3覇者、帰路へ(1)
久しぶりになってしまいました。
忙しかったり気分だったり、一番は設定に詰まってたからですね。
なんとも物理的な解決をしましたが、偶然構想していた話とリンクする設定になったので満足です。
真っ暗な空間、そこに石でできた椅子が円卓に並べられている。椅子と円卓は光りに照らされ、一人の長い白髭を貯えた仙人のような人が座っていた。
「はぁー、トラブルが続くのぉ。わしこれでも忙しいんじゃがのぉ。みんな会議にもこんじゃない。丸投げはやめてくれないかのぉ。」
仙人が愚痴をこぼしていると、円卓の中央の空間に線が入り、パカッと開いた。
開いた所から仙人の望んだものが現れる。
「おぉ!帰ってきたか。カプリが帰ってきたなら大したことはないな!これでわしもゆっくり……?」
円卓の空間から現れたロボット、カプリの帰還に喜ぶ仙人だったが、カプリの様子を見て首を傾げる。
「……カプリ?どうした?おーい。」
ジジッと静かに鳴いているが、横たわり打ち捨てられたように動かないカプリの顔の前に手を振る仙人。
すると突然、ビビビッと叫び動き出すカプリに、仙人はめちゃくちゃびびった。
「なんじゃ!驚かすな!そんなエンタメはいらんぞ!」
叫ぶ仙人にカプリは話し始める。
「……この世界の神々よ、久しぶりだな。覇者が戻った、話はそれだけだ。くれぐれも邪魔をしてくれるなよ。今回は目をつむるが、次はないぞ。」
カプリはハジャーの声で話すと、音を立ててバラバラに砕け散った。
「は、覇者ぁ!なんであいつが!もぅ、いつもわしだけじゃん!みんなのんびり温泉行ってさ!てかカプリ作るの大変なんだぞ!壊すなよ!ああ!」
一通り喚き散らしたあと、仙人は冷静に語る。
「はぁ……はぁ……。つまり、今回わしが担当する件と時空の干渉は、別の者の仕業で、覇者はわしと同じ者を追っている。そして"奴ら"の邪魔をせぬようにしなければならない、のか。」
「……面倒くさいな!もう!分かったよ、しばらくは静観しておくが、他の神のことは知らないからな!ふん!」
再び軽く喚いた仙人は席を立ち、その場を去った。
◇
ハジャーは扉をくぐり、少し進むとロッカールームにたどり着いた。
慣れた手つきで自分のロッカーから服を出し着替える。古びた防具から、ワイシャツとフォーマルなパンツ姿に早変わりしたハジャーは、さらに奥の扉を開きオフィスへ入る。
「おかえりなさーい。」
オフィスにいた青髪の青年がハジャーに声をかける。
「ハジャー君、よくもやってくれたわね。」
白髮の女性が鋭い目つきでハジャーに詰め寄る。
「シアンただいま。先輩、落ち着いてください。け、計画どおりです。それに分かったこともありますから。」
焦って取り繕うハジャーに、女性は更に詰め寄る。
「報告書を読んだわ。人を殺めて、時空を止めて、神様の使いを壊して、何が計画通りなの?ねぇ?」
「えぇと、そのぉ〜……」
「ユイ先輩、責めても話は進みませんよ。それに分かったことがなにか聞きましょうよ。」
たじろぐハジャーを見かねて、青髪の青年、シアンが助け舟を出す。
「……そうね。お説教はあとでたーっぷりします。それで、何が分かったの?」
シアンの話で一時的に折れることにした白髪の女性、ユイは自席に戻ってハジャーに聞く。
「んん、今回我々、調律者が追っているのは、第七宇宙を自然消滅に見せかけて消し去り、逃亡した犯人です。今後これ以上の被害を防ぎ、対象を捕縛しその後、処遇を決める。ですよね?」
「ええ、そうです。それで?」
「まず、私が人を殺めたり、時空を止めることは次元介入でイレギュラーなことです。これで新たな時間軸を生成させたのですが、反応したのは神々だけだった。」
「そうね、あの警備用の人形だけだったわ。」
「そこです!」
「えっ?」
突然食い気味に話すハジャーに、若干驚くユイ。
「あれは警備用の人形ではなく、神器を授けた代替の神、つまり仮神です。」
「えぇ!あんなのが?」
「そうです。そして先輩ならよく知っているはずです。仮神はそう簡単に造れるものじゃない。」
「つまり、あなたの前に現れたということは……」
「そう、我々より以前に、時空を歪める存在を知って仮神を遣いに出した。そしてそれは、確実にチキューに存在している犯人のため。しかしなんの足取りも掴めてはいない。掴めていれば、僕の前には仮神ではなく、神自らがおもむくはずですから。」
自信ありげにハジャーは胸を張った。
「そこにあなたが来て、仮神と邂逅した。神々も我々も、犯人がチキューにいる事は分かってるけど、そこからどこに潜り込んだのか、まだ見つけられていない。」
「そうです。なので引き続き、チキューの者としてあの世界の中で探す必要があります。」
「……分かったわ。それじゃあ、止めている時空を解除して、引き続き調査を頼んだわ。」
ハジャーの推理が終わり、ユイはハジャーの肩に手を置き告げた。
「あれ?じゃあなんで先輩は戻ってきたんですか?」
二人の話を黙って聞いていたシアンが口を開く。
「……あの〜、それなんですが、少し時を戻す許可と時間軸の削除をお願いしたくてぇ。」
ハジャーは急にナヨナヨしながら答えた。
「それはどうして?」
少し懐疑的にユイが問う。
「あの、やっぱり人を殺めるのは良くないし、前評判的にぃ?あと、派手に、そのぉ目立ってしまったので、調査に影響がありそうで……」
ハジャーの歯切れの悪い回答に、ユイが再び詰め寄る。
「もしかしてあなた、人を殺めたのも、時間を止めたのも、仮神を破壊したのも、全部計算じゃなくて行き当たりばったりだった、とかじゃないでしょうね?」
キリキリとユイがハジャーを睨みつける。
「えっと……それはですねぇ……」
「ハジャーくん、会議室に来なさい。シアンくん、悪いけどハジャーくんの"尻拭い"、頼んでもいいかしら?」
「りょーかいです!頑張ります!先輩、恨まないでくださいね。気になって言っちゃっただけなので!ガンバです!」
ほんの少しハジャーへの謝罪をしてから、シアンは軽い調子でロッカールームへ向かった。
「それじゃあハジャーくん、行きましょう。」
「……はい。」
恐ろしいほど冷たく笑うユイに、何も言えずに従うハジャーだった。
仙人は香取慎吾さん主演のドラマ、西遊記に出てくる仙人のジジイをイメージしています。
ユイとシアンはとくに元ネタはありません。
名前には意味があるのでいずれ書けたらと思います。
調律者は神々の介入や大規模な次元の改変により、世界や宇宙の異常な偏りを正し、そこに暮らす者たちによってのみ進む世界線を見守る集団です。




