終わりの始まり
処女作です。
今更感がありますが、異世界転移物を書きたくなりました。
色々と拙い部分はあると思いますが、感想ご指摘お待ちしております。
3年前、世界初のVRMMOゲーム『ホープ・ロード・オンライン』が発売された。
それまでのゲーム機と言えば従来のゲームセンターにあるような機体か携帯ゲーム機、家庭用ゲーム機等が主流であった中、『ホープ・ロード・オンライン』はまさに当時のゲーマーたちにとっては革命的ともいえた発明だった。
もちろんその注目度はゲーマーだけにとどまらず、一般人やまったくゲームをやらない者も新感覚のゲームということで手を出してみようかと思いほとんどの者がこのゲームに興味を持ったり、日夜ニュースで「今までのゲームの常識が変わる?」などと報道されるようになり、『ホープ・ロード・オンライン』
はまさに社会現象になるほどの人気と注目度を得ていた。
そんな中、応募数500万人に対し抽選枠2万人のクローズド・βテストに当たった俺…皆川京介はかなりの幸運の持ち主だったのだろう。
俺は自分自身でも自分がかなりのゲーマーだと思っており、ほかのゲーマーたちの例にもれず『ホープ・ロード・オンライン』の発売を楽しみにしていた。だからこそ、俺はβテストに応募したのだ。
まあ、友人たちにはとてつもなく羨ましがれ、かなりの怨念のこもった眼差しで見られたのだが……
そして、『ホープ・ロード・オンライン』の開始日、俺はどんなモンスターがいるのか?ゲームの中で実際に動いたりダメージお受けたりした時どうなるんだろう?等とVRMMOという未知の体験ができるということに年がらもなく内心ドキドキしながらゲームにログインした。
その時までの俺は本当に幸せだったと思う。
そしてゲームは始まった。
デスゲームという地獄のゲームが……
ログインして初めにメニュー画面を出してステータスを確認しようと思った時、俺はふと違和感を覚えた。
何がおかしいんだろう?そう思いながらメニュー画面を見渡していくとログアウトボタンがないということに気付いた。
最初は俺だけに起こっている何かのバグか、ゲーム開始日なので何か不具合があるのかと思っていた。
だが、その考えは間違いだった。
ログインしてから数分後、βテスト当選者が一人残らず『ホープ・ロード・オンライン』に入った時、運営からのアナウンスが流れた。
その時伝えられたのは、このゲームが悪質なネットウイルスによってログアウト不可のゲームになった事。そして、この世界のラスボスを倒さない限り俺たちはこの世界からは永遠にログアウト不可だという事。万が一死んだ場合、現実での自分の体も死んでしまうデスゲームになってしまった事。外部からの救出は不可能なので自分たちで全部やるしかない事、そこまで伝えた時アナウンスが終わり、その数秒後、何故?噓でしょ?早くログアウトさせろよ!等というプレイヤーの叫びと暴動によって、あたりはパニックに包まれてしまった。
だが、それからの俺たちプレイヤーの行動は早かった。このゲームを早くクリアするべく、プレイヤーのほとんどゲーム攻略に乗り出したのだ。
俺も攻略組の一員だったが、正直死ぬのはとてつもなく怖くて、前線から離れたいと思った時も何回もあった。
だがプレイヤー皆を早く助けなければ、という気持ちと、何よりこんな状況だし死ぬのは怖いと思っているのにも関わらずこのゲームを攻略するのが、そして皆と一緒にプレイするのが楽しいと思ってしまっている自分がいた。だから俺は戦い続けた。
それに伴いレベルも上がり、ゲームを最前線で攻略していった俺は、いつしか攻略組の中でもトッププレイヤーと呼ばれるようになり、俺の名を知らぬ者はいなくなった程だ。
そんな風にして、俺たちプレやーは3年間の日々を過ごしていった…
そして、3年後の今日………
ついに、俺たちはラスボスを倒したんだ。
ラスボスの名前は「クルーエル」。こいつははっきりいって改造チートでもされてるのかという性能だった。やつはたった一撃で体力が満タンのプレイヤーを殺すことができ、なおかつ俺たちの攻撃はすべて5分の1程度に抑えられてしまっていた。だけどそんな極限状態の中で、俺を含めた総勢150名のプレイヤーたちは計12時間も戦い抜いて、結果としてボスを倒スことに成功した。
だけど、俺たちの受けた被害も尋常ではなくこの討伐に参加した一五〇名のうち一四九名が死んでしまっていた。つまり…生き残ったのは俺だけだということだ。
でも、ゲームをクリアしたことには変わりはなく、ログインしているほかのプレイヤーは全員ログアウトが完了したようだった。
残ったのは俺ただ一人。
「チクショウ……」
俺はただ悲しかった。
仲間たちが、親友たちがみんな死んでしまった…。それが俺の心に深い傷を残していた。
俺は、自分一人だけで帰ろうとは思えなかった。皆と一緒に元の世界に帰る、それこそが俺の目的だったからだ。
でも、このままここにいてはあいつ等の気持ちを無駄にしてしまう。そう思った俺はふらふらとした手つきでメニューアイコンを開いて、とりあえずログアウトボタンを押して帰ろうとした。
だが、メニュー画面を開いたとき、そんな俺の前に新たなメッセージが現れた。
もしかして、仲間を生き返らせてくれるのか?という淡い希望的な観測を持ちながらそのメッセージを開くと、その内容はこうであった。
『ラスボス、クルーエルの撃退を確認しました。
これにより成長限界の突破によるステータスが大幅アップします。
新たな称号「魔王を打ち倒し者」を会得しました。
ドロップアイテム、Gを手に入れたのでアイテムボックスに送りました』
それだけか、と正直俺は落胆した。そんなものは今の俺には必要ではない、今必要なのは、死んだあいつ等を生き返らすことだけなのだから。
やっぱり無理なのか。そう思いながら重たい手で今度こそログアウトボタンを押そうと考えてると、ふと下の画面に俺の目は吸い寄せられた。すると、そこには別のメッセージがあった。
どうせこれも俺には必要な物では無いだろう、と思いながらもなんとなくそのメッセージを開くと、そこには驚愕の内容が書かれていた。
『そして、このゲームをクリアしたあなたにプレゼントです!
なんと一つだけあなたの望んでいることを叶えて差し上げましょう。当然死者の蘇生でも死後一日ならまだそのプレイヤーの魂はプログラム化されて残っているので可能です。
ただし、このメッセージは30秒で消滅します。それまでに叶えたいことを願いながら決定ボタンを押してください。
注:この願いを使う場合、あなたには永遠にこの世界で生きてもらうことになります。それを覚悟の上でお使い下さい。』
このメッセージを見た瞬間、俺はすぐさま決定ボタンを押していた。
正直に言って俺だって元の世界に帰りたくないわけじゃない。でも、そんなのはきっと許される行為ではない。
俺が今ここにいて生きていられるのは皆がいたからであり、決して俺だけの力では魔王に勝つことは不可能だった。それなのに、皆を犠牲にして、俺だけ帰れるわけがないというのが俺の気持ちだ。
それに、リアルでは親も親せきもいなく、ずっと一人で生きていた俺にとっては元の世界に対してしがらみがあるわけでもない。
その俺とあいつ等を天秤にかけるなら、当然気持ちはあいつ等に傾く。
だからこそ俺は願った。たとえ、俺が元の世界に帰れなかったとしても皆を生き返らせて欲しいと。
次の瞬間、俺の視界は辺り一面に起こった光に埋め尽くされた。
『ボーナスの使用を確認しました。
これにより魔王戦で死んでいったプレイヤーの皆さんをログアウトをした状態で蘇生させます。
そして、ボーナスを使用したことによりログアウト不可、正しくは「ホープ・ロード・オンライン」と同じ仕様の異世界にキョウスケ様には行ってもらうことになります。
では、これからの異世界での生活を楽しんで下さい。』
その声が頭に響いたのと同時に、俺の意識は闇に落ちて行った。