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◆07 いざ、鳥速の力を試してみた!


 異世界に転生してから三日目。

 ステータスは未だに変化なしだ。まあ、とくに鍛えたわけでも、戦いに赴いたわけでもないから当然かもしれないが。


「そういえば、フレイは魔法を使えるの?」


 と、隣の椅子に座るフレイに訪ねる。

 因みに、場所は喫茶店である。


「いえ、魔法は才のある人のみにしか使えないので、私では無理ですよ」

「へえ」


 魔法は誰でも扱える訳では無いのか。

 期待していただけに、ちょっと、ガッカリだ。


「で、でも、世界には魔同書と呼ばれる魔法を発現させることが出来る道具がありますので、それを使えばトラウスでも魔法が使えるよ」

「ほー」


 なんだか、でも、という表現に少し気を取られる。

 でもって、僕を下に見すぎだろ……まあ、事実なのだが。


「とはいえ、とっても高いけどね」

「へえー、どれくらい?」

「うーん、だいたい、国の国家予算くらい?」

「……」


 驚きすぎて呆然とする。

 国家予算とはいかほどに、魔同書は貴重なのだ。

 それこそ、もしも魔同書を作ることが出来れば、一躍金持ちになれる。それどころか、後世に名を残すことも容易なはずなのでは……?


「作ることは可能?」

「ううん、無理。というのも、魔同書には、本人の持つ魔法を封じ込めるしかないの。だから、魔同書を作ろうなんて考えるのは、死ぬ間際の老人か、他人に譲渡したい人とか、後は、魔法を売って金稼ぎしたい人だけなの。しかも、どんなに低レベルでも魔法を使えれば、国に重宝されて、いくらでも仕事が見つかるから、売る人はほぼいないわけなの」


 と、長々と説明してくれた。

 まるで、説明の為だけに町に一人はいるNPCの説明みたいなそんな感じだ。


「ずいぶんと詳しいね」

「うん、まあね。一応私は姫でしたので、結婚したいと言う人が多く居たのですよ。その中には、魔法使いもたくさんいたわけでして」

「つまりは、モテモテだったということか」

「いえ、皆狙うのは、王の座のみであって、私なんか眼中にありませんでしたよ。それこそ捨て駒とでも思っていたのかもしれません」


 と、皮肉気味に言い、そして軽く笑い。


「まあ、今が楽しいから断って良かったですけどね」

「うん、僕も旅仲間がいてくれてほんとによかったよ」


 流石に一人でこの世界で生き抜くのは辛い。

 人によって誰とも関わりたくない人もいるかもしれないが、どちらかと言えば、僕は関わりたい方だった。

 だって、人の話を聞くのは面白いしね、悪い意味でもいい意味でも。



「そろそろ、出来上がるのではありませんか?」

「うん? ああ、そうかも、じゃあ、行こうか」


 

 ◆



 二度目となる鳥速屋に僕たちは来ていた。

 昨日同様、僕たち以外にはお客さんはいない。もしかしたら、僕たちは選ぶ店を間違えたかもしれない。

 それこそ、相場の何倍もの値段で吹っかけてくるのでは……?


 と、なんだか、不安になりすぎてなかなか入ろうという気になれない。

 それに、またあの長話に付き合うのも嫌だ。


 けど、いつまでも、拒むのも時間の無駄か。

 嫌なことはさっさと片付けよう。


「――すいません、昨日予約したトラウスです」


 と、挨拶をしながら店へと入る。

 すると、奥の方から店主が出て、笑顔で迎えてくれる。


「やあ、思ったよりも速いね。ちょっと、まだ準備に時間がかかるから、適当に座っといてください」


 それだけ言うと、店主は奥へと戻っていた。

 一応、昨日も座った椅子へと座り、店主を待つ。


「なんだか、忙しそうでしたね、もう少し遅く来ればよかったのかな」


 とキョロキョロしながらフレイが呟く。

 それには同意だが、同じくらい、嫌がらせになって嬉しくもある。

 昨日の長話分の恨みは果たせたかな。


「でも、何かあるのでしょうか?」

「そうだね、なんかあるのかな?」


 しばらく雑談をしていると、やっと店主が戻ってくる。


「ははあ、すまん、ちょっと、用事が立て込んでいてね。鳥速は表に居るから、じゃあ、後はよろしく」


 と、それだけ言うとまたも戻っていく。

 ほんと、何故にそんな忙しいのだか……。


「まあ、行こうか」

「はい」


 表に出ると、そこには昨日見た黒い毛の鳥速が立っていた。

 首には一応鎖が結ばれ、足には金属製の靴みたいなものがはめ込まれていた。


「よろしく、鳥速」

「私たちと一緒に旅に行きましょうね、鳥速」


 声を掛けるも何もリアクションが無い。

 寝ているかとも思ったが、目は開いているし、なんだ?


『我は、ガルラだ、鳥速なんて呼び方はやめてくれ』


 うん?

 なんだか、僕ら以外の声が聞こえた。

 だが、辺りを見回しても誰も居ない。


「何か言いました?」

「いえ。てっきりトラウス君が腹話術でもしたのかと……」


 二人そろって不思議な気持ちになる。

 だけど、僕ら以外には誰も居ないし、もしかして幽霊?


『何を驚いている。我を舐めすぎだ』


 と、またも誰かの声が聞こえる。


『よもや、我の声を理解できぬアホンダラではあるまい。契約人がそれでは、我は悲しいぞ、トラウス。それにフレイ姫』


 そこで、やっと声の主に僕らは気づいた。

 喋っていたのは、鳥速だったのだ。


 

 ◆◆



 鳥速。

 ダチョウのような大きい鳥。

 主に、商人に使われる馬車を引く生物。

 中には、人語を理解する鳥速もいて、それらは高値で取引される。

 また、人語を理解する鳥速たちは王羽とも呼ばれる。




 ◆◆



「それで、ガルラ?」

『なんだ?』

「なんでそんなに偉そうにしている? 僕が買わなければ、外の世界に行くことも無かったのに」

『ふん、我は王だ。何物にも束縛されず、自由に振る舞う。それこそ、王というものであろう。それに、我はフレイ姫には忠誠を誓うが、貴様のような、平民に従う気などない』


 と、ガレルと喋ってみてもこんな感じで話にならない。

 そもそも、ガレルの主は僕だから、少しは従ってもいいはずなのだが、どうも、ガレルと僕の価値観は絶望的に合わないようだ。


「もう、ダメですよ、ガレル。トラウスは私の騎士なのですから、少しでも仲良くしてね」

『ふん……姫の頼みとあれば可能な限り善処いたしましょう』


 と、フレイには忠誠を誓っていた。まあ、二人とも相手にされないよりはましかもしれない。


「はあ、まあいいや。ガレル、これから君は僕たちの仲間だ。だから、よろしく」

『ふん、だったら早く飯をよこせ』


 荒々しく言うガレルに面食らい、呆然とする。

 これなら喋れない方が数段ましと言うものだ。


「これでも僕は君の主だけどね……まあ、いいや」


 適当に魔法袋の中には手を入れてごそごそする。慣れないせいか、なかなか目当てのものを取り出せない。


「よっと、ほいほいっと」


 袋より取り出したのは昨日買った野菜だ。

 大根に人参、それにレタスと様々だ。


『では頂くぞ』


 次々とガレルの大きな口の中に野菜が吸い込まれるかのように消えていく。

 そして、すぐに食べきってしまった。


『美味い……まあ、あれである。我にこの食事を用意できるのであれば、従わないことも無い』




――どうやら、どの世界でも食べ物は大正義なようです。


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