◆05 食事の後に、これからの方針を決めました
「遅いです」
カルカル草原の森の中。
大きな木々の上には簡易的なツリーハウスが作られており、そこにフレイ姫は居た。
朝、トラウス君は報酬を貰いに町に戻ってしまった。そのため特にすることも無く、暇にしていた。
一回下に降りようかと思うものの、奴らに見つかるリスクも高いため止めておいた。
「日は上り頭上で輝いているし、お昼かな」
お腹がグーッと鳴り、お腹が空いていた。
なんせ、昨日から何も食べていない。持ってきた携帯食料も食べきってしまった。
早く何か食べたいな。
「フレイさん~、今帰りましたよー」
と、のん気な声が近くから聞こえてくる。
下を見ると、そこにはトラウス君の姿があった。
「はい、ここですよ、今、ロープを下ろしますね」
近くの幹に頑丈に括り付けた縄を下へと下ろす。するとあっという間にトラウス君が上がってくる。
手には何も持ってない。
腰に袋をかけているだけだ。
「ただいま」
「お帰り、トラウス君。それで、その」
「ああ、もちろん買ってきたよ」
と、腰の袋へと手を伸ばす。
そして、紙袋に包まれた物を取り出した。
どうやら、魔法の袋に入れてきたようだ。
そして、なんだかいい匂いが広がった。
「これは、なんでしょうか?」
「ああ、サンドイッチだよ。中身は、フルーツと、カツハムとコロッケ」
サンドイッチ?
聞いたことが無い食べ物だ。
どのようなものだろうか?
「では、いただきます」
小包を一つ手に取り包装を破ると、パンが出てきた。
パンには切れ込みが入って、その中にコロッケがある。
やはり、みたことが無い。
とりあえず、一口かじってみた。
「うああっ。肉汁が溢れてきて、美味しいです」
「それは良かった。姫様には合わないかと思ったけど、気にいってくれて良かったよ」
「はい」
◆
食事を終えると、トラウス君が寝転がった。
なんだか、猫みたいだ。
「それで、これからどうします、姫さま?」
と、ちょっとにやけながら、聞いてくる。
今までずっと、さん付けだったため、姫と呼ばれて少し動揺した。
なんだか、今まで当然のことだったのに、トラウス君に言われると変な感じだ。
「あの、私のことを姫と呼ばないでくれますか?」
「えっ? なんで? ああ、そういうことね。わかったよ、フレイ」
と、何を思ったのか、今度はそのまま呼んできた。
それも何か変な感じだ。
でも、姫とはなにか違うような気がする。何が違うのかよくわからないのだけれど。
「トラウスはどうしたいの?」
まあ、私も同じようにすればいいかも。
その方が、友達っぽいし……。
私が少し勇気をだし呼び捨てにするも、トラウスは普通に返してくる。
嬉しいような、悲しいような……。
「うーん、そうだなあ、とりあえず、別の国に行きたいな」
「どうして?」
「いや、昨日手に入れた薬草の中に赤の薬草があってさ、ここで全て買い取ってもらおうと思ったけど、流石に金額があれだから断られてさ」
赤の薬草。
ということは、不治の病をも直す薬草のことかしら。
あれって、かなり珍しいものだから、相当高く売れるのよね。
「どれくらいなの?」
「だいたい、10ギロくらいかな」
「へえぅ、えっ! 10ギロって……ほんとに?」
「うん、まあ、欲しい物があったら言ってよ、買ってあげるから」
「あ、ありがとう」
「いやいや、これでも僕は姫の騎士だからね。遠慮しなくていいよ」
と、まるで長年連れ添った友達のようにあっけらかんという。
「ははあ、はあ」
なんだかため息をついてしまう。
私は国を失った。
本来は、取り戻すために戦うべきなのに、そんな気すら失せてくる。
「だったら、私の騎士なんてやめないの?」
と、つい意地悪を言ってしまう。
かなりの金額を手に入れたトラウスが羨ましかった。
私はこんなに不幸なのに幸運な彼が少し妬ましい。
そんなことを思うなんて、姫失格、それどころか人間失格かもしれない。
そして言ったことに後悔する、なんでこんな良い人に酷いことをいってしまったのだろうか。
これじゃあ、あまりにも私は酷い、酷すぎる。
「うーん、フレイ姫は、本当に僕に止めてもらいたいの?」
と、真っ直ぐな目でトラウス君が訪ねてくる。
ほんとうは違う。
一緒に旅をしたい。仲間になってほしい。
それほどまで一人は辛い。
でも、だからといえ、これ以上迷惑を掛けられない。
これ以上、私に関わると、もしかしたら、トラウス君も家族と同じように死んでしまうかもしれない。
それは嫌だ。
「わ、私は」
何を言えばいいか、もうわからない。
助けてほしい。救ってほしい。
でも、同時に平和に生きてもらいたい。
ああ、そうだ。
なぜ気が付かなかったのだろうか。
私はトラウス君のことを大事に思っていたのか。
会って二日目、まだ彼のことを詳しくしらない。
好きな物も、嫌いな物も。
何も知らない。
でもなんだか気にいった。
彼の行動はまるで、王子様みたいな感じだった。
危険を顧みず私を助けてくれた。
そんなトラウス君に憧れを抱いていたのかもしれない……。
「ごめん、ごめんなさい」
「えっ? えっ、どうしたの?」
「私の騎士を止めないで……」
それが私の本心。
トラウス君と一緒にいたい。
一緒に旅をして、色々なことを学び、たくさんの思い出を手に入れたい。
「はあ」
と、トラウス君がため息をつく。
そして、微笑んだ。
「僕はフレイの騎士は止めないよ。それに、僕は幸運の置物だ。だから、僕が君を救うしかないでしょ?」
「ほんとに?」
「うん、それに決めたよ。僕は有り金すべてを使って、国を取り戻すよ」
その日、私はトラウス君の本当の姫になった。
そう、思うのだった。




