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「機械的と予想していたが……」
VR、仮想世界がどう開発されるのかは知らないが、二階にはその装置らしき物は一切置かれていない。
依頼者であるメイデンが【朽ち果てた城】と呼んだように、洋式の……ファンタジーに出てきそうな城の内装になっている。
一階、入口時は普通のビルであり、上を見た時はそんな風ではないように見えたが……
登ってきた非常階段では三階は無理そうだ。別の非常階段、ないしエスカレーターで移動するしかなかった。
「誰かいたのか。いや……それも当然だな」
【血の奪還】というのが依頼内容。奪還という言葉がある以上、誰かがこの場に来たのだろう。
勿論、現場が別という可能性もある。
だが、誰かがいた形跡が残っている。この場とは場違いな代物。現代的な缶詰や袋、パック飲料等だ。
それも一人分ではなく、多数。
参加者が五人一緒に行動して、この場所まで辿り着いたと考えるべきだ。
「この仮想世界……【ロストワールド】が何を目的として作られたのか。参加者達は……」
【血の奪還】という依頼。
【ロストワールド】は荒廃した世界が舞台であり、N市を模倣していたとしても、ゲーム系の仮想世界になる。
ゲームも最終目標があり、それが【血の奪取】という内容だとしてもおかしくはない。
その場合、管理者側も認知しているはず。【血の奪還】という依頼を出さない。
そもそも、【ロストワールド】はすでに封鎖されている。奪還するにしても、参加者達であるプレイヤー達がログイン不可能。
管理者であれば、強制的に戻す事も可能ではないのか。
五人のプレイヤー……参加者ではなく、侵入者ならどうだ?
【血の奪還】は【ロストワールド】の情報を奪い返す。封鎖している【ロストワールド】にも侵入する可能性は十分あり、そこを狙うつもりなのか。
「だが……それを俺一人で見つけ出すのは、管理者側も難しい事は分かるはず。それに……」
侵入者だった場合、話を聞くのは【ロストワールド】ではなく、現実の方が情報奪われず、作戦を知られずに済むはずだ。
「……考え過ぎるのは悪い癖だな」
依頼者であるメイデンから話を聞かない限り、俺の憶測に過ぎない。
「複数人いた……というのは確かというだけだ」
俺は食料のゴミが落ちていた場所を離れ、三階に続く非常階段へ。
三階へ繋がるエスカレーターを見つけたが、破壊されている。その上、どういうわけか、明かりが一切見えない。
一階、二階と紅い月光が広がっていのにも関わらずに。
三階で遮断されているのはおかしい。
「三階自体が駄目なのか」
非常階段は四階まで続いている。三階の扉は鍵が掛けられており、中に入れなくなっている。
二階のエスカレーターから三階が見えなかったのも、情報が非公開になっているせいなのか。




