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2 覇者、王国へ(1)

少し利き手の負傷も良くなったので、お絵かきしながら物語を進めています。

見た目の説明ってどこまで書けばいいのか難しいですね。

あと覇者の物語を進めないと定まらない設定がたくさんあるのに、サイドストーリー的な構想に流されてる今日このごろです。悲しいね。


「彼はうまくやれるでしょうか?」


市役所のような内装のオフィスで、背中に小さな羽根の生えた白髪ロングストレートの女性が呟く。


「生まれ故郷でしたっけ?じゃあ適任なんじゃないですか?少なくとも僕らよりは知識があるんだから。」


深い青色の丸みを帯びたショートヘアーの青年が答える。


「しかし、彼が生きていたのは2000年も前の時代なのですよ?今とは何もかもが違います。」


「じゃあ、誰を送ったって変わらないのでは?それに、先輩が任せたのは1人じゃ何もできない、頼りない後輩なんですか?」


オフィスチェアをゆらゆらさせながら、

わざと引っかけるように青年がかまをかける。


「そ、それは、違います!彼は誰よりも!……」


「はいはい、要するに心配ってことですよね。最初から答えがでてるなら今は信じて仕事しましょ。」


「う、うぅ……」


上手く手玉に取られグゥの音も出ない先輩は、その後も心配事をつぶやき続けた。


淡い光の差し込むデスクで、二人はパソコンと書類に向かい合いながら大男の話をしばらく続けた。


城で行われる体力測定までの数日間、ギルドや城下町を中心に、ハジャーはこの世界と国のことを調べて回った。


分かったことは、

チキューにある国と地域について。

魔法、魔術の基本的な性質。

王国には、剣に選ばれた七人のソードマスターと呼ばれる守護者がいる事。

そのうちの1人、魔剣使いが魔王になり、大きな森を拠点にし人間と戦っている事。

ソードマスターは帝国に存在する、四魔典聖(カトロシエル)という四人の魔道士からなる守護者に対抗して作られたこと。


これくらいだった。

帝国や他の国については、実際に足を運んで調べなくてはならないが、この世界の基本と王国についてはかなり調べがついたので、ハジャーは満足していた。


ルクから王国まで、あまり目立ちたくはなかったので頭を覆うスカーフを買ってから、ハジャーは王国へ向かった。


王国についてから城下町を抜け、城の門番に昨日ギルドから貰った体力測定申込状を見せ、城内へ入っていった。

タニアン城は白を基調とし、赤の屋根が城にしてはポップな外見であったが、内部は暗めの白にダークウッドの建材がシックな味を出していた。


衛兵に案内され中庭に着く。

中庭は、テニスコート4面くらいはありそうな広さで、白く人二人分ほどの高い塀に腰の高さの低木が並び、地面は黄土色で硬い砂の混じった土が張られている。


体力測定を受ける10人程度の参加者と、富を誇るように鈍く輝く、金属でできた鎧を纏った兵士が5人既にいて、あとから参加者が2,3人来てまもなく測定が始まった。

(中庭に来るまで兵士も参加者もハジャーの姿に驚いたが、流石にここ数日、町を歩いて慣れたので触れないでおく。)


脚力や腕力、瞬発力や判断力、を走ったり布の球を投げるなどの単純な動作で記録を取ったあと、木刀を使った試合が始まる。


ギルドの剣士から聞いた話では、木刀での試合と魔力測定用の道具に放つ魔法の能力を、王国は重視しているらしい。

というのも、ここで優秀な記録を出すと王国騎士団訓練生へ招待される、らしいのだ。

正直、高い地位に立つことで、できることが広がるのは良いのかもしれない。だが、最初の数年間不自由になると、急いでここまで来た意味がない。


ある程度の実力を見せながらも平凡でいる、なんともアンビバレント。難しいがやるしかない。


参加者に木刀が行き渡ると、始めにハジャーが呼ばれた。

ここに来てから、なにかにつけて自分が最初に呼ばれている。多分目立っているから、ただそれだけだと思う、なんとも人間らしい。


中庭の塀の影から抜け出すと、並んでいた兵士も1人前に出る。


「今からこの兵士と模擬戦を行ってもらう。魔法、魔術の行使は自由だがあくまで剣での模擬戦、魔力のみでの勝負は禁止する。ここでは剣技のみが測定されることを忘れないように。」


ハジャーと兵士の間に立った審判役の兵士が言ったあと、それぞれ5歩ほど後ろに下がり、木刀を構える。


「それでは、はじめ!」


審判が言うやいなや兵士がハジャーへ飛びかかる。

横腹を狙った一撃をハジャーは素早く縦に構え弾く。

兵士は弾かれた力を後ろに流しバク転して距離を取る。


「ほう、防ぐか、初手とはいえかなり踏み込んだんじゃがなぁ。ならばもう1段上げていこうかのう。」


老人のような喋り方だが、声が女性、というより子供くらい高い相手の兵士が、なんともカッコいいセリフを吐くと、またすぐハジャーに飛びかかる。


左側頭部、反時計回りに翻り右横腹、バックステップして胸に突き。

明らかに試験レベルではないほどの剣技をハジャーに浴びせるが、ハジャーは見事にいなして弾く。


「お主、魔術を使っているな?しかし自動防御(オートガード)では連撃はしのげん、まさか同時に違う魔術を?どうなのだ?」


「そうだ、自動防御(オートガード)と同時に軌道予測(フューチ)をして最適な防御をしている。

それにしてもやり過ぎではないか?明らかに体力測定の域を超えているのでは……」


ハジャーが話し切る前に兵士は飛びかかる。

今度は乱れ突きのようにランダムに剣を急所に突き立て続ける。


カカカカカッ!と木刀とは思えない高い音を鳴らして、兵士の乱れ突きはハジャーに読まれて、構えられた木刀に弾かれ続ける。


「ふむぅ、なかなかやりおる。魔術の練度が高いからこそ成せる技、かのう。だが、防御だけでは戦いにならぬぞ。」


「だから、これはなんの試験なんだ!アンタの剣技披露の場なのか?!いい加減に……」


語気を強めたハジャーがまた話し終える前に兵士は飛びかかる。

ハジャーの直前で兵士の姿が消え、後に現れると同時に首に斬りかかる。

ハジャーがそれより早く体を翻し木刀を弾く。

すると兵士はまた姿を消し、今度は真左から木刀を突き立て肋に飛び込む。

ハジャーは木刀を地面に突き立てながら左に薙ぎ払い、攻撃を凌ぐ。


「なんと!地鏡(ミラージュ)に反応するか!魔力欠乏体(クラック)ではないのは分かっておったが、身体能力がこれほどとは、いいのう!いいのう!、楽しいぞ!」


嬉々とはしゃぐ兵士に、ハジャーの堪忍袋は袋も尾もまとめて張り裂けた。


「もういい、見たいなら見せてやる。次の攻撃で決める、かかってこい。」


そう言うと腰を深く沈め、足を前後に開き木刀を孫の手を使うように背中に構える。息を大きく吸い吐きながら水晶の中の目を閉じる。


「おぉ!それがそなたの流派かえ?変わっておるのう!ならばわしも一閃でいくぞ!」


またはしゃぐ兵士は木刀を顔の横に構え、ジリジリと足で地面を踏みしめる。


オロオロしているその他の兵士と参加者、晴天の空の下、風が止み静けさが現れると二人は同時に踏み込んだ。


兵士が今までより最も早く飛びかかる。

ハジャーがそれに合わせて体を動かす、その瞬間、ドカン!という音とともに地面が揺れ、次にバン!と音が響いたとき、二人は反対の位置に背を向けて立っていた。


参加者たちは音の衝撃でひっくり返り、回りの兵士たちもよろめく。


二人が体勢を直したと同時に、兵士の木刀が音をたて、縦に割れてから粉々に砕けた。


「……これが、お主の本気かえ?なんということじゃ……。」


兵士が声を震わせ、防具の中の目をパチクリ見開き答えた。

ハジャーはそこで気づいた、やり過ぎたと。


始まりました、王国体力測定編です。

自動防御(オートガード)は、相手の攻撃を魔力の流れで判断し、自分の魔力をその流れに引き寄せる魔術です。これだけを連続で使うと、最初の魔力の流れの残り香とも反応してしまうので、軌道予測(フューチ)で次の攻撃の物理的な流れを見て、そこに流れる魔力に合わせる、という感じです。説明が長い。

自動防御(オートガード)は割と初歩的な魔術です。

軌道予測(フューチ)は魔術でありながら第六感の要素が強いため、使える人と使えない人が明確にいます。使えると便利ですが、なくても戦える人はたくさんいます。

2つの魔術を同時に使うことは剣士中級者くらいの難易度です。


地鏡(ミラージュ)は相手に攻撃を当てた瞬間に発動させることで、残像を残し次の攻撃に移る動作を隠す魔法です。


魔術と魔法は、自然から魔力を得て使うのが魔法で、自らの魔力を使うのが魔術ですが、曖昧な魔術や魔法もあります。

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