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◆06 国を買うために、商売の準備中……

 カルカル草原。

 そこから少し離れた始まりの村。

 そこに僕とフレイはいた。


 昨日、なんだか、お互いの本心を打ち解け合い、ますます、信頼関係を築けたような気がする。

 そう言えば、今日からフレイは別人として生きていくことになった。

 服も高級ドレスから庶民が着るような安い服になり、帽子を被り、度のないサングラスをかけていた。

 そして、僕も同じような格好をしていた。


 近くにはリアカーが置かれており、その中には新鮮な野菜が積み込まれていた。

 数にして、数100キロはあるかもしれない。


「あんがとね、これで、だいたい、10万アバンかね」

「はい、これでいいですか」

「はい、確かに契約書は受け取ったよ。よかったら来年も来てね」

「はい」


 早速、魔法袋に野菜を入れていく。

 数が多く、入るか不安だったが、思ったよりも入る。


「トラウス、私は何をすればいいかな?」


 と、隣に居たフレイ姫が訪ねてくる。


「うーん、特にはないかな。もう少し待ってくれますか?」

「はーい」


 素直に引き下がる。

 そして、しばらくすると、やっと全てをしまえた。


「はあ、疲れた」

「お疲れさま、それで、野菜はどうするの? そんなにたくさん、食べきれないよ?」


 と、不思議そうに首をかしげるフレイ姫。


「うん、まあ、商売を始めようかなと思ってさ」

「商売? それって、町に行って商人みたいなことをするってこと?」

「うん、そんな感じかな。この辺では、豊富にとれる野菜も、遠くでは高く売れることもあるからね」


 と、前世の記憶を思いだす。

 地により特色はさまざまだ。

 この世界は、どうやらインフラが発展していない、それも車や飛行機などの科学力が著しく低い。

 だから、ここでは売れなくても、遠くではかなり価値が上がる可能性がある。

 だから、とりあえず、この町の特産品を大量に買い占めるのであった。

 それくらいしないと、おそらくは国を買うことはできないだろうし。


 それと、もう一つ。

 それは、人脈つくりだ。

 いかに金を持ってようが、よく知らない奴に国を売る奴なんて居るわけがないだろう。

 だから、そのために、まず顔を効かせる必要があるのだ。

 商売をしていくことで、いつか大富豪に巡り合うこともあるかもしれない。


 正直国を買うなんて、簡単なことでは無い。

 かなり大変なことだ。

 それでも、やってみたい。

 それはフレイ姫のためでもある。でも、それと同じくらいに楽しみでもあった。

 前世では資本金が0だったから物理的に不可能だった。でもこの世界では違う。

 赤の薬草のお陰で資金は大量にある。

 だから、後は上手に増やしていく。


 そして絶対に国を買い、王になる。

 それが僕の夢だ。

 そのために、まずは、商売で成りあがるのだ。


 

 ◆



 隣町。

 まずは商人たちがどれくらいで売っているかを確認する。

 すると、だいたい原価×1.1くらいで販売している。

 ということは10万アバン全てを売り切って、1万アバンの利益か。

 うん、まあまあか。

 でも、売るなら他よりも少し安くした方がいいかもしれない。

 となると、原価×1.08くらいか?

 それなら、8千アバンの利益か。

 だけど、最初はそんなもんかもしれないな。


「ねえ、ここで売るの?」


 と、フレイが聞いてくる。 


「いや、どれくらいで売れるか確認しに来たわけであって、ここでは売らないよ」

「じゃあ、いつ出発するの?」

「うーん、早くて明日かな。もしかしたらもう少し遅れるかもしれないけど」

「どういうこと?」

「ああ、昨日馬車の注文をしてさ、それが2日から3日かかるってことだよ」

「ああ、そうなの? てっきり、歩くのかと思った」


 歩く、その選択もたしかにあった。

 でも、この辺で商売をするならまだしも、遠くなのだ。

 それなら馬車を買ったほうが楽だと言うものだ。

 そのことを伝えると、フレイが感心し、しきりに褒めてくる。


「そう言えば、フレイに聞きたいことがあるんだ」

「はい? なんです?」

「いや、馬車を引く動物って、何がいいと思う?」

「普通に考えて、鳥速じゃないのですか?」


 鳥速?

 速い鳥でいいのだろうか?

 ちょっと、想像がつかない。

 もしかしたら、ダチョウみたいな?


「それって、人気なの?」

「はい、鳥速は商人の間ではとても重宝されているって、聞いたことがあります」

「ふーむ、そうか」


 馬車を買う時に進められて、疑い半分だったけど、思ったよりも評価が高いようだ。ならば、それにするか。


「じゃあ、これから鳥速を買いにいくけど、フレイも来る?」

「はい、喜んでお供します!」


 

 ◆



 鳥速を販売する店。

 そこで、僕たちは店主に様々な子を進められていた。

 まさしく、怒濤の嵐だ。

 次から次へと、大量の資料を渡されて、その度、どこが優れているかを的確に細かく伝えてくる。

 そのため、店内に入ってから早、一時間が過ぎようとしていた。

 隣に座るフレイもあまりにも長話でくたくただ。

 だが、正面の店主は未だに話し続ける。

 それも、全て鳥速に関わる話だけをしてくる。


 正直、辛い。

 好きでもなく、ただ便利そうだからと買いに来ているだけなのに長々と説明されても興が覚めるというもの。


「というわけですよ――失礼、喉が渇きましてね」


 と、店主が水を飲むために話がいったん止まった。


「あの、そろそろ、鳥たちを間近でみたいのですが、いいですか?」

「ええ、話もひと段落つきましたし、もちろんいいですよ。では、こちらに来てください」


 と、ようやく、鳥速たちがいる牧場へと案内された。

 牧場には、大きな生物が凄い速さで駆け抜けていた。

 かなりのデカさの鳥だ。


「それで、ご希望はありますか?」

「そうですね、暴れん坊以外がいいです。それこそ、素人でも扱えるような大人しそうなので」

「そうですねえ、それでしたら、あちらに寝ている真っ白い毛の鳥速なんてどうでしょうか?」



 と、そこには真っ白な毛の鳥速がいた。

 見た目はおとなしそうだ。でも、見た目じゃあ、内面はわからない。

 起きてくれないかなと、思っていると思いが通じたのかノシリと起き上がり。


 そして、急に駆けると思えば、近くの鳥速にぶつかっては、颯爽と逃げていく。もちろん、ぶつかった鳥速も追いかけるが追いつけない。どうやら、相当な脚の早い鳥速のようだ。


「ちょっと、暴れん坊は勘弁してください」

「うん、私たちじゃあ、あの子のしつけはできないかも」

「そうですか? あの子はやんちゃなだけですが……仕方ないですね。それなら、あちらはどうでしょうか?」


 と、手で示された方を見ると、そこには全身が真黒クロスケな鳥速が寝ている。

 他の鳥速とは異なり、以上に黒い。他のが、白色や、茶色なのもあり、一体だけ浮いている。


「あの鳥速は?」

「ああ、あの鳥速は生まれつき黒い毛を持って生まれましたね、そのせいか、他の鳥速たちと関われ無いようでして。わたくしも色々と手はつくしましたが、どうにもならないのです」

「ふーん」

「寂しそうです」


 フレイが若干泣き声で言う。

 自分と重ねているのだろうか?


「トラウス……?」

「なんですか?」

「あの黒い子にしませんか?」

「どうしてです?」

「だって、あの子、可哀想だから……」


 やはり、同情したのか。

 まあ、フレイらしいけど。


「わたくしからもお勧めしますよ、主人殿」


 って、誰が主人だよ!

 と、脳内で一人ツッコミするも、むなしくなるから辞める。


「あの子は、何歳ですか?」

「今年で、2歳ですな。両親は病気で死んでいるので、実質一人ですな。あなた方が、買わないと、一生一羽で生きていくことになりますね」


 なんだか、脅されているようだ。

 だけど僕にはそんなのは通用しない。

 でも、フレイは無理だろうなあ、おそらく耐えられなくて……。


「買います、むしろ買わせて! ねえ、トラウス、いいでしょ? お願い」


 と、頭を下げて懇願してくる。

 そこまでしなくても。


「わかりました、姫のご要望にお応えします。店主、この黒い鳥速をください」

「はい、まいど。これは、今連れて行きます?」

「いえ、明日馬車が完成する予定なので、その時に来ます」

「はい、では、予約扱いということにしときます」

「はい」

「では、ありがとうございました」


 と、笑顔で見送りを受けて僕たちは外に出た。


「ごめんなさい。勝手なことを言ってしまいました」

「いや、僕もあの鳥は可哀想だと思ったし、別に謝る必要なんてないよ」

「ありがとう、やっぱりトラウス君は優しいね」


 フレイが笑顔で言う。

 それに、僕の右手に手を絡ませてくる。


「えっと……?」

「これは、私の国の感謝の気持ちの表現です」

「そ、そうなんだ」

「はい!」


 笑顔ではにかみつつ、フレイが少し強く握りしめる。

 やはり、手を繋ぎ歩くのは恥ずかしい。

 なんせ、通りの人たちがにやけて見てくるし、中には老人が遠い目で見てくる。

 だけど、たまにはいいかもしれない。


 

 とりあえず、僕の転生ライフは、幸せかもしれません。



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