始まりの爆撃 first bomber
文章が下手な上に誤字なんかも多いかもしれません、指摘してくれれば嬉しいです
2009年8月23日の日曜日
残り少ない夏休みを食いの残らぬよう全力で遊び尽くして最高の思い出を作ってやる
という俺のはかない夢はいとも簡単に砕けちり来年の受験へ向けての夏期講習だとか、とてもじゃないが一ヶ月で終わらせるなんて不可能にしか思えない量の夏休みの宿題だとか、何だかよく分からんが去年の夏に人間を捨てて覚醒してしまった妹の世話だとかで消えて行った。
今日だってせっかく久しぶりに何の予定の無い平和な一日を過ごせる物かと思っていたのに、俺の知らぬ間に母親が勝手に申し込んでいた『高校の体験入学』とやらに何故か行かされている・・・。
親曰く「自分の受験する学校くらい見てこい」とのこと
いや、確かに
確かにね?ほら、今の世の中受験に勝つためにはこのような一日体験入学やら体験授業やら、少しでも多く参加すれば受験に有利になる系のイベントには積極的に参加した方がいいのは分かりますよ、分かりますとも?わかりますけれども・・・
流石に俺に無許可で、しかもこんなに暑い日に、せっかくの休みをゴリロリとすり潰して行くって言うのは酷いんじゃない?
しかも行けって言われたの昨日の晩だし・・・
「はあ・・・」
思わずため息が出てしまうのも仕方が無い。
チラリと左手首に付けている腕時計に目をやる
カチカチと音をならしながら時計が示す時間は午前11時半
この体験入学が始まったのがたしか午前9時くらいだったはずだから、開始して3時間半たつ事になるな。
開始時は体験に来ている各中学校の生徒ごとに色んな教室をまわって施設の説明だとか資料の配布だとか聞いていても何の面白みの無い様な事をただ聞くだけのつまらない体験入学だった。
そんでもって今は何をしているのかと言うとクソ蒸し暑い体育館の中、大量の地元中学生ざっと200人くらいの人数全員で体育座りをしながら舞台の上にいる高校生代表だという女子生徒のスピーチを聞いているのであった。
あーそれにしても長い、ホントに高校生のスピーチかよこれ
やっぱ地元一番の名門校の生徒となるとスピーチの内容もなかなか難しい上に量も多い訳ですか
中学生相手にぶっちゃけ何言ってるのかよく理解できんスピーチすんなアホ
そういう頭いいですよアピールみたいなのは他所でやってくれ
「はあ・・・」
2度目のため息が出る
暑さのせいだろうか、なんだか頭がイライラして来たそんなとき
「なあなあ鶴来〜」
まるで俺のイライラを加速させるかのように注がれたその一言
を発したのは俺の後ろで体育座りをしながら俺と同じくこの学校の体験入学に来た友達『池神 章』だった。
「なんだ?悪いが俺は今この暑さのせいでイライラしているんだ、くだらない理由で俺の名を呼んだと言うのなら・・・わかってるだろーなあ?」
「いやいやいやそんな〜イヤだなあ鶴来ったら〜も〜うみんな集中してスピーチを聴いているって時に、俺がくだらない理由でお前に話しかけるとでも思ってるのか?」
思ってる。
コイツは昔からそういうヤツだ
「じゃあ何だ、言ってみろ」
「おっ!!それでこそ鶴来君!!ほらほら今ステージの上でスピーチしてる女の子見てみろよ!!」
「言われなくても見てるしスピーチも聴いてるよ、それがどうした?」
「かわいくね?」
「知らねえよ!!」
ほらな?
コイツ、頭はいいし運動神経も抜群で顔も・・・認めたくはないが世に言うイケメンってヤツに分類される方だ。
性格は見ての通り
はい説明終わり
「やっぱ一流の高校は生徒も一流ってか?可愛いなあ〜」
「俺の後ろでニヤニヤすんな気持ち悪い」
「そんな事言うか〜鶴来〜ほらお前もっとちゃんと見てみろよ超可愛いからさ!!」
「だからさっきから見てるって言ってるだろバカ、それに俺は・・・女子とか興味ないからな!!」
「また、そんな事言う〜!あ、そっかお前には可愛い妹がいるからか!納得」
「何に納得しているんだお前は・・・それにあんな悪魔みたいなヤツの事を可愛いと思えるほど俺の頭は狂ってはいない」
「えーそんな事ねえよー可愛いじゃんかよーお前の妹さんー」
「だまれロリコン野郎!!?」
「・・・」
「・・・いきなり黙るなよ」
「///」
「いきなり照れるなよ!!?」
などとコイツとくだらない会話をしているうちにいつの間にかスピーチは終わったらしく体育館の舞台の上には誰もいなくなっていた
今後の予定を確認するために今朝いくつか配布された資料の1つに目を通す
「えーっと確か今日は午前中で終わりだったハズだよな?」
「ああ、たしかなあの可愛いJKのスピーチも終わっちゃったしあとはもう解散だろ」
ペラペラと資料を流し読みしながら確認する
うん、やっぱり資料にもそう書いてある
はあ、やっと終わりか・・・ま、いいからさっさとこの体育館から俺を出してくれ
いい加減これ以上ここにいたら蒸し焼きとかそう言うレベルじゃない
というか本当に今日の体育館の暑さは尋常じゃない
外で火事でも起きているのではないかと本気で疑ってしまうくらい暑い
Yシャツの下のTシャツなんて汗でビチャビチャだ
早く家に帰って全力でシャワーを浴びたいもんだぜ。
予定は確認し終わったので資料を一端床に起き再び腕時計に視線を戻す
時計が指す時間は午前11時30分
おかしいな?さっき時間を確認した時から1分たりとも時間が経過していない
おいおい暑さのせいでついに視覚に問題でも生じたのか?
章と話し込んでいた訳だし時計を確認してから時間が経っていないなんて事はあり得ないはずなんだが・・・
割と本気で自分がおかしくなってしまったと心配してしまうではないか怖いなあ
まあ、自分が思っていたほど時間が過ぎるのが遅かったなんてよくある事だし別に気にするほどでもないか、と半ば強引に納得し、とにかくさっさとこの体育館から出て行きたい俺は体育座りから姿勢を崩して後ろにいる章ともう少し話そうと振り向こうとした
その時
!!!!?————ガガガガガガガガ————
「!!?」
「なに!!?」
体育館の床が一瞬大きく揺れた
いや正確には床ではなく体育館全体が一瞬大きく揺れた
あまりに急すぎる出来事に動揺が止まらない
あまりに一瞬過ぎる出来事で何が起きたのか理解できない
とにかく冷静になれ
冷静になるんだ・・・
「だ、大丈夫か・・・あきら」
動揺が押さえきれずに震えた声で章に話しかける
「あ、ああ・・・大丈夫だ・・・一体なにが」
流石の章も動揺が隠せていない様子だった
何と言っても本当に一瞬の出来事だったからな時間にして0、5秒くらい
しかしその短い時間の中でもしっかりと分かるくらいに大きくこの体育館が揺れたのが分かった
だが俺たちが動揺している理由はそんな時間とか揺れとかそう言った問題では決してない
俺たちの目の前に広がる世界はこの一瞬、この0,5秒、いやもしかしたらもっと前に俺たちが気がつかなかっただけなのかも知れないがとにかく・・・
とにかく俺たちの目の前に広がる世界は・・・
大きく変わってしまっていた
「なんなんだよ・・・・これ」
あいかわらず震えた声で章がつぶやく
俺たちの目の前には
大きく穴の開いた体育館の天井と
その天井の瓦礫の下敷きになった大量の中学生達の血と涙と叫び声が広がっていた