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ー9ー

「四階は……宝物庫か? それにしても」


 ムーンライトタワー四階。洋式の城であるのは二階と同じだ。


 ただし、崩壊したというよりも荒らされているというのが正しいだろうか。


 宝箱は開けられ、そこに絵画が飾られていた形跡がある。だが、この世界での価値があるかどうか。


 現実で金に変換出来るのは通貨のみ。それも条件が必要となる。


 宝自体、その世界で一度売らなければ意味がない。荒廃した【ロストワールド】でそれが可能かどうか。


「宝箱というよりも棺に近いな」


 宝箱は人が入る棺程の大きさがある。


 中身は空。死体や骨があるわけでもない。


 あったとしても、それは本物でなく、用意された物だろうが……


 この宝箱の中に依頼者の言う【血】があったのか。


 確認したのは宝箱の一つ。全てを見る必要はないと判断。


 四階に中央にあるエスカレーターは壊れておらず、そこから五階へ。


 五階がムーンライトタワーの最上階だろう。外側から見た限り、五階までが形を残している。


 現実世界でも五階までは完成していたはずだ。


「貴方が来るのを待ってたわ。私の名前はメイデン=ヴァンダイク。吸血姫よ」


 腰にまで届く程にある銀の長髪。肌白く、金色の瞳。潔白のような青と白のドレスを身に纏っている。


 その背後には紅い月。そのせいが、彼女が高潔、儚い存在に見える。それだけでなく、俺に恐怖と威圧も与えてくる。


「……どうかしましたか?」


「いや……探屋真実だ。先に色々と尋ねたい事があるんだが……いいだろうか?」


【血の奪還】という依頼を受ける前に、彼女の事を知る必要がある。


 俺が一瞬黙ってしまったのも、メイデンの姿が師匠と似ていたからだ。


 髪や瞳の色、声、違うところは幾つもあるが……そう思わせる雰囲気があった。


 だからといって、師匠本人ではない。


【ロストワールド】では自身の姿が模倣され、別の姿にはなれない。


 師匠だけが例外になる事はないだろう。当然、参加者五人のそのままの姿を見ているはず。


「問題ありません。勿論、全てを語るわけにはいきませんが」


 彼女が俺を品定めするかのように、笑みを向けてきた。


「それで構わない。まずは……貴女はこの世界の住人で間違いないか?」


「なるほど……面白い一手ですね。真理を突いています」


 住人=NPC。彼女の言葉、姿からして十分ありえる。


 彼女が依頼者であるのは間違いない。だとすれば、自身を管理者ではなく、【吸血姫】と名乗るのはおかしい。


【吸血姫】と名乗るに相応しい姿ではあるが、現実の姿が反映されているとは思えない。


 管理者だけが別の姿になり得たとしても、【吸血姫】と名乗る必要もない。


【血の奪還】という依頼。蝙蝠を伝言に使った事で、吸血鬼という悪魔をモチーフにして、作られた存在……という可能性が出てくる。

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