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社畜転生 〜魔物と為りて世界を覇す〜  作者: ただの酒呑み
第1章 魔族ゼルド顕名編
17/28

17."氷牙"カリス・ウィルバーン

 砦の上に立つ白銀の剣士――八闘剣カリスが蒼氷の剣を掲げた瞬間、戦場の空気は一変した。


「俺たちの勝ちだーーーッ!」

「……カリス様!どうかお助けください……!」


 以前配下から聞いたことがある。

 並み居る八闘剣の中でも、奴の戦場での支配力は随一だと。まあ、一旦お手並み拝見か。


「……行け」


 カリスの声が轟くと同時に、砦の門が破られ、カリス直属の兵団――"氷兵軍"がなだれ込んできた。


 人間兵に過ぎぬはずの彼らの肌は蒼白に染まり、剣には氷の刃が宿る。

 歩むだけで大地は凍り、血に濡れた土は白銀の氷床へと変わっていく。


「くっ……来やがったか!」


 最前線で唸りを上げるのはラグだ。二本の短剣を逆手に構え、雪崩れる氷兵軍を迎え撃つ。


 刃が閃き、四肢が飛ぶ。

 しかし倒れた者は凍気に覆われすぐに立ち上がる。

 氷が傷口を塞ぎ、すぐに戦列へ戻る様はまるで化け物の蘇生だ。


「……再生だと!? ふざけやがって!」


 ラグは舌打ちし、再び斬り込む。

 何度肉を裂いても、氷兵は怯むことなく迫ってくる。


 頭上から影が差す。

「ラグ、下がれ!」


 冷徹な声と共に、巨大な影が降下する。

 鳥の翼を持つ魔族、影盾の隊長グレンダだ。


 彼は長槍を振り下ろし、氷兵を串刺しにする。

 鋭い嘴のような声で告げる。

「怯むな! 影盾、散開――氷兵を狩れ!」


 影盾の精鋭たちが一斉に走り出す。槍が閃き、氷兵の列を切り裂いていく。

 だがその上空には氷の矢が雨のように降り注いだ。


「チッ……空まで封じるか」


 グレンダは舌打ちし、翼をたたんで急降下する。

 氷矢を避けつつ地上の兵を蹴散らすが、その額には冷たい汗が浮かんでいた。


 その横で、大地が震えた。

「……どけ」


 低く響く声と共に、巨体が現れる。岩巨人族の石工長――ザイオン。


 片腕で岩を引き抜き、それを兵の陣に叩き込む。

 砕けた巨石が氷兵を数十人まとめて押し潰す。


 だが次の瞬間、ザイオンの足元が凍りつき、動きが鈍る。

 氷の床が彼の巨躯を拘束するように絡みついていく。


「……ッ!」

 巨腕を振り払い、氷を粉砕するザイオン。

 しかしその足取りは重く、砦から降り注ぐ冷気が彼の動きを確実に蝕んでいく。


 魔物たちは狂気に駆られ、氷兵に喰らいつくように斬りかかっていった。

 しかし氷兵軍の猛威は衰えない。


 氷気に包まれた剣が魔物の肉体を次々と切り裂き、倒れた魔物は瞬時に氷像と化して砕け散る。


「こ……これは……!」

 ラグが血に濡れた刃を構えながら叫ぶ。


「この氷……一人一人の魔法じゃない。カリスの剣そのものが、軍全体を強化している……!」


 砦の上。

 白銀の鎧に蒼氷を纏ったカリスは静かに剣を掲げている。

 彼が振り下ろすたび、「範囲魔法」が隊列を覆い、魔物の軍勢を押し返していく。


 グレンダが血に濡れた翼を翻し、悔しげに歯噛みした。

「……これが、八闘剣……!」


 ザイオンの肩には矢が突き立ち、氷で焼けるように肉が凍り付いていた。

 ラグは肩で息をしながらも、なお前を見据えていた。


 その時、視界の端が黒く揺らいだ。漆黒の炎が砂煙の向こうで蠢き、迸る。

 幾人もの氷兵が、瞬時に消え去る。


 高台から降り立った影は、狂気と愉悦を混ぜた笑みを浮かべる。


「あれは……ジルベルト殿を葬った魔物!」

「黒炎のゼルド!奴があの禁忌魔法の使い手か……!」


 怯む兵士たちに対し、氷兵軍の幹部――女剣士マチルダが叫ぶ。


「お前たち!後ろには護るべき民がいるぞ!……負けてられるのか!」


「そうだ……。俺たちは誇り高き国軍兵士……」

「……行くぞ!黒炎の魔物を殺せ!」


 数十の兵士たちが一斉にゼルドに切り掛かる。


 彼は――笑った。


「"黒炎葬"」


 途端に漆黒の焔が軍勢を飲み込み、灰へと変える。

 存在そのものの"抹消"。


「……化け物だ……」


 再び後退りした兵士たちの中から、マチルダが飛び出した。


「怪物め……!ここで死ね!"氷刃乱撃"!」


 魔力を込めた無数の斬撃が襲う。

 ゼルドはまたも笑い、何とそのまま斬撃を喰らってみせた。


 ――シューッ……。


「……何かしたか?」


 その肌には傷一つ付いていない。


「なんだこいつは……」


 マチルダが絶望の表情を浮かべたと同時に、ゼルドが飛び掛かる。


「ただの"パンチ"だ。受けてみろ」


 轟音と共に彼女に迫り来る拳――。

「マチルダ様ーーッ!」


 兵士たちの悲鳴を置き去り、マチルダの顔に飛んだ拳は――蒼剣によって受け止められた。


 戦場に凄まじい衝撃波が走る。


「マチルダ。お前の手には負えない。下がっていろ」


「……カ、カリス様……!」


「……おい。格好良いな」

 翼を広げたゼルドに、カリスが瞬時に斬り込む。


「"氷破一閃"」


 凄まじい衝撃と共に、ゼルドの体が弾け飛んだ。


 ――ゼルドはすぐに立ち、呟く。

「面白い。これが八闘剣……」


 氷と炎、冷気と溶解。

 二つの極が戦場にぶつかり合う前触れが、荒野に深い轟きを残した。

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