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警戒

「第13艦隊が重巡3軽巡4駆逐艦多数からなる艦隊と交戦中です。後方には小規模艦隊が存在している模様。」

 遠藤は副官がもたらした突然の情報に困惑したが、情報をもたらした副官は第13艦隊から大本営宛の通信を中継したのだから、間違いはないと言った。

「場所は。」

「ここから南に30キロの海域です。」

 頭の中に海図を広げた遠藤はなぜそこでと思った。

 南30キロの海上には確かにアメリアの小型離島観測所があった海域ではあったが、緊張緩和のために随分前に非公式に閉鎖されたと遠藤は理解していたし、それは第6艦隊の共通理解であった。

「第13艦隊と交信しますか。」

と副官が聞いた。

 遠藤は首を振り、自らの率いる第6艦隊を出撃させるように命じた。遠藤の頭には、挟撃され、戦力差がある展開に加え、初めての実戦というだけ通信する余裕もなく、必死に艦隊を立て直そうとする多田野の顔が浮かんでいた。

補佐役に猿渡をつけてあるから、直ぐに壊滅状態に陥ることはないだろうが、とにかく救援が先だと遠藤は考えていた。

 続報を持った通信士が司令室に走り込んで来て、歴戦の遠藤の予想は破られる。

「第13艦隊より『レブ島南方海域に敵の基地がある模様。注意されたし。』との暗号電。また、基地周辺を警戒する偵察機より、小規模艦隊発見の報が入りました。」

遠藤は第13艦隊を率いる若手司令が伊戸であったことを思い出し、感心したように膝を一つ叩き、ポンポンと指示を出していく。

「偵察機にその周辺の島を調べさせろ。基地守備隊を第二戦闘配備。第6艦隊は出撃準備急げ。哨戒中の警備艇は敵艦隊の監視に当たれ。」

副官は納得出来なさそうに抗弁した。

長年、遠藤の副官を務め、この基地と海域なら知らぬことはないと自負していた男だった。

「しかし、いくらなんでも、この周辺に敵の基地があれば今まで気づかないわけがありません。」

「では、なぜ敵艦隊は哨戒網の隙間をついて現れた。哨戒機の間隔が最大になるのは、哨戒チームの交代の間の20分。日に三回で、交代のタイミングは日によってバラバラだ。」

「近くの島から、当基地の動きや哨戒機の間隔を見ていたと。」

 副官の男はもはや自らの考えが及ばないことを悟った。

「この辺りの島々は、風雨が崖をくりぬいて作った洞窟も多い。その気になれば、偽装は容易だし、この海域は帝国とアメリア双方の貿易航路だ。民間の貨物船の出入りも多い。我々が海域に存在する船の全ての行動を把握するのも物理的に不可能だから、補給も容易だ。とにかく、我々は、老朽化した観測所を閉鎖しただけのアメリアに騙されていたということだ。出撃準備を急がせろ。」

「1時間以内に完了させます。」

こうなれば、一刻も早く遠藤がやりたい事の準備を整えるのが自分の役目だと切り替えられるのもこの副官の優秀さだった。

遠藤は、窓の外で慌ただしくなった港とその奥に広がる穏やかな海を見ていた。不謹慎にも笑みが溢れるのを止めることはできなかった。

「貴方のお孫さんは大したものですよ。伊戸艦長。」


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