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「YESでもあり、NOでもあります。ここは私の心象世界……叶は異世界と呼んでいました。貴方が……探屋が考えているのはNPCや管理者。どちらも違います」
「仮想世界ではなく、異世界……」
彼女はNPCや管理者という言葉を知っており、それを否定した。
師匠がその言葉を彼女に教えたのか。
自身がNPCである事は認識出来るのか。NPCはAIであり、成長しただけという事も。
N市をモチーフにした世界である事が、師匠の言う異世界だと思えなくしている。
「探屋の世界に似ているのは叶の影響が出ているのでしょう」
メイデンは俺の心を読んだように、疑問に答えた。
「吸血姫と言いましたが、探屋の血を求める事はありません。叶の血を吸った事もないですから、安心してください」
伝承、物語では吸血鬼という存在に血を吸われると眷属になり、同じ吸血鬼となる。なれない場合は死んでしまう。
ここが異世界とするなら、現実に戻った時にも影響が出てくるのか。
VR初期時、戦闘による痛みが反映する中、体に影響する例もあった。肉体的にというより、精神的な物だったらしい。
「証明するのに」
メイデンの体から無数の蝙蝠が出現していく。
蝙蝠を操るのも吸血鬼らしい設定だ。
「こういう事が出来ます。不死でもあるので、探屋の銃で私を撃っても構いませんが」
蝙蝠に目が向いている間に、メイデンの姿が消え、俺の背後に移動していた。
その手にはジャケットに入れていたはずのリボルバーが。彼女はそれをすぐに俺へ返却する。
その後、元の位置に無防備に徒歩で戻っていく。
その背に銃弾を撃ち込むかどうかを試しているのか。NPCが死んだ場合、蘇るかはVR次第。大半は死んだままだ。
不死という彼女の言葉を信じるにしても、博打過ぎる。
「叶なら迷わずに撃ってきましたが……私が依頼者という事もありましたね」
メイデンは元の場所に着き、俺の方へと振り返る。
師匠なら躊躇う事なく、彼女の背中に銃弾を撃ち込んでいた。判断が早く、不死である事を確かめていたと思う。
俺の知る師匠と、メイデンが言う叶という人物は同一である可能性が極めて高い。
「他に聞きたい事はありますか?」
「先に色々と話してくれたので……依頼内容について」
「……そうですか。久し振りに人と話したので、お喋りが過ぎたようです。依頼の話に移りましょうか」
久し振りに人と話したというのなら、師匠とは会っていない。
【ロストワールド】に参加した五人にも遭遇していないという事。
本当に【ロストワールド】が彼女の世界であるなら、参加者というよりも侵入者になる。
でなければ、今みたいに参加者達の前に姿を見せるはずだ。




