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社畜転生 〜魔物と為りて世界を覇す〜  作者: ただの酒呑み
第1章 魔族ゼルド顕名編
7/28

7.七大魔将ナキ

 戦の後、数日が経った。

 村の広場に魔物たちが集められ、昇格の儀が行われる。


 壇上に立つのはガルザーク。その背後に俺とラグが並んでいた。


「この戦で最も功を挙げたのはゼルドとその小隊だ」

 ガルザークの野太い声が響く。


「本来ならば順序を踏むべきだが……俺は魔族様に掛け合った。ゼルドの力は中級に収まらぬ。よって本日より――上級魔物に昇格とする!」


 途端、広場が騒然となる。


 下級は驚愕し、中級は顔をしかめた。

 どうやら異例の昇格らしい。

 共に戦った小隊の者たちは万歳を叫び、目を輝かせていた。


「また……! 敵将を討ち取った功により、ラグを中級に昇格させる!」


 今度は方々から歓声が湧き上がる。


 凡庸な男の成り上がりは、卑屈だった下級どもに強い希望を与えた。

 導いた俺は崇拝の対象――思惑通りだ。


 その他、古参の魔物二名が中級に昇格し、儀は幕を閉じた。


「……先日拳を交えた時、俺は過小に評価したようだ。ゼルド、強い隊を作れ。貴様ならば魔族にも手が届くかもしれん」


 俺はゆっくり頷き、ガルザークが突き出した腕に、自分の腕を重ねた。


 その後、祝勝の宴が始まった。火の粉が舞い、笑いと酒の匂いが広場を満たす。


「こ……これがお酒……」


 ラグが不思議そうに杯を見つめる。

 下級に配られることは少なく、彼にとっては初の酒だった。


「グイッ!」


 一口呑んだ次の瞬間。

 ラグは顔を真っ赤にして、立ち上がった。


「俺は中級だーっ!」


「黙れラグ! 身の程を知れ!」

「ゴブリンごときが! 調子に乗るな!」


 酔ったラグが裸で暴れている。

 奴は意外と力が強いらしい。中級数人で止めに掛かっていた。


 俺は杯を傾けながら考える。


 ――足場は固まった……だが、これはまだ入り口に過ぎない。


 その時だった。


 ――ドォンッ!!


 空が裂けるような轟音。

 瞬間、赤黒い光が村を覆い、烈風が広場の屋台や木々を吹き飛ばした。


 上空から、巨大な影が炎を纏って急降下する。


 地面が爆ぜ、直撃の中心にいた下級魔物が数体、肉塊となって潰れた。

 血の霧が広がり、宴は一瞬で凍り付く。


 誰もがその姿を仰ぎ見た。


 赤黒の甲冑に身を包み、深紅の長髪をなびかせる長身の魔物。

 その切れ長の眼は燃え上がる刃のようで、口元には好戦的な嗤い。


 酔っていたはずのラグが顔を伏せ、声を震わせる。

「……な、七大魔将……“炎帝”ナキ様……!」


 広場の魔物たちは一斉に膝を折り、頭を地につけた。

 ガルザークでさえ歯を食いしばり、額に汗を滲ませている。


 目に映った瞬間に理解した――。

 こいつは他の魔物とは訳が違う。


 これが七大魔将。

 存在そのものが、支配と破壊の象徴だ。


 ナキは赤黒のマントを翻し、真っ直ぐに俺の方へ歩いてくる。

 周囲の魔物たちは無言で道を開けた。


 眼前に立ったナキが、嗤い混じりに言った。

「おい、そこのお前。名は何という?」


 俺はナキの眼を真っ直ぐに見て答える。


「……ゼルドだ」


「そうか……良い名だ。先日の戦、遠視水晶を通して見ていたぞ。お前……本気を出していなかったな?」


 背筋が粟立つ。――見抜かれている。


「翼の一振りで軍列を吹き飛ばせる力を隠し、小隊の功績に譲った。この場は自分に相応しくないと示すように……」


 そして、ナキは豪快に嗤い、大剣を地に叩きつけた。

 大地が裂け、近くの下級が悲鳴を上げて逃げ惑う。


「良い! お前は魔族になれる器だ! だが――今すぐではつまらん」


 深紅の瞳が、爛々と燃え上がる。


「近く、人間共の交易都市ーー"イシュタル"を堕とすべく、我が配下が戦を起こす。そこで隊を率い、圧倒的な戦果を残せ」


「そうすれば、俺の名で魔族へ昇格させてやろう」


 広場が騒然とする。

 誰もが俺を見つめ、次の言葉を待っていた。


 俺は杯を置き、一歩前に出あ。

「……いいだろう。見ていろ、七大魔将ナキ。必ずや、お前を満足させる」


 ナキの嗤いは更に深くなる。

「いいぞ、ゼルド! その野心、俺は嫌いじゃない。次の戦を楽しみにしているぞ!」


 赤黒のマントを翻し、夜空へと飛び立つナキ。

 残されたのは、血の匂いと、絶対的な恐怖ーーそして興奮だった。


 俺は静かに拳を握る。

 ――魔族への道は、次の戦で切り開く。力と知恵、両方でな。

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