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2 覇者、王国へ(3)

主人公が出てこないエピソードを閑話と書くか、スピンオフと書くか迷っています。

ただ、この閑話を書いたことで、物語に加筆と修正がかなり生まれてしまいました。悲しいね。


ハジャーによって中庭にできた人一人分ほどの地面のえぐれを兵士たちが埋めたあと、他の参加者の剣技の試合が行われた。


ヘルムを取った兵士、ソードマスターのアイリーンはつまらなそうに木刀を無駄に綺麗に回して遊んでいる。


本物の兵士達との試合は、それは素晴らしい、木を弾く音と元気な発声が響く普通の試合。煽りもアホみたいな乱撃もない普通の試合。


地べたに座るハジャーは、それを塀の影から眺めながら、深くため息をついた。


試合を遠く眺めて、膝に載せた腕で頬杖をついていると、突然耳元で声が聞こえた。


「ハジャー、私に任せてくれないか?最も最適なシナリオにしてみせよう。」


よもすれば悪魔のささやきだが、聞き馴染みのある声にハジャーは、分かった、と小さく答えた。


全員の試合が終わると、5分ほど休憩を挟んでから魔力測定が始まった。

兵士が二人一組で重そうな球体の石を別の兵士が持ってきた木の台座に置いた。


「今から魔力測定を行う。方法はあの魔力吸収石に魔法、魔術を当てること。魔力の性質と威力をあの石が計測するが、石は強い魔力ほど強く吸収するため存分に力をふるって構わない。」


「それではレウ君、君から見せてもらおう。」


最初に呼ばれると思っていたハジャーはここで少し驚く。

だが、なんとなく理解もできた。

さっきの教訓で、兵士は後片付けをまとめてやりたいから、一番場が荒れそうな自分を後にしたいのだろう。


炎、風、水、基本的な自然魔法や衝撃波や斬撃の簡易魔術を参加者がそれぞれ放った後、ハジャーの番になった。


「思いっきりいくのじゃぞ!手を抜いたら許さんからな!」


もはや兵士の装備を一つも身に着けていないアイリーンの激が飛ぶ。


使う魔術は決まっている。

ハジャーは石の5メートルくらいに立つとフッと短く息を吐いて短く吸うと口を開く。


「光を閉ざす翼、腐を撒く体、夜を跋扈する哀れな穢れよ、我に従い、彼の者に緞帳を降ろせ。」


今どき呪文を唱えるのは古臭いだろうか。だが演出にはもってこいだろう。


ハジャーは召喚魔術を使った。呪文を詠唱するのはこの時代ではあまり行われないが、召喚魔術ではより強い召喚獣を呼び出せるジンクスのようなものがあり、唱える人も少なくない。


そしてこの魔術のミソは、呪文の詠唱ではなく、ハジャーが呼び出した召喚獣である。


「……!お主、ここがどこか分かっておるのか!王国の城内で呼び出すことがどんな意味を持つか、知らぬとは言わせんぞ!」


他の兵士と参加者が傍観している中、アイリーンが真っ先に声を上げる。


「わ、分かっているが、俺はこの魔術くらいしか使えない。それに出し惜しみは許さないんだろ?」


なんとなく思っていた反応と違う気がするが、余裕を見せつけるように、ハジャーは静かに笑いながら答えた。


「お前ら!何をボケっとしておる!緊急事態じゃ!衛兵をもっと呼んで戦え!」


アイリーンの掛け声に慌てて隊を組む兵士達、他の参加者の前に立ち召喚獣を迎える。


地面に現れた半径3メートルほどの魔法陣から影が浮かぶ。

影が形を作り現れたのは、歪な翼の生えた異形。魔人、ブルーデーモンだった。


ハジャーは2000年前のチキュー出身なので、召喚魔術師をするときは、ジンクスの関係なしで必ず詠唱します。


その他の魔法、魔術もかつては詠唱ありきでしたが、詠唱による発動までのタイムロスと、敵に何を発動するかバレること、そもそも詠唱ではなく、魔力の操作によって魔法、魔術はその存在が決まるので、現代では無詠唱が主流になりました。


ハジャーの自動防御(オートガード)などの無詠唱は独学です。

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