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1-0

1-0 始まり



夜は、静かに、けれど確かに、世界の輪郭を溶かしていく。


街灯の光が届かない路地裏で、如月千聖は独り立ち尽くしていた。

コンクリートの壁に、何か得体の知れないものの影が蠢いている。

人の形に似ているが、人ではない。それは、彼がかつて見たことのない“何か”だった。


「……まただ。退院してから、ずっとこうだ」


事故から目覚めてまだ一週間も経っていない。

二年間眠り続けたその間に、世界は何かが変わってしまった――

いや、自分が、変わってしまったのかもしれない。


影は音もなく、彼に向かってにじり寄る。

脚が動かない。息が詰まる。叫ぼうとした喉は、音を裏返した。


その瞬間。


「動くな。妖は、恐怖に近づく」


夜風を切る鋭い声と共に、闇を裂くように刀が光った。

無造作に切り払われた影は、瞬く間に霧散する。

そこに立っていたのは、夜の空気すら切り裂きそうな眼をした青年だった。


「お前、見えるんだな」


青年――小鳥遊 隼は、血の通った人間には似つかわしくない静謐さをまといながら、千聖を見つめていた。

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