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「叶が言ってました。私のような者、世界は他にも存在し、そこで何かをした時、体に異変が起きるそうです。そして、別の世界で怪事件を生み出すと。条件は世界によって違い、叶も把握してませんでした。私自身、それに関しては興味がないので」
VR装置、仮想世界と不適合による身体の影響。VR初期時代に起きた事であり、今は安全装置が付けられている。事故の可能性は減っているらしいが……そういう事じゃないのだろう。
体の異変は身体付随等ではなく、それによって怪事件を起こしていると、師匠が彼女に教えている。
それも別世界。【ロストワールド】で起きるのではなく、現実という事だ。それとも別の仮想世界に影響を与えるのか。
メイデンは事件に興味がないだけでなく、自身の世界がどのように異変を起こさせるかも知らないようだ。
つまり……俺自身の体に変化が起きる可能性も。
「私が招待したのだから、探屋の体に影響はありませんよ」
主が認めた者は影響を受けないらしい。それも師匠の受け売りか。
「話が逸れましたね」
「いや……話を聞くはずが、質問を続けた俺が悪い。本題に入ってくれ」
メイデンの世界で何かを盗まれたわけじゃない。いや……盗まれたところで、彼女は気にしていないと言っている。
何も奪われていないのなら、何を奪還するのか。
「分かりました。探屋は血というのは比喩かと尋ねましたが、そのままの意味です。含まれている……が正しいでしょうか」
「含まれている? ……それは誰の血なんだ?」
嫌な予感がした。メイデンは血を吸わず、吸われていない。
この世界から盗まれた物に彼女の血が付着していたとしても気にする事はないだろう。
つまり、彼女は自身の血には興味がない。なら、何の血に執着しているのか。
「叶の血です。叶は危険な事件を追っているらしく、その途中で私の世界を訪れました。その時、彼女は致命傷を受けていて、私が彼女に血を飲ませて、回復させました。彼女の体には私の血が混じっています」
「致命傷!? 師匠にそんな傷を受けてた事なんて……今はそこじゃない」
それは仮想世界での話であって、現実に影響を与えていなかった。
だとしても、メイデンからすれば、治療する必要があると判断したわけだ。
師匠が致命傷を受けている時に血の臭いを覚え、更には自身の血も混じった事で、特定出来たのだろう。
とはいえ、その話は師匠が俺の前から消えた前後で変わるかもしれない。
消えた理由が体の異変という可能性も出てくる。
勿論、それでメイデンを責めるつもりもない。
今の問題は、彼女が師匠の血を奪還しようとしている事だ。
「……師匠の血がどうした? まさか……」
仮想世界で師匠は殺された。それが現実に影響を与え、本当に……
「叶がそんな軟ではない事は、探屋も知っているはずです」
師匠はやすやすと殺されない。彼女はそう考えているようだ。当然、俺もそう思っている。




