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ー6ー

「交通手段は……」


 現実でもムーンライトタワーがある場所まで行くのに車や電車を使用する。徒歩で行くのなら、数時間は掛かるだろう。


 仮想世界によっては瞬時に目的地まで移動可能となっている。


 そのためには仮想世界にもスマホがあったり、目の前にステータスやコマンドが表示されたりする。


【ロストワールド】の場合はどうなのか。


 俺の服装はそのまま反映され、ジャケットの中にスマホが入っていた。現代が舞台なら、スマホ操作になるわけだ。


 とはいえ、その機能があるかは別の話であり、条件が必要な事もある。


 スマホに今ある機能は時計と通話、ライトの三つ。チャットや買い物、移動のアプリにはロックが掛けられている。


 移動に関しては一度立ち寄った場所である必要。


 誰かと知り合ったり、何かをすればロックが解除されるのだろうか。


「時間は決められてないが……ゆっくりもしてられないか」


 ここに長時間滞在するのは危険な気がする。


 参加者の一人が消えた。見かけなくなったというのが正しいわけだが、【ロストワールド】参加後であるのは偶然なのか。


「アレは……あった。問題は動くかどうか」


 N市、俺の探偵事務所が再現されている中、銃があるのであれば、移動手段があってもおかしくはないはず。


 そして、俺の予想は正しかった。


 サンダーボルト……カンザキで造られた黒の大型バイク。これも師匠が使用していたバイクであり、リボルバーと共に譲り受けた物の一つ。


「キーがない代わりにスマホを挿すのか。となれば……」


 サンダーボルトを動かすための鍵の差し込み口が、スマホの嵌め込む形に変化している。


 それだけじゃなく、スマホの画面を見るモニターも付属されていた。


 現実と全く同じではない。実際にこんな物を付けていたら、師匠は許さないだろうが……


 俺は自身のスマホを差し込んだ。


「認証確認を行います。ID番号……顔認証……探屋真実。サンダーボルトの使用を許可します」


「っ!!」


 ただの機械音声。仮想世界だけじゃなく、現実でも聞く声だ。誰かの声に似ているわけでもない。


 これがサンダーボルトだとして、名前を知ってるのは限られた人間だけだ。しかも、それを口にするのは……


 少なくとも、【ロストワールド】の作成者……関係者の一人と師匠に繋がりがあるはず。


 今回の依頼者がそうであるなら、俺を選ぶ理由もN市ではなく、師匠関連なのかもしれない。


 俺はサンダーボルトを動かす。ナビがなくとも道順は分かるが、崩壊の影響で道が塞がれているかどうか。当然、道も整備されておらず、上手く運転する必要がある。


「夜空の月明かりのおかげで、道に瓦礫が落ちてるのを確認出来るだけましだな」


 本当の暗闇なら、サンダーボルトを走られるわけにもいかなかった。荒廃した世界で、何も見えない状況でバイクを走らせるのは自殺行為だ。


 月明かりや星の光、所々にある自販機や店の非常灯が僅かながらに道を照らして出す。


 そして、N市の……【ロストワールド】の景色を俺に見せてくる。

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