2覇者、王国へ(5)
ちょこちょこ物語を書いていたのですが、全部スピンオフで、ストーリーが進んでいないため更新が遅くなりました。
ストーリーも変えながら書いているので、難しいことだらけです。悲しいね。
「君は、ルルを本当に倒したのか?」
剣を向けられたハジャーが口を開く。
「見たじゃろう、わしの剣がルルとやらを貫くところを。現実逃避もよいがそろそろ投降しなければお主も同じように……」
その時、ハジャーから異常な魔力の流れを感じたアイリーンはとっさに剣を構え飛びかかる。
その刹那、ハジャーの横の地面からから魔法陣が浮かび黒いモヤとともに、何かが姿を表そうとしている。
アイリーンは標的をその魔法陣から出る何かに変え、剣を突く。
キン!と高い音をたて剣は何かに弾かれる。
アイリーンが距離を取ると、やがて、魔法陣から現れた影が正確に姿を見せる。
「なっ何じゃそいつは……」
魔法陣から出てアイリーンの剣を弾いたのは、アイリーンだった。
「おー上手く弾けたようじゃな。わしはアイリーン!
あっお主もアイリーンか、よろしくな!ってわしがおる!なんでじゃ!?一体どういうこ……」
「今さら、木偶人形ごときに何ができるのよ!!」
アイリーンは嫌悪を顔いっぱいに広げたまま、魔法陣から出てきたアイリーンが戸惑う中、飛びかかり剣を突き刺す。
「……えぇ?」
あっさりと貫かれたアイリーンは一瞬の戸惑いの後、口から血を吹き出して地に伏せる。
まさにソードマスターの名に恥じぬ綺麗な一撃は、アイリーンの胸に細い風穴を開けたのだった。
ハジャーには何が起きたか、理解するまでに数秒かかった。
地に伏すアイリーン、どうやらルルは初めからこれが目的だったようだ。
誰しも自分が目の前に現れて、それを本物の自分だとは思わない。本物の自分はそれを見ている自分なのだから。
しかし、同じ世界に自分が2人いたらどうなるだろう。
全く同じ経験と人生を歩んだもう1人の自分。
そんな者は存在しない。
なのでこの世界では2人の本人を同一とみなし、即座に存在を合成し1人にしようとする。
ルルはそこに目をつけた。
ルルの本当の名は、超次元魔獣パドラシア。
時空を超える能力を持ち、さまよいながら好きな生物を食い、その生物になりきり一生を過ごす。その生物として死んだ後は、再び時空をさまよい次の生物を食う、それを繰り返す。
死にもせず、何ものにも縛られず、欺き、満足するまで他人のフリをして暴れまわる。
死人魔獣とも呼ばれ、始祖の時代から恐れられた魔獣である。
そんなルルはブルーデーモンとして死んだ後、他時空のアイリーンを食い、二人目のアイリーンとしてハジャーの前に現れた。
土の自然魔法である木偶人形をハジャーが出したと思ったアイリーンは、ルルを剣で刺したが、世界が2人のアイリーンを同一とみなし合成した結果、自らを剣で刺したことになったアイリーンは、今ここで死んでいる。
体力測定の休憩で話しかけてきた声はルルだった。ハジャーの数少ない友人であり使い魔的な存在でもある。
突然血を流し倒れたアイリーンの姿に、周りの兵士たちは何が起きたのか理解できず、呆然と立ち尽くしている。
「……ルル?おーい、これじゃあただの魔獣使いの殺人犯だよ?え……まさか……。」
ハジャーの呼びかけにルルは答えない。
いくらパドラシアでも、死んですぐには動けない。現世から解離した黄泉の国を抜け出し、元の場所に戻るのにはそれなりに時間がかかる。
ブルーデーモンとして死んだ後、すぐにアイリーンになれたのは、魔族は死後魂が現世の下にある魔界へ送られるため、つながりを辿りやすいからで、アイリーンとして死んだ今は遠い黄泉の国にいる。
ルルが消えた今、そこにいるのはソードマスターを殺した異形の魔獣使い。
おそらく最も最悪な展開で体力測定を終えてしまったルルのシナリオは、ここに幕を閉じた。
ルルこと、超次元魔獣パドラシアの元ネタは夏目友人帳に出てくるホノカゲという妖怪です。
自分の意志で人に成り代わり、暴れまわれるという便利な設定を付け足しました。
ルルの名前はAdoさんの曲から付けました。
ルールを無視するのでルールから伸ばし棒を取ってルルにしました。
パドラシアは英語のパラドックスの並び替えとシアを組み合わせた名前です。




