表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜転生 〜魔物と為りて世界を覇す〜  作者: ただの酒呑み
第2章 イシュタル連邦胎動編
25/28

25.イシュタル連邦国家始動

 あの演説から数日後。


 イシュタル黒曜殿の会議室には、主要幹部が集められていた。

 ゼルドの前に立つのは、皆が見慣れぬ巨躯の魔物。


 ラグが驚愕の声を上げる。

「あなたは……ガルザーク様!」


 両腕に鎖を巻き付けたまま、彼は粗野に笑った。


「ゼルドに呼ばれてな。魔物と人間を混ぜて国を作るなど正気の沙汰ではないが……やはり此奴は面白い」


「ゼルド様になんと不遜な……!」

 立ち上がるエリスをゼルドが手で制する。


「いいんだエリス。ガルザークはラグ同様、俺が魔王軍に入ったときからの仲だ」


「……取り乱してしまい、失礼致しました」


 ゼルドが皆に向き直る。

「ガルザークを黒曜軍に迎え入れ、前線部隊を任せる」


 その声に、グレンダの翼がわずかに震えた。

 察したかのようにゼルドは続ける。


「影盾には引き続き治安と暗部を担ってもらう。ただ軍を常備するには、より多くの頭数が必要だ」


 ゼルドは窓の外を見やりながら言った。

「粗野だが戦に飢えた魔物、武器を扱える人間は沢山いる。そうした者たちを、ガルザークの"力"で束ねる」


 ガルザークは一瞬だけ目を細め、それから歯を見せて笑った。

「任せとけ。俺の拳で秩序を叩き込んでやる」


 ガルザークから魔力が溢れ出す。

 ゼルドは、彼の純粋な闘争本能を見て取った。


「……ふむ。荒々しいが使えそうだな」

 グレンダが呟くと、ゼルドは頷いた。


「グレンダの影盾とガルザークの人魔混合隊。この両輪を黒曜軍の基盤とする」


 こうして、軍の骨格が形になった。


「早速だが……初陣の標的は、北西の小国――ジーランド。最高峰の治癒魔法を使う人間、"兵僧"ウルス・フローレンスが住まう地だ」


 ガルザークが腕を鳴らす。

「ジーランド……面白い。イシュタル同様、自衛組織を持ち、そのウルスも戦に出ると聞く。ゼルド、総勢何名で撃って出る?」


「そうだな……大規模な戦になっても面倒だ」


 ゼルドは口角を上げた。


「ガルザーク隊の300名、影盾100名の計400で良い」


「……400!?」

「そんな頭数で勝てるはずがないだろう……!」


「安心しろお前たち……」


 微かに揺らめく黒炎。


「俺が前線に立つ」


 ゼルドの言葉に皆が静まり、エリスは恍惚の表情を浮かべた。

「……それは安心です」


 そして戦場。

 ガルザークの声が響く。


「ぶっ壊せぇぇぇぇッ!」


 暴風のような突撃。

 彼の背を追う人魔混合隊は、獣の群れのように敵陣を蹂躙する。


「"地砕轟"!」

 

 岩壁がせり上がり、敵兵を木っ端微塵にする。

 以前よりも魔力が強化されているようだ。


 上空ではグレンダが飛び、影盾を的確に指揮。

 ガルザーク隊の粗野な面を補うように、戦況を制御している。


 少数精鋭で臨んだ初陣は、想像以上に順調な滑り出しだった。


 だが、ジーランド軍はまだ崩れない。

 その要因は明らか――。


 最奥に構える兵僧ウルスがすぐさま詠唱し、手を振るう。


「……"極楽(エリュシオン)恩寵(・グレイス)"」


 数十の兵の背に無数の治癒紋が光り、傷を瞬時に癒やしていく。

 彼の動きは、まるで舞のように美しかった。


「……みんな、頑張ってよ。結構しんどいんだから、これ」


 ウルスは絶えず魔法を繰り出し続ける。

 ジーランド軍は数的優位を活かし、黒曜軍を押し返そうとしていた。


 ――ドォンッ!!


 そんな戦場の中央に飛来する黒い影。


「癒やしは秩序を保つ。だが――」


 ゼルドの瞳が輝いた。


「"黒炎葬"!」


 ――まさに圧巻。

 漆黒の焔が渦を巻き、一撃で百近い兵士たちが灰と化す。


 小国ジーランド。

 急な防衛戦でも、ウルスの治癒魔法により持ち堪え、連合軍の到着を待つ戦法を得意としていた。


 だがしかし――。


「黒炎相手には相性が悪いわ……」


 ウルスは諦めの表情を浮かべ、静かに跪いた。


「お前……!諦めが早いぞ!」

「ジーランド国民の誇りはないのか……!」


 ウルスは胸を張って答えた。

「うるさい!人間、命あってこそです!」


 ゼルドは思った。

 ――面白いやつだな。


 同時に少し驚く。

 "第三の眼"を手に入れてから、魔力量の多寡を見れるようになったが……この人間は間違いなくトップクラスだ。俺自身を除いてだが。


「ウルス・フローレンスよ。歓迎しよう。お前の術は、今よりイシュタルを癒やす光だ」


「任せなさい!」


 黒曜軍初陣、完勝。

 "吸収”による支配の始まりだった。


 ――その頃、南方の荒野。


 峠の上に立つのは、七大魔将の一角。

 "朱喰"ラズナー・ライオネル・ダーマー。


 背後には無数の兵。

 旗が翻り、熱風が吹き荒れる。


「戦だ!戦が始まる……!今日は何人殺せるだろうかああッ!」


 ラズナーは人間の頭を手に持ち、それを"食べていた"。

 その異様な光景に、配下の魔物でさえ恐怖する。


 隣に控えるラズナー軍副官、バズラミュートが報告した。

「黒炎のゼルドが、連邦国家を宣言したとか……」


 ラズナーは血に染まった口の端を吊り上げた。

「上等だあああッ!最強は七大魔将――このラズナー様だと教えてやる……!」


 次なる戦火が、轟々と燃え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ