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社畜転生 〜魔物と為りて世界を覇す〜  作者: ただの酒呑み
第1章 魔族ゼルド顕名編
3/28

3.徴兵の黒鉄紋ーー我が名は"ゼルド"

 翌朝、俺はラグたちを伴い、荒野の奥にある魔物の村へ向かった。


「……着きました。ここが俺たちの村です」


 ラグの声に導かれ、石塀に囲まれた小さな集落が見えた。掘っ立て小屋と、煤まみれの道。


 そこかしこに、痩せ細った魔物たちがうずくまり、怯えた目でこちらを見ていた。


 ラグが声を潜めて説明する。


「魔王軍に入れるのは、下級魔物以上の力を示した者だけです。ここにいる連中は……いわば“野良”です。軍に拾われず、使い潰されるのを待つだけの存在」


 足元に転がる骸骨のような影を見下ろしながら思う。ここでも「強さ」が生死の資格を決める。


 やがて村の中央にある広場へ出た。

 そこで俺は再び問いを投げかけた。


「昨日の話を整理しろ。魔王軍の階級、もう一度説明してくれ」


 ラグは姿勢を正し、部下たちも怯えながら耳を傾ける。


「はい。最上位はもちろん魔王。その下に最強格である“七大魔将”がいます。彼らは魔族の中でも特別な存在……」


 ……七大魔将。なかなか手強そうだ。


「その配下に一般的な"魔族”がいて、領地を与えられます。彼らも本来、我々と同じ魔物ですが、魔族になった途端、魔物と呼ぶことは禁じられ、別格となります」


「ふむ……そして魔物は?」


「魔物の中でも階級は細かく分かれています。まず魔族の直下に"上級魔物”がいて、大隊規模を率います。次が“中級魔物”で分隊長格」


「その下が我々"下級"。最下層ですが……ここにも小さな上下はあります」


 なるほど、大体理解できた。やはり会社のように確りとした指揮系統があるわけだ。


▪️魔王軍体制

・魔王

・七大魔将(それぞれが十万体規模を掌握)

・魔族(一万体規模を掌握)

ーー以下が魔物

・上級魔物(五百-千体規模を束ねる)

・中級魔物(百体規模を束ねる)

・下級魔物(最下層、細かくは更に階級あり)


「じゃあ、ここでうずくまってる野良魔物は?」


 ラグは眉をひそめ、声を落とした。

「……奴らは魔王軍に属する力すらない。徴兵されれば囮や奴隷兵にされるだけです」


 側にいた痩せた魔物の子供が、苦しそうに呻く。言葉すら喋れないのだろう…。


 その無力さに、胸の奥が妙にざわつく。だが同時に、冷たい計算も働く。


 ――生活基盤を与えれば、こいつらも従う。頭数を揃える最短ルートだな。


 広場の一角に、魔王軍の徴兵所があった。黒鉄の看板に刻まれた紋章。

 粗末な机の後ろで、中級魔物らしき鎧姿が書類を睨んでいる。


「新参か?」


 俺を見上げた瞬間、その瞳が驚愕に染まった。

 背の翼と鱗に気づいたのだろう。


「……野良の姿ではないな。貴様、何者だ」


 俺は静かに笑って答えた。

「名乗るほどのものじゃない。ただ役には立てるはずだ。魔王軍に入れてくれ」


「……おい貴様!何者か知らんが、中級の私に向かって何たる口ぶりだ!」


 立ち上がった奴を制するように、俺は翼を広げた。 すると突風で背後の石壁に亀裂が走る。


「ひえっ……!」

 中級の眼に恐怖が映った。


「とにかく……魔王軍に入れてくれればいいんだ」


 後ろにいた魔物は唖然とし、慌てて書類を取り出した。


 一式を纏めた中級が、平静を装うように聞いてくる。

「それで貴様…名は何という?」


「ふっ俺の名か……」


 ……あーーやべ、考えてなかった。

 人間時代の本名は嫌だし、んーーそうだな。


「……ゼルドだ。我が名はゼルド」


 俺は紙に爪痕のような署名を刻み、黒鉄の腕輪を受け取った。下級魔物の印らしい。


 これで俺も……魔王軍の一員か。


 視界に広がるのは、まだ貧しい村。

 だが俺の眼には、すでに一国を築く未来が映っていた。


「よし。これで道が見えた。野良も下級も関係ない。俺の下に来るなら全員使ってやる」


 その言葉に、ラグたちは膝をつき、頭を下げる。

 俺は満足げに笑った。


「征服の始まりだ」

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