1-1
1-1 目覚める世界
目の前が真っ暗の中、感じるのは皮膚が爛れてるような痛み。炎の中を歩いてるような熱さ。
一体何時までこの地獄のような痛みを感じなければならないのだろう。
真っ暗な世界の奥に光が見えた気がした。
あそこに行けばここから解放されるのだろうか。
俺は奥に見えた光を目指して走り続けた。
光に近づけば近づくほど痛みが消えていく。光があと一歩、俺は光に向かって手を伸ばした。
ぼやけた視界の中、天井の白い壁が見える。鼻につく消毒液の匂い。機械が心拍を刻む音。
ここはどこだろうか、俺は学校から帰ってる途中に...
小さい女の子が車に轢かれる直前で庇ったんだ...
眠る前の記憶が鮮明に思い出す。如月千聖
てことはここは病院...?
俺はどのくらい眠っていたのだろうか。申し訳なさそうに普段から出張に行っている両親にはあまり心配させたくない。
「あっ....!先生!目を覚ましました!」
入ってきた看護師の叫び声が響いた数分後、この部屋に一人の男性が入ってきた。格好的に医者だろうか。
医師「....如月千聖くん。聞こるかな?目が覚めたんだね。」
千聖「あの、俺はどのくらい眠っていたんでしょうか」
医師「2年だよ。君はあの事故から2年間眠っていたんだよ。如月くん」
千聖「2年間...」
その時、病室の窓の外で黒い何かがこちらを見ている。見間違いかと思った。けれど、俺には確かに黒い何者かがこちらを見ている。事故に遭う前までは見えなかった世界が、見えるようになってしまった。