これをダニャ、風の防風の壁で受ける。
「めんどくさいわね。本当、疲れるわ。・・・もういい。さっさと片付けてやる」
と本気の攻撃に変えようを、腕まくりとした途端、雷光が来て、芽衣の体の肩をかする。
「きゃー、なに?」
芽衣の立っている近くに船止めの鉄杭があったので、雷光がそっちに流れて直撃は避けられた。それでも流れた電気で肩から痺れ、すぐには身体の腕が動かなくなるほど強力であった。
「運がいいね。この角度からすると、そっちにいっちゃうか。残念」
メリサ、ニコニコと桟橋を歩いてくる。
「卑怯よ。2対1だなんて」
「何を言ってんのかしら。やれるとき、取らしてもらうだけ。死んで」
メリサ、再び雷光を発射すると、芽衣の体をすり抜ける。
「蜃気楼」
「あ、逃げる気ですね」
ダニャ、芽衣を探すが、まったく見えない。
「どこ?」
「あ、あっちの船の上」
近くにあった船の上に現われると、次々と船を渡っていく芽衣の残像。そして芽衣は、桟橋から脱出していく。
「結構、飛べるようね」
「いや、あれは幻想で、逆に逃げたのかも」
逆を見ると、歪んだ空間みたいなものが、陽炎のように揺れている。
「とりあえず、向こうは積み込みは止めたようね」
「そうですね。まずは一安心。・・・しかしもう何個かは、積まれてしまっているはずです」
ダニャ、停泊している船を見まわす。するとまるでこっちの話を聞いていたかのように、停泊していた船が動き出す。
「積まれたものから逃げる準備?」
たぶん芽衣がいなくなったので、ここから脱出を始めたのだろう。ここ夢の島マリーナから離れ、荒川に戻ろうとしている。
「参りましたね。どこに積載されているのか皆目、見当がつかない。逃げていくのか、積み込み完了か・・・」
「まずはこれかな」
メリサ、ここから一番遠く、荒川合流に近い船に、左手の人さし指を向けて合わせる。そして右手の指を目の脇に添え、まるでアーチェリーをしているかのような型を作り、待っているかのような矢を離し、逃げる船を狙って電子砲を飛ばす。
船に当たった電子砲は、一瞬で電気系を焼きエンジンを止める。木で出来た船体は発火し、中に積んでいるガソリンのタンクが膨張し破裂。船が一瞬で燃え上がる。
「まるでアーチェリーで的に当てたみたい。本当、かっこいいです」
「そう?いい感じ?じゃあもう一隻」
他の船は、燃える船を避け、動き出す。どんどん逃げ出そうとアリーナを動き回りだす船たち。
「あら、みんな逃げるの?にがさないわよ」
メリサ、微弱で広範囲に電子の網を扇状に飛ばす。それは上空にて広大に広がってからアリーナに落下し、40mくらいの範囲を覆った。故に相当な数の船がその網の中に入った。
「集団ターゲット。ロックオン。通電のよいものを見つけ、相手を自分とその物の間に挟む。少々狙いが外れても当たるわよ。はい行きなさい」
メリサから繋がれた網の上を、強い光が走る。水面を走る雷撃が導火線のように進み、網羅された船に届くと、エンジンストップで船体に火の手が上がる。そして船から船へ、つながるように光り、雷の通電がされて、燃え始める船たち。
「凄いですね。綺麗だ。まるで導火線を伝わっていくようだ」
「こうすると効率よく、落とせる」
船から船へ走る雷撃。そして炎上している船の積んでいるガソリンに発火して、今度は順番に爆発していくのだった。
「あいつらも某国の人間だよね」
「そうだと思います」
「だったらやり放題だね。楽しい。・・・ここは私が受け持つから、ダニャ、建物に行けば?たぶん芽衣も行ったと思うから」
「はい、ありがとうございます。それじゃ行かしてもらいます」
ダニャ、ジャンプして桟橋から陸地に飛び、焼却炉の方に戻って行く。
メリサ、遠くにいる動く船にまたアーチェリーの形を作り、左手人差し指でターゲットに向け、電子砲を当てて燃やしていく。
俺はアリーナに転がる箱を、せっせと燃やして地味に作業を続けている。
途中通過したドックでは、派手な音と共に止まっている船やボートが、弾けたり動いたりしていた。たぶんの高速な動作で戦うマルシアとカマキリの戦いが行われており、近づけば巻き込まれて一瞬であの世、行きだ。
何もできない俺は近寄らないほうが無難と素通りです。
そして転々と転がる某国人死体とその虫入りの木箱。その木箱を一つ一つ処理していく。すると、やっと焼却炉のシャッター近くまで来ることが出来た。やっとみんなに追いつくことが出来た。もうすぐそこだ。
焼却炉近くの駐車場では、雅夜が台車を運ぶアリ部隊と戦っている。頼むぞ雅夜。そいつらを蹴散らしてくれ。俺は俺なりの戦いをする。
と、地味な箱の蒸し焼き作業をひたすら続ける。
雅夜、並ぶアリ部隊を刀で打つ。吹っ飛ぶ某国人。
木箱のアフターケアはサトジュンンに任せ、とにかく、アリ部隊の攻撃をして崩してきた。その間に何人も某国人を倒してきたが、
「彼らは全員、死んでいるのか?」
水流刀・青龍は自分の能力を2倍にも3倍にもしてくれている。アリ部隊の某国人たちを切ると、物凄い衝撃で動けなくなったり、吹き飛んだりした。
確かに水流刀・青龍の威力は凄い。しかし風を纏わしているので、遠い方は効果が薄くなり峰打ちと同じ状態の者もいる。何人も潰れたり何mも飛ばしているので大体の奴らは死んでいるであろう。
しかし確認した訳ではない。
「・・・斬ることはしてない。・・・私は、血が怖い。・・・本来、刀と言うものは斬るものだ。これじゃ真価を発揮していない。それが殺人だとしても、冷静に相手を切断する意志を持たなくては、この後やっていけないだろう。心静かに、人の死に顔をそむけず見つめられるようにならなければ」
メリサの攻撃は血が出ないが、マルシアの攻撃は相手を破壊する。当然、腕や足、顔の皮膚が破れ、血や肉が飛ぶ。それがこちらに飛んで来た場合、やはりどうしても避けてしまう。
「・・・これで死んでくれたらいい。目の前で分断して殺すのは怖いのだ。サトジュンにはあんなこと言ってきたけど、私もマルシアのように人を破壊するように殺せないのだ。でもそんなこと悩んでいるより・・・今、私のやるべきことは・・・」
アリ部隊の隊列を崩し、桟橋から道にいる奴らを崩し、運んでいる台車の上の木箱落として進むこと。建物に来ること。
この焼却炉の建物前は、大型のトラックが、焼却炉に荷物を入れる為、とても広めにスペースを確保している。そのため結構のアリ部隊を片付けたが、まだまだ人はシャッターから出てくる。
人間がでられるように4分の1ほど上げたシャッターから、部隊の列は吐き出されて続いてくる。アリーナ駐車場から、降ろされたスロープを雅夜、隊列を崩し、左右にかき分けるようにして建物に近づく。
「やっと外が片付いた。さあ行くわよ。城内戦の開始よ」
広場を片付けると、気を抜かずゆっくりとシャッターの中に入ろうとする雅夜。
すると建物の中から巨大な火の玉が飛び出してきて雅夜を襲う。
雅夜、気が付き後ろの飛びのき、広場で転がりながら、それをかわす。
巨大な火の玉は、雅夜の居た場所を通り、地面に落ちると、分解して火の粉あげる
「凄い炎。横を通っただけで熱い」
明らかに火の超能力の攻撃に間違いない。雅夜、入り口を見据えて身構える。
すると、シャッターの奥からボス・劉王江が現れる。
「何事ですが?貴方は誰?」
質問には答えず雅夜、跳躍して劉王江に斬りかかる。
避けるボス。まったく簡単に雅夜の剣筋を読みかわし、雅夜を掌底で突き飛ばす。
雅夜、軽くダメージを受けたが後ろに転がり衝撃を弱めて止まり、時間をおかず再び飛び掛かり攻撃。刀で大上段から叩きと落とす。
が、劉王江は手に炎の剣のようなものを出し、それで軽く跳ね返す。
「強い。こいつ」
雅夜、なおも何太刀か浴びせようと斬りかかるが、その度、炎の剣で弾かれる。
「なんですか貴方は?邪魔ですよ」
そういうと劉王江は剣を持ってない左手を上に上げる。すると頭の数メートル空中に、火の玉がいくつも浮かび上がってくる。そしてそれが30センチぐらいの大きさになると降ってくる。
まるでメテオの攻撃のように火の玉が降り注いで襲ってくる。
いくつか飛び跳ねて避ける雅夜だったが、数があまりに続くので、防御の形を取り、弾いて近づこうとしたら、
「ダメだ。受けちゃ」
突然、ダニャの声が飛ぶ。
「え?」
雅夜、対応に困って立ち止まると、ダニャが横から来て、雅夜を掴み離れる。
「どうして?」
「見て」
雅夜が逃げた場所に、まだ生き残っている某国人がいて火の玉を受ける。某国人は防御と呼べないまでも、とにかく手を突き出して避けようとしたが、火の玉はその手に当たった途端に球じゃなくなり、どろりとした液体のように形を変えた。
それは手をすり抜け、某国人の身体に降りかかり、体全体にコーテイングするように張り付き、そして燃えあがる。
絶叫を上げて焼死する某国人。
「あ、もし受けていたら、液体じょうの物が頭から降り注いでいたのね」
ダニャと2人、一旦後ろに下がり、身構える。
「ラスボスである劉王江。彼は強いです。段違いに強い」
するとボスの横に、まるで蜃気楼のように芽衣が姿を現わして並ぶ。雅夜たちが距離をとったので近寄ってきたようだ。
「芽衣、いったいどうした?何が起きている?何故私たちは攻撃されているんだ」
ボスは現れた芽衣に状況を聞く。
「突然、ARUの奴らが、邪魔をしにきまして」
「ARU?アースリカバーリーの奴らか。あいつらか、どうして知ったんだ?・・・」
ボス、見まわすと、見つめているダニャが目に入る。
「あ、あそこの奴、たしか研究所にいた奴じゃないか。奴がARU?・・・スパイを使ったのか。ARUも思い切ったことをやるようになったな。・・・・・・まあいい、現在の状況は?」
「せっかく、船まで寄せたのですが、桟橋が崩落。船積みが出来ない状態です。そして集まった船を、奴らが襲撃していまして・・・」
ボス、桟橋の方をみおろすと、荒川にはメリサに潰されていく船が、無数に浮いている。まるで野辺送りか、精霊流しのように船が燃えて漂っている。
そしてメリサ、なおも電子網を張り、荒川に出る口は塞いで船を出させないように固定。そして順番に一つ一つ電子砲を当てて燃やし船をつぶしているのが見える。
「船が出れていない。これはストップしているということか?虫はどうしてる?」
「アリ部隊襲撃されて、箱が積み込めず放置状態です」
アリ部隊は気絶してるか死んでいて、桟橋に向かう道にたくさん倒れている。木箱は道路に巻き知らかした様に散乱して、その木箱がどれも煙を上げているが見えた。
「潰されている。虫が焼かれているな。誰かが焼いて回っているという事か、向こうは連係されて作業されている。・・・それであいつは?虎曹はなにしている?」
「今、現在、戦闘中です」
と芽衣の説明の通り、ドックに上がった船が、大きな音を立てて、今、破壊されて倒れた。まさにそのドック内でマルシアとカマキリが、ど突き合いの戦いをしているのが分かる。
「あいつが手間どっているのか?並みの相手じゃあるまい。誰だ?」
「マルシア・ジャガー。そして船を焼いているがメリサデス」
「ほう、向こうのエースが、ここにやって来ているのか。これは向こうも本気で潰しに来たというわけだな。・・・せっかくここまで育てて来たのに、この場所も、おしまいだな。東京壊滅のビック・プロジェクトだったが、ここへきて終了になるということだな」
ボス、ズボンのポケットに手を入れ、鍵を出し、雅夜が吹き飛ばして転がっているアリ部隊の台車に乗っている木箱の蓋を開く。
箱は上と前が開くようになっていて、二段構造の上の部分の蓋が開く。下の部分は卵だが、そこから孵化した成虫が上の段に上っており、数十~百匹が入っている場所が解放された。
「何を?しているんですか?」
驚く芽衣。蚊に似た毒虫は、まだ寒いので活発ではないが、ゆっくりと順番に空を飛び始めた。
芽衣、一瞬たじろぎ、後退り。
徐々に成虫の毒虫が飛び立ち出ていく。そしてその数匹が、まだ生きていて広場に負傷して転がっている某国人を刺す。
某国人は気が付き払い落とすが、数秒後、突然、狂ったようにのたうち回り、胸を抑えたまま悶絶する。
見ている雅夜とダニャ、その即効性に驚く。
「たかがこんな小さい虫なのに。それほど毒性が強いのね」
「自分もじっさいみて、驚いています」
雅夜にやられて転がる奴は、蚊に似た毒虫にたかられて、刺されて、次々と死んでいく。まだ生きて居て、台車を掴んで止まっていた某国人はそれをみて、投げ出して逃げだす。
なおも箱を開けるボスに、忠告する芽衣。
「ボスどうしたんですか?こんな所で離したら私達も、みんなやられる」
「そうだ一挙に放つ。ここでみんな死ぬのだ。」
その状態をみて「まずい」と口に出し、ダニャ、反応する
「ここを頼みます。何としてもこれ以上、虫を出さないように止めてください」
といい残し、急いでどこかに去って行ってしまう。
急にぽつんと残された雅夜。
「そんななこと言っても、止められないわよ。あんな小さい虫。空中に放たれた毒虫をどうやって止めればいいの?・・・あ、サトジュン」
俺は、駐車場の中に転がる箱をすべて焼くと、スロープを登り、シャッター前の広場に出た。ここは焼却用にトラックが入るようになっており、方向転換できるように、広いスペースがとってある。
雅夜が風で飛ばした箱は、だいぶ端だったのでそれを焼いて回ってきたら建物のシャッターの前に出てきた。
だいぶ各地の争いも終息に向かっているらしく、音がしなくなり、安堵してきた。
それももうすぐ、建物だ。よし本丸にたどり着いたと、広場に来たのである。
すると広場の向こう側の離れた所で、隠れるようにしている雅夜が俺を呼んだ。
「おーい」と、手を振ろうかと思ったが、ちょうど中間の広場の真ん中にいる恰幅のいいスーツ男と、その隣いる麻生先生こと芽衣が、振り返ってこちらを見る。目が合った。
「あ、なんか、やばい雰囲気」
と思った瞬間、二人の空の上に火の玉が浮かび、それがいきなり俺をめがけて飛んで来た。
ヤベー、火の玉!怖―え。
と、慌てて、シャッターの中に飛び込んで逃げた。
カマキリの斬馬刀の刃がたまに微かにだが、擦れてマルシア体を斬る。しかし強靭の筋肉に守られているので深くにには入らず、スパッと皮膚だけを裂き、血を飛ばす。
擦れているうちはいいが、手首や足の腱、そして首などの大事な部分に食らうわけにはいかない。そこの筋が切れてしまったら、その腕は動かなくなり使えなくなる。いくら回復が早い獣人だろうと、そんなすぐに直るはずない。
「切り落としてやるよ。いくら獣人でも切り落とされたら、すぐにくっつける事は、難しいだろ。まあ首の場合は即死だろうし・・・・」
刃渡りがある斬馬刀の破壊力は凄まじい。戦場にて馬の首を切るために作れた刀なのだ。いくらマルシアでも首筋に当たれば切り落とされてしまうだろう。そのため、カマキリは狙っている。独特の前後に揺れるフットワークをして近づいてくる。
カマキリの長所はスピードと鋭い刃。少しずつで皮膚や肉を切ってマルシアを傷つけていく戦略。カマキリは技術の攻撃。中距離をたもって、ヒットアンドゴーで襲ってくる。
マルシアは打撃力が武器なので接近戦型。マルシアとして何としても近づき、相手を掴むか打撃を加えたい。マルシアの握力で抱え込み、絶対的な打撃力で破壊したのだ。
互いに攻撃を仕掛け、かわし、攻撃する、の繰り返し。
相対的にカマキリの動きの方が早いようだ。居合切りと同じで、射程内に入ると振りまわし、マルシアの間合いになると逃げる。
「チッ。もうちょっと」
掴もうとした手が空を切るマルシア。その手を斬ろうとするカマキリ。引っ込めるマルシア。どうしてもワンテンポ遅れる。なんとかしてそのタイムログを稼ぎたい。
カマキリのとっては捕まるのは不味い。掴かまったらそれで勝負はついたと言っていい。
「もうちょっと。こっちにきなよ。いいことしてやる」
手をひらひらと誘うようにだすマルシア。
「臆病者だね。それ以上寄れないのかい?」
カウンターで掴むか、粉砕するか、笑うマルシア。
「おまえこそ、こっちに来なよ」
カマキリの方はそんな手に乗らない。マルシアがいる船の間の細めな場所より、斬馬刀が振りまわしやすい、広い自分の方に寄せたほうがや戦いやすい。
「つまんねぇな。その刃物ごと腕を、もいでやるのに」
「そっちこそ。首を出しな。綺麗に切り落としてやるからさ」
ニヤニヤ笑って、斬馬刀を揺らしているカマキリ。
俺はシャッターから転がり、建物の中に入ってしまった。するとそこは、たくさんの某国人のアリ部隊が台車に箱を乗せて、シャッターから出るために、列を作って待っている目の前に出てしまったのである。
「うわー、某国人の大集団。やられる」
と、逃げようとしたが、ここの人間は、出るために待機して立っているだけなので、外で起きている自分のボスたちの行動や、それを攻撃している俺たちの姿を見てない。つまり目の前にいる俺が敵だと分かっていない。
ただ自分が出る順番をまっているだけで、ここに止まっているという状態でいる。命令あるまで中で待機のようだ。
「ここで俺が攻撃して敵だと分からなければ襲われない・・・かな?ふうー、あぶねー、やばいね。どうも」
俺をガン見している奴ら刺激しないように、目の前から、そろそろと横にズレる。
目で追う某国人。怖えーよ。
「しかし凄いな。某国人は、こういう人海戦術は得意だな。何十人も列になり出る準備をして待っているのだ。こりゃまるで秦の始皇帝の兵馬俑のだね」
スゲー、壮観だな・・・。 と、そんなこと関心している場合じゃない。
ここにいるのも凄い人数。これがみんな箱を持って出て行こうとしてる。そして物凄い列で内部に続いている。これは阻止しなくてはならない。俺の担当は箱を焼くことだから、今、みんなの持っている箱を焼きたいが・・・・・・、
「きっと今、これを焼き始めたら、敵だということがバレて、ど突き回されること必然。ヤベエーな。それってサルでもわかる。そんな袋だたきは、絶対、避けたい。ならばどうする?」
よく考えると、そもそもの虫を殺すことが一番大事なんだよな?俺の作業は虫殺しなんだから、ちまちまと某国人どついて、箱を奪うより、その根源にある倉庫を潰すのが一番なんじゃねぇー?
並んでいる列をみると、列はシャッター中の込み集積車の到着地から、ずーと奥まで続いており、奥には作業室みたいな部屋がある。みんなあそこの前に止まっているので、どうやらあそこでアリ部隊の奴らは、台車を預かって押してくるようだ。
つまりはアソコが発祥場所で、みんなアソコから列が始まっている。
「よし、あそこをつぶせば、列が始まらない。あそこの部屋の虫箱をチョー燃やしてやるぜ」
俺は、目の前で睨らみつけている某国人を刺激しないように移動し、列を遡り、その作業室に向かうため奥へ行く。
奥の作業室は大きなガラス窓があり、中が見えるようになっている。その中で宇宙服のような服を来た人間が数人、ボックスを木箱に詰める作業をしている。
どうやら作業室は倉庫の一部で、大きい作業室にぎっちりとプラスチックの透明なボックスが、数百個、いや1000~2000ぐらい積み重なっている。
「ヤベー、養蜂場の巣箱みたいにチョー並んでいる」
見ると宇宙服の男はその二つの容器をセットにしてボックスに突っ込み、箱詰めする。ボックスの中身は上段が成虫のたまるケースで、下段が水容器スポンジの卵置き場ケースの2段構造。
水容器の中の虫は成虫になり、羽が生えて飛べるようになると、上の段に上がって溜まる。上の段は蓋をスライドされると開き、その溜まった成虫が解放される仕組み。
特長的なのは木箱にボックスをしまうと、木箱に鍵がついており、その鍵を使うと、木箱の蓋と同時に成虫ボックスも一気に開くように細工されている。
東京攻撃Xデーの時に、開ければすぐに放たれるようになっているのだ。
「こりゃー凄いぜ。こんなにあるのか。・・・・とにかくこの虫を出しちゃまずいんだよな。ここで処理しょう。これは壊わして全滅しなきゃ、やべーぞ」
しかしこれを焼くとなるとどうすればいい?
頭に浮かんだのが、メリサが水族館地下の集積所で使った一斉破壊の雷光を思い出した。が、俺に出来るわけないっつーの。
だがな、ここは一発、無謀だが試すべきだ。などと自分のチャレンジ精神が沸き上がり、試してみることにした。一気にここを焼き払えれば、かっこいいぞ。
俺は集中して、エネルギーをためて、ためて、ためて、すべてを焼き払うエネルギーを・・・・・・
「何をしているのかしら?サトウ君」
不意に懐かしい感じで、芽衣である麻生先生に呼び止められて、戸惑う。
見るとアリ部隊の並ぶ列の向こう、10mくらい先に芽衣が立っていた。芽衣はいつもの感じのエロい麻生先生だった。
「あ、麻生先生、どうしたんですか?田舎で不幸があって帰ったんじゃなかったでした?」
ついつい、いつもの麻生先生と呼んでしまうほど自然な感じでこっちを見ている。
「私は東京生まれの東京育ちよ。田舎は東京よ」
「あれ、某国人なのに?」
「某国人だって東京生まれはいるわよ」
「それって日本人じゃないんですか?」
「国籍を某国にしていれば、某国人なの・・・・いいのそんな話は・・・それより今、何をしようとしてつもり?」
「実は一気に焼こうかと思いまして、見つかっちゃいましたね」
「別にやりたかったらどうぞ。でもうまくやらないと、クリカに刺されるわよ」
「クリカ?」
これがその虫の名前か。でもどうして、許すのだ?
そこに麻生先生の横に、恰幅のいい男も現れる。
「早くやりたまえ。何を戸惑ってる?」
ヤバイな。大人に真剣に質問されると緊張してしまう。
「えー。なんでしょうか?なんかヤバんで、どうしましょう?やっていいんですか?」
「じゃあ私がやってあげましょう」
ダニャがボスだと言っていた恰幅の良い男、その男が、さっきの俺を襲った火の玉を空間に浮かびがらせて、それを撃つ。
うわー、ここで撃った。こんな某国人が密集している場所で.
無論、俺は逃げたが、待機で止まっている某国人たちはモロに食らう。
炎で焼ける人間。うわーこりゃスゲー
当然、箱も破壊されて、ブッ飛んでいく。
そして飛んだ箱はぶつかったり、火の玉で溶けたりすると壊れた箱から、煙が上がるかのように毒虫・クリカが立ち昇り、建物の空中を舞う。
「まじで虫、出た。まじかよ。クリカ出た。」
逃げまどう俺と某国人のアリ部隊の人間たち。大混乱でパニックになる。
やべー。巻き込まれる。
みんな近くの出口であるシャッター方面に向かって走る。流れに逆らうと転んで踏み潰されるので、シャッター方面に向かうと、その前から雅夜がくるではないか。
「雅夜、コッチ来ちゃだめだ。逃げろ。クリカがくる」
「なに、クリカって?」
「ほら、あれあれ」
逃げ惑う某国人、しかしみんな刺されて、バタバタと死んでいく。
雅夜に手を引き、シャッターの入り口の方へ連れて行こうとすると
「入り口のシャッター閉めた。もう開かないようにしちゃったから」
「えー、それじゃ逃げられないじゃん。刺されちゃう」
「自分のことは自分で守りなさいよ」
雅夜は、自分のまわりに竜巻的な風をもまとっている。それで近づく虫を飛ばしている。
「蚊の時速は2.4m。軽い団扇ぐらいの風で近寄れなく出来るの」
あ、そういえば俺は、水族館の虫を思い出し、刺されないように自分の周りに電気を纏うようにして、虫をブロックしたんだ。そうか、それを試してみよう。
虫が数匹、俺の所に来たが電気を感じたのか、しびれて地面に落ちていった。
「そうか、こうすれいいんだ。危ない所だった」
あまりのパニックに逃げまどっていたが落ち着いた。そして作業室の方を見ると、凄い音と、光がこっちに漏れてくるが分かった。
なんとボスがガラスを割り、部屋の中に火の玉をぶち込み、かたっぱしから、積み重なったプラスチックのボックスに火の玉を当てて、ボックスを破壊している。自分たちの作業室を攻撃しているのだった。
壊れた箱から虫が飛び出し、あたりを充満させていく。見渡す限りクリカが飛び回り渦まいてきた。
「いや、電気のバリヤで大丈夫かも知れないけど・・・・これは気持ち悪いぞ。とてもあの虫の渦には入りたくない」
「向こうは虫を放つ方針にかえたようね。ここで虫を放ち、せめてここの住民を殺して被害を与えようという計画かしら。まずいわね。なんとしても阻止しなければここいら一体全滅よ」
「しかしあれだぜ。どうやって毒虫を殺す?」
まるで黒い煙のように揺れ動くクリカの大群。
「私の能力的の風では、この毒虫は軽すぎて舞い上がってしまう。逃げられて殺せないわ。サトジュンの方で何かいい方法ない?」
俺は電子レンジようにと思っていたが、飛び回る虫には無理だな。あと俺に出来るのは、虫を焼くこと・・・・
「そうか、電磁波の幕か。メリサがやっていた。一枚の電磁の板の様にして」
俺は、空中にハエ叩きのような形をした電磁の幕を作った。
正方形の中の目は3センチ程度に細かくして、1メートルくらいのハエ叩きを作る。するとクリカがそこに触れ、田舎の虫取り電熱ボードのように、ジジジーといって焼けて落ちた。
「サトジュン、それ。やればできるじゃん」
雅夜に初めて褒められたかも。
「よし、それを貼って焼き殺そう」
と、雅夜にいわれ、入り口のシャッターの辺りに移動し、集積車搬入の比較的広い場所に5メートル四方の電磁幕を張った。
「うわーヤベー。羽音だけで、チョー凄い音量だ」
もうすでに、ここも毒虫・クリカが充満しており、黒い渦となって飛び回っていたが、俺の張った電磁幕に触れると「ジジっ」と焼けてボロボロ落ちてくる。
「ぜったいこれは出してはダメ。一匹残らず焼き殺すの」
俺は頷き、電磁の幕をクリカが渦撒いている所に持って行き焼こうとすると、すると何故かクリカが逃げた。
「あれ、逃げた」
それはまるでイワシの大群が、大物の外敵が近寄ると避けるがごとくに『散って、集まる』の集団行動をして見せた。
「なんだよ。虫の癖に逃げんのチョーおかしいでしょ」
今さらながら、どうも俺は、石塚と堀口の口癖が出てきて、止まらなくなってしまった。本当に・・・知能程度がやつらと変わらないことを自覚してしまった。
「バカね。操られているの。芽衣が虫たちをコントロールしているのよ」
振り返ると、芽衣がこちらを見て笑っている。
そこにゆっくりとボスが現れ話を始める。
「東京撲滅計画は延期で?」
「一連の虫工場計画はストップになってしまった。東京侵略は別の班の計画でアプローチするとしよう。とりあえずここから移転だ。ここを終わりにする」
「残念ですね」
「破壊して撤退。その引き換えに、江東区、中央区、江戸川区、180万人には死んでもらう」
シャッターの方に動くボスを見て、雅夜が反応。
「まずい。シャッターを壊す気でいる。止めなきゃ。サトジュン早く焼き殺して」
判ってます。でも追っても俺の電磁幕は避けて逃げ回っているのです。
俺は電磁体をボールにしていくつか飛ばしてみた。それだと近くにいるクリアを線香花火のような雷で焼き殺せるが、いかんせん向こうの数が多い。そんなものでは焼け石に水だ。
ボスは、雅夜が閉めた大きなシャッターの前に立ち手を広げる。
雅夜、ボスを止めようと切りかかるが、また炎の剣を出し、はじく。
そしてボスは、直径3mぐらいな大きな火の玉を作りシャッターに向けて飛ばした。
火の玉はシャッターに当たり、砕けてへばりつく。火はドロドロに溶けて滴り落ちるようにしてシャッターを溶かしていく。解けたシャッターに大きな穴が出来、解放されてしまった。
「行け。クリカ。バカな奴らを殺してやれ」
芽衣、指をパチリと鳴らすと、シャッター内のいるクリカが、シャッターの外に出ていく。
雅夜の風、俺の電磁幕など張って、出ないようにするが、クリカ達は止まらない。
某国人の人海戦術ごとくに、それらにぶつかっても後かろ後から突っ込んで、どんどん外へ出て行ってしまう。
「ダメよ。出ちゃだめ」
雅夜の悲痛な叫び声が響く中、建物から明るい外へ毒虫・クリカは、ドンドンと飛びたって行く。




