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1覇者、ギルドへ (2)

今現在、少し先のストーリーを書いています。登場するキャラのビジュアルに迷い、どうしてもラフを描きたいのですが、利き手を負傷し箸も持てないため制作が止まっています。悲しいね。

失敗した。男はそう思った。

身なりを気にしない時間が長かったせいで、自分が好奇の目にさらされる存在であることを失念していた。

しかし、目立ったことは避けたいがギルドに登録しなければ目的を果たすことは難しい。

今は珍しくとも、何度も視認されていれば人間は慣れてくれるだろう。いつもそうなのだから。


いたって冷静な男は、受付が呼んでくる上司を待っていた。

昼下がり、雲が陽を遮り、通り過ぎて、また陽光がギルドに差し込んだのち、2階の部屋の扉が開き、中からさっきの受付の女性と、眼鏡を掛けた女性が階段を降りてきた。


「はじめまして、私はサリー、彼女はハルと申します。

本日はギルドへの請負人(コントラクター)登録と言うことでよろしいでしょうか?」


茶髪を後頭部で結っているハルが先程より一層シャキッとすると、

眼鏡を掛けた、肩より上のショートカットで黒髪の女性、サリーは男にも動じずスラスラと話を進める。


「はい、そうです。請負人(コントラクター)としてこの地で働こうと思っています。」


「そうしましたら、こちらに貴方の基本的な情報を偽り無く書いてください。」


そう言うとサリーは紙と羽ペンを男に渡した。

若干焦り気味の男と淡々と進む会話に、少しずつ周りの注目は男から薄れ、いつものギルドへと戻っていった。


「えーと、ハジャーさん。リテレ島出身、鉱石族(オーリア)で年齢は135歳、長命なのね、ありがとうございます。」


大男、もといハジャーが提出した紙をサリーは確認する。

リテレ島は世界の中でも鉱石族(オーリア)が多く存在する唯一の島で、鉱石族(オーリア)で社会に生きるものの大半はこの島出身である。

そして鉱石族(オーリア)は不死ではないものの、かなりの寿命がありハジャーはかなり若い方だ、声以外は。


「ハジャーさんは王国の統治外出身なので、生体情報を王国に提出する必要があります。ギルドでは簡易魔力測定をして、数日後、城で行われる体力測定を受けてまたギルドにいらして下さい。」


リテレ島は王国ではなく王国から北東のラミスア帝国の統治下にある。

ハジャーはまず、ギルドにある特殊な鏡、反魔鏡で体内に巡る魔力の量と性質を測る事になった。


生き物には必ず魔力が流れている。その量や特性は千差万別であるが、一般的には量が多いほど魔法使いや魔術師の適正を得る事ができ、特性によって扱う魔術の向き不向きが分かる。

そして必ず、魔力は体内から体外へ流れでている。

体外の自身の魔力は体の外から体を纏うオーラのような形で存在し、体内の魔力量と比例してオーラも大きくなる。

その魔力のオーラを可視化するのが反魔鏡である。


サリーの案内でギルドの受付から左後方の扉をくぐると、5人くらいまでなら窮屈にはならない程度の部屋、その部屋の左奥にハジャーの背丈をゆうに超える約3メートルの大きな鏡、反魔鏡が置かれていた。反魔鏡は鈍い金色の簡素な縁で下が角張り、上は丸い縦長の鏡だった。


サリーは鏡に映らず鏡越しにハジャーが見える位置に立つと、


「ではハジャーさん、鏡の前に立ってください」


と促す。

ハジャーは返事をすると鏡の前に立った。

鏡は若干、写ったハジャーの形に自然光を反射させるとハジャーの魔力を映し出す、はずだった。


鏡に映ったハジャーはただのハジャーであった。

魔力のオーラは映ることはなく、ただしばらく静寂が部屋を巡る。

静寂が部屋を2周した後、サリーが状況を飲み込み始める。


「えっと、ハジャーさん。誠に申し上げにくのですが、貴方には魔力がない可能性があります。もちろん可能性なので王国の正式な測定まで断言はできません。魔力完全体(イングラード)の可能性も大いにあります!」


なんとか取り繕うサリーにハジャーが逆に謙虚になだめる。


「そうなんですね、いろんな人がいますからね。仕方ありませんよ。あはは。」


サリーは続けて話す。


「ですが、ギルドでの判定は魔力欠乏体(クラック)、となります……。申し訳ありません。」


魔力欠乏体(クラック)は、生まれながらにして魔力を持たない者のことで、原因は不明。この世界では手足を失うくらいの障害とみなされているが誰かが助けてくれるわけではない。魔力は生きるためのエネルギーでもあるとされるため、それがない生物は生きる屍、あるいは悪魔であるとして排除する団体も存在する。


一方で魔力完全体(イングラード)は、魔力を体外に一切出さず、完全なエネルギーとして消費することができる者である。通常、魔力は体内で許容量を超えた場合、体外にオーラとして分散するが、その余剰エネルギーすらイングラードは体内に蓄えることができる。

さらに体内に存在する魔力は、あくまで魔力として、魔法や魔術の使用、体内の魔力の循環する部分の自然回復としてでしかエネルギーにならないが、魔力完全体(イングラード)は魔力を栄養、損傷部の再生、細菌やウイルスによる感染病などの免疫など人間が使う生命的あるいは科学的なエネルギーの代用へ使うことができる。

ただし、魔力は内側にしか流れないため、魔法や魔術を使うには媒介となる器具が必要で、一般の魔術師との唯一のデメリットである。


魔力欠乏体(クラック)魔力完全体(イングラード)もとても珍しい存在、と言う点は共通している。


サリーの言葉にハジャーは特に驚きはなかった。

自分が何者かであるのは自分が一番よく知っている。

平然と、そうなんですね、と答えるハジャーにサリーは逆に驚いた。


魔力測定が終わり、数日後の体力測定までハジャーは宿を探すため、ギルドのでしなに、サリーに手頃な宿を聞いた。

いくつか候補を聞き、ギルドをあとにしようとすると、サリーは慌ててハジャーを引き止めた。

魔力測定のお詫びなのかなんなのか、ギルドの空き部屋を使っていいと言う。


どうやら妙にあっけらかんとしているハジャーが、落ち込みすぎておかしくなったと邪推したらしく、いたたまれないのかせめてもの支援を申し出たようだ。


ハジャーは手持ちもあまり無く、宿屋の宿代が高ければ野営しようと考えていたので、渡りに船とご厚意に甘えることにした。


体力測定までの数日間、ハジャーは町で情報を集めながら過ごすことにした。


ハジャーという名前は覇者が訛ったから、破邪顕正から、と2つの理由があります。

鉱物族(オーリア)は鉱石のoreと、家族的のfamiliarを組み合わせたものです。

タニアン王国、ラミスア帝国の由来は三銃士の物語からきています。

リテレ島はなんとなく付けました。

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