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顔合

 甲板上での挨拶が終わった後、多田野は参謀となった二人の艦長を司令公室に招いた。

 似たような境遇で飛ばされてきた彰子も含め、多田野は他の艦長達と話してみる必要があるなと思い、こうして、招いてはみたものの何を話せば良いか多田野には皆目検討もつかなかった。

 彰子が多田野の脇に座り、他の二人に対面の椅子にかけるように促したので、しかたなく多田野は口を開いた。

「皆さん。改めまして、多田野幸隆です。どうかよろしくお願いします。」

 多田野の挨拶に、まず眼鏡をかけた30代後半に見える痩せ型の気むずかしそうな男が立ち上がって敬礼をした。

「軽巡アヤセ艦長の二階堂永嗣大佐であります。情報管理はお任せ下さい。」

 続くように今度は50代後半だろうか中年のぽっちゃりめの男がゆったりと立ち上がって敬礼をする。

「駆逐ミズホ艦長、猿渡浩二大佐であります。訓練計画策定や水雷戦をお手伝いさせていただきます。」

 最後に彰子が立ち上がり、見回すように敬礼をして改めて自己紹介をした。

 ちょうど良いタイミングで、井上が紅茶とクッキーを4人の目の前に置いた。

「私は軍令部で各艦隊への補給や軍需工場での生産管理を担当していた、いわゆる事務方の人間です。艦隊勤務は初めてで皆さんにはいろいろと教えていただきたい。」

 多田野は迷った挙句、素直に自分の気持ちを話した。二階堂も猿渡も驚いたように多田野を見た。

先に口を開いたのは、猿渡だった。

「普通、中央から来る方は艦隊運営に理想というか、一家言あるものです。しかし、司令は先ほどの訓示でも、『はやく、この艦隊に慣れたい』とおっしゃいましたね。」

「私も司令にはもう少し、この艦隊の理想について語っていただきたかったと思います。例えば、緊張状態を鑑みて、海上輸送路の維持と輸送船団の護衛を重視するといったような。」

「そうか。そんなものか。」

 彰子の言葉に多田野は理想の艦隊像ができていない事を反省し、猿渡は穏やかに微笑んだ。

「神城大佐は、中央の第二艦隊から転属してきたんでしたね。しかし、私は司令を責めているわけではありません。参謀という立場から見るせいかもしれませんが、比較的、他の艦長や乗組員達にも好意的な印象が目立つような気がします。」

「それは、どういうことですか。」

彰子の質問に答えたのは二階堂だった。

「神城大佐。恥ずかしながら、ここにいる者は中央ほど、国のためにという意識が強くはありません。辺境では、多くの者が生活の為に軍に入り、地域の艦隊に配属され、ずっと同じ艦隊で軍歴を終えます。考えはどうしても艦隊の中だけに固執しがちです。」

「なるほど、多田野司令はそこまで考えて…。」

彰子が感心したようにこちらを向いたので、今更、多田野はなんにも考えていなかったとも言えずに、紅茶に口をつけた。

「もちろん、理想があって悪いという訳ではありません。しかし、最も重要なのは、多田野司令が受け入れられたということです。無論、神城大佐も美人艦長ということで受け入れられてますが。」

と猿渡が笑い、どことなく気まずい雰囲気をとりなした。

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