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2 覇者、王国へ(4)

利き腕がかなり治ってきて絵もかけるようになったのですが、アイデアが枯渇して描くものが浮かびません。

人物とか描けたらいいんですけど、そもそも画力がありません。悲しいね。


魔人ブルーデーモン。

背中にコウモリの羽根と、魔族の証である短い角が対を成して側頭部に生えていて、やせたヤギのような体にうっすら毛の生えた赤黒い肌、魚のような目に沈む、ブルーの名を表す淀んだ青い瞳が特徴の魔族。


ハジャーは王国の城内で魔王の下僕である魔人を召喚した。

その中でもブルーデーモンは警備用の魔人で、並みの剣士や魔道士では手も足も出ない。


「よもや魔族の片割れだったとは、残念じゃが見逃す訳にはいかん、来い!ミティア!」


アイリーンの掛け声とともに右手から光が現れ縦長に伸びる。光の消滅と同時にアイリーンの手には剣が顕現した。


細く緩やかに湾曲する刀身はレイピアとサーベルを合わせたような不思議な形で、円形の小さい鍔と護拳や柄はサーベルを代表するような形をしている。全体は風景を綺麗に反射する銀色で、護拳に埋め込まれた宝石だけが青く輝いている。


魔族の片割れという言葉が腑に落ちず、ハジャーはなんとなく違和感を持った。


「待ってくれ、俺はここを攻めに来たわけじゃない。あの石に魔法を当てるにはコイツに攻撃してもらう他ないんだ。召喚術師なら当然だろ?危害は加えないから見ててくれないか?」


強い魔術は召喚魔術だけ、というアピールは確かに魔力の適性に偏りがあり、扱いづらい魔術師の証にはなるが、ハジャーはブルーデーモンが、この時代の死神のモチーフに使われるほど恐ろしく、嫌われているということを知らなかった。


「それは無理な話じゃ。魔族を扱う時点で、貴様は王国の敵じゃ。今すぐ魔術を解いて降伏するなら手荒なマネはせん。」


もしかするとまずい状況かもしれない、とハジャーは思ったが、友が任せてくれと言ったなら信じて進もうと決め、少し強引になる。


「交渉決裂か、ならばそこで大人しく見ていてくれ。拘束(バインド)。」


ハジャーがアイリーンたちの方に手をかざすと、アイリーンを含め集まった兵士たちが、虚空から突如現れた黒い鎖に体を縛られる。

凄まじい速さで体に巻き付いた鎖の衝撃で兵士たちはひっくり返る。

アイリーンは踏ん張り鎖を弾こうと剣を手で振るうが、鎖はびくともしない。


「ハジャー!こんなことをして何が目的じゃ!今すぐ拘束を解け!」


「まぁ見ていてくれ。ルル、あの石に魔法をぶつけるんだ。」


ルルと呼ばれたブルーデーモンは胸の前に手を出すと魔法陣が形成される。

やがて黒いモヤが集まると石に向かって暗黒の波動が放たれる。


波動は石にどんどん吸い込まれていくが、だんだん石の色も黒ずんでいく。

石はギシギシと音をたてて吸収していくが、ついにバキッと亀裂が入る。


亀裂から光る液体が垂れると台座が溶けて石が崩れ落ちる。地面に落ちた石は粉々に砕け、液体もろとも塵のように空中に消えた。


「な、なんという魔力じゃ。かなりのブルーデーモンを呼び寄せたようじゃな。だがこの剣に切れぬものはない!ふにゅう!!」


アイリーンは剣をテコの原理で鎖に押し付け、鎖を引き千切ると瞬時にハジャーに飛びかかる。


ハジャーめがけて突き立てた一撃は、先程の試合とは比にならないほど速く、美しく真っ直ぐな線を描いたが、ルルがそれより早くハジャーの前に入ると、片手で剣先を掴んで受け止める。


「なぜじゃ!この剣は邪悪を切るための剣、魔族ごときが止められるワケがない!」


驚愕と憤怒がむき出しの口調でアイリーンが怒鳴る。

数秒、アイリーンの剣とルルの片手が拮抗した後、アイリーンはバク宙で翻りハジャーたちと距離を取る。


「ルルがただの魔族だとみているのか?ソードマスターとは名ばかりなのだな。」


ため息をつきながらハジャーが煽る。さっきのお返しだ。


「ミティア!聖剣じゃ!」


アイリーンが叫ぶと剣を真上に回しながら投げる。

剣は回転しながら光を放ち落ちていく。

アイリーンが光を掴むと剣はさっきまでとは別の形に変容していた。


「聖剣?少し違うようだが近い存在ではあるのか。不思議な剣だな。」


純白の刀身に青い宝石と銀の両刃が輝くシンメトリーなその剣は、さっきとはまるっきり形の違うものになっていた。

尖った鍔や筒状の柄は西洋の剣の特徴に似ている。


萬剣(ばんけん、ミティアはあらゆる剣を模倣する。魔剣でも聖剣でもその特性を使えるのじゃ。」


「たかがコピー、されどコピー、か。いいだろう、かかって……」


ハジャーが言い切る前にアイリーンは飛びかかる。

剣先が白く輝くと剣を光が包み後方に翼が生える。

先ほどと同じようにルルが剣を受け止めるが、今度は両手を交差させ、前に現れた黒い半透明の板のようなシールドで一撃を防いでいる。


衝突地点から黒いオーラを放つシールドは、少しずつヒビが広がり、やがて砕け散るとアイリーンの剣がルルの体の真ん中を貫いた。


アイリーンは剣を引き抜き、再び二人から後方へ距離を取るとルルは黒い塵になり、サラサラと風に流され消えていった。


「終わりじゃ、ハジャー。投降するならここでは命はとらん。大人しく手をあげるのじゃ。」


ハジャーに剣先を向け、アイリーンはどこか寂しげに告げた。


ハジャーは人並みに根に持つタイプです。

だいたいのことは流せますが、力を誇示しない分、人間と同じ舞台に立つのでストレスもあります。


召喚魔術は、時空を操り召喚獣を召喚するので魔術としては強力ですが、それのみしか使えない魔術師は、ただ扉を出してそこから召喚獣を出すだけになるので、その行為を一度に10体分できるとかではない限り、扱いづらい魔術師になります。

召喚した魔獣が鬼強かったらどうなのかと言うと、まず基本的に召喚した魔獣は、正確にはそこに顕現したわけではありません。

使役している魔獣を、魔獣の魔力で作り出した複製体が召喚されるため、本物と寸分の狂いもないのですが、仮に倒されても魔獣の魔力が大きく削られるのみで魔獣は死にません。

そして召喚した魔獣は一般的に1つの技を使える契約を使役者とするので、例えば一回火を出したり、ビームを撃ったりすると魔獣本体へ魔力として帰っていきます。

よってどんなに強い魔獣でも、肉弾戦以外の特殊な技や魔法は、うかつに撃たせられないし、あまりにお粗末な使い方をしていると魔獣に見限られるので、やっぱり扱いづらい魔術師となってしまいます。


もちろん、これは一般的な召喚魔術師の話で、この範囲を超えた者もいます。


萬剣、ミティアはソードマスターに授けられた7つの剣の1つです。

あらゆる剣を模倣する、というのは実在する剣に近い存在へ変身するということで、実在しない剣にはなれません。

つまり、この剣は持ち主の知識によってその性能が左右されます。さらに、どこかの次元に存在すればその剣も模倣できるので、持ち主の想像力によっても左右される特徴を持ちます。

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