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「交通手段は……」
現実でもムーンライトタワーがある場所まで行くのに車や電車を使用する。徒歩で行くのなら、数時間は掛かるだろう。
仮想世界によっては瞬時に目的地まで移動可能となっている。
そのためには仮想世界にもスマホがあったり、目の前にステータスやコマンドが表示されたりする。
【ロストワールド】の場合はどうなのか。
俺の服装はそのまま反映され、ジャケットの中にスマホが入っていた。現代が舞台なら、スマホ操作になるわけだ。
とはいえ、その機能があるかは別の話であり、条件が必要な事もある。
スマホに今ある機能は時計と通話、ライトの三つ。チャットや買い物、移動のアプリにはロックが掛けられている。
移動に関しては一度立ち寄った場所である必要。
誰かと知り合ったり、何かをすればロックが解除されるのだろうか。
「時間は決められてないが……ゆっくりもしてられないか」
ここに長時間滞在するのは危険な気がする。
参加者の一人が消えた。見かけなくなったというのが正しいわけだが、【ロストワールド】参加後であるのは偶然なのか。
「アレは……あった。問題は動くかどうか」
N市、俺の探偵事務所が再現されている中、銃があるのであれば、移動手段があってもおかしくはないはず。
そして、俺の予想は正しかった。
サンダーボルト……カンザキで造られた黒の大型バイク。これも師匠が使用していたバイクであり、リボルバーと共に譲り受けた物の一つ。
「キーがない代わりにスマホを挿すのか。となれば……」
サンダーボルトを動かすための鍵の差し込み口が、スマホの嵌め込む形に変化している。
それだけじゃなく、スマホの画面を見るモニターも付属されていた。
現実と全く同じではない。実際にこんな物を付けていたら、師匠は許さないだろうが……
俺は自身のスマホを差し込んだ。
「認証確認を行います。ID番号……顔認証……探屋真実。サンダーボルトの使用を許可します」
「っ!!」
ただの機械音声。仮想世界だけじゃなく、現実でも聞く声だ。誰かの声に似ているわけでもない。
これがサンダーボルトだとして、名前を知ってるのは限られた人間だけだ。しかも、それを口にするのは……
少なくとも、【ロストワールド】の作成者……関係者の一人と師匠に繋がりがあるはず。
今回の依頼者がそうであるなら、俺を選ぶ理由もN市ではなく、師匠関連なのかもしれない。
俺はサンダーボルトを動かす。ナビがなくとも道順は分かるが、崩壊の影響で道が塞がれているかどうか。当然、道も整備されておらず、上手く運転する必要がある。
「夜空の月明かりのおかげで、道に瓦礫が落ちてるのを確認出来るだけましだな」
本当の暗闇なら、サンダーボルトを走られるわけにもいかなかった。荒廃した世界で、何も見えない状況でバイクを走らせるのは自殺行為だ。
月明かりや星の光、所々にある自販機や店の非常灯が僅かながらに道を照らして出す。
そして、N市の……【ロストワールド】の景色を俺に見せてくる。




