巳神真理亜 ー1−
◇
「黒服達もいなくなっているが……彼女がそうなんだろうな」
巳神史郎が地下BARを出てから、少し時間を置いてから、ロビーへと上がった。その間にコーヒーを飲んで、時間を潰したわけだが……
黒服二人の姿が消えている。巳神史郎のボディガードであるなら、一緒にこのホテルから離れたわけだ。
その代わりにロビーで待っていたのは、黒服に話し掛けていたメイド服の彼女。
彼女が巳神史郎の言っていた満里奈だろう。
「探屋真実様ですね。私、巳神真理亜様に仕えているメイドの満里奈と言います。史郎様から貴方に諸々の説明及び、協力するようにと言われてます」
彼女は巳神史郎ではなく、真理亜の方に仕えている。黒服が違うと言ったのは、コレも含まれているわけだ。
協力と口にしているが、監視も含まれているんだろう。俺に向ける視線に敵意が感じられるのは気の所為か。
「……様は付けなくていい。説明はロビーのソファで話す……わけじゃなさそうだな」
満里奈は俺を置いて、ホテルから出ていこうとしている。
「付いて来てください。探屋を真理亜に会わせるように言われてます。家に着く間に説明をしますから」
俺の言った通り、様付けではなくなったが、素っ気ない態度は変わらない。真理亜にも様付けでなくなったのは……
「分かった。……車で行くのか?」
「そういえば、こちらを見てたよね。……気持ち悪い」
俺が見ていたのを彼女は気付いていたようだ。視線の理由を勘違いしている風ではあるんだが……言い訳した方が悪い方向に行きそうだ。
「護衛役として紹介しますが、真理亜を変な目で見るのだけは止めてください。……別に必要ないのに」
「護衛役? ……何の話だ?」
巳神真理亜は誰かに狙われている? 巳神史郎の娘だから、誘拐される事もありえるのか。
それらの説明が一切されていない。黒服との関係性を考えると、満里奈自身にも本来の内容が伝わってない可能性も……
巳神真理亜とメイドの満里奈と行動する事になるのなら、ある程度の食い違いは無くしておくべきだ。
「彼女が誰かに狙われているという話は聞いてないぞ。それも説明してくれるのか?」
小鳥遊の事件、怪事件と無関係な事で狙われているのなら、学校内で彼女を放置するのは難しくなる。
このメイドと巳神真理亜の年齢が近そうでも、学校内に侵入するのは無理だろう。
「はぁ……貴方が真理亜の側にいるのに理由が必要ですよね。護衛役というのが納得させやすいだけです」
確かに側にいる理由が必要になる。誰も自身の変化を調べるためとなれば、許可するわけがない。




