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Xenoglossia  作者: Nego
要塞都市グラディアス
8/17

Chapter2-1 ~一人~

今回から2章グラディアス編が始まります

 アイビスを出て以来、レイカは休むことなく旅を続けた。彼女が文献を追って旅した歳月は、優に一世紀に及んだ。その間、アルストラムの世界は、魔族によってさらに深く侵食されていた。黒雲に覆われた空も増え、大地は痩せ、魔族の直接的な影響だけでなく、その魔力の影響を受けた動植物が、おぞましい変異を遂げた魔物として各地に溢れていた。


 彼女の目的は、ゼノグラシアとしての使命を完遂するための知識と、異世界へ転移するための術式の完全な情報を見つけること。レイカは、各大陸の図書館、神殿や遺跡、そして隠された賢者の庵を訪ね歩いた。その道中は、絶え間ない魔物との戦いだった。巨大化した昆虫型の魔物、鋭利な刃物を持つ獣型の変異種、そして毒を吐き出す植物型の魔物など、彼女は数えきれないほどの魔物を討伐してきた。戦いの中で、レイカの扱う魔法は、その精度と威力を増し、その応用力は飛躍的に向上していた。


 かつては感情の爆発によってしか放てなかった氷の魔法も、今や彼女の冷静な意志に従い、無数の敵を一瞬で凍てつかせる必殺の技となっていた。彼女の魔力は、羽根を失ったにもかかわらず、数々の文献や賢者の言葉を吸収し、変異した強大な魔物を討ち続けるたびに、むしろ強化されていった。


 レイカの旅は、孤独な戦いと、そして避けられない喪失の歴史だった。彼女は、滅びかけた町や村で、時に人々を魔族や変異魔物から救い、絶望的な戦いの最前線に立たされた。その過程で、レイカの冷たさの中にある強さに惹かれ、共に戦うことを選ぶ者もいた。頑強な騎士、諦めを知らない魔法使い、そして、人間と多種族の共存を夢見る若者…彼らはレイカの盾となり、彼女の孤独な心を一時的に温めた。しかし、彼らのレイカのように永遠ではなかった。


 魔族や強大な魔物との激しい戦いの中で、レイカが守ろうとした人々は次々と命を落とした。レイカは、彼らの死に涙を流すことはなかったが、その魂を葬る度に彼女の旅の使命はより重くのしかかってきた。

「私は、“誰か”を救わない。ただ、この世界を救う使命を果たすだけ」

長すぎる旅路の中でレイカはそう結論付け、感情を記憶の奥深くへと押し込めようとした。しかし、エルフィンたちによって築かれた感情を簡単に消し去ることはできず、またそれを完全に正しいことだと思うこともできなかった。


 何十年という歳月が経過するごとに、レイカはアイビスに残したセフィラを案じた。セフィラは妖精族であるため長命だが、レイカがアイビスを発ってからすでに半世紀以上が経過していた。レイカは時折、遠方の情報網を通じてセフィラの安否を確認した。セフィラは、心身の傷は癒えないながらも、レイカが託した仲間たちに支えられ、アイビスの療養施設で静かに生き続けていた。


 しかし、二人の間には、計り知れない時の流れがもたらす心の隔たりが生まれていた。セフィラは、時が経ってもエルフィンとエデラスを失った悲しみに囚われ、戦いのない場所での静かな生活を選び続けた。レイカは、孤独と生きるセフィラを、遠くから見守ることを選んだ。それが、レイカの選んだセフィラの兄や仲間を守れなかった償いだった。


 そして、旅は一つの転機を迎える。レイカが長年追っていた、過去のゼノグラシアの使命に関する手がかりは、アルストラムの西方、古くから騎士団の発祥地として知られる巨大な城塞都市グラディアスに集積しているという確度の高い情報が、レイカの元に届いた。グラディアスは、魔族の侵攻が最も激しい地域の一つに位置するが、同時に、世界最強と言われる騎士団の要塞であり、徹底した戦術と軍事の知識が集積する場所でもあった。グラディアスは、レイカの求める知識と戦術、その両方を提供する可能性を秘めていた。


 厚い黒雲の下、広大な平原の先に、レイカの青い瞳は、無数の巨大な戦術訓練の塔を持つ城塞都市の影を捉えた。レイカは、背中の古傷にエルフィンとエデラスの犠牲、そして自責の念に思いを馳せた。レイカは覚悟を新たにし、騎士と戦術の都グラディアスへと、足を踏み出した。

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