飯沼班は王都へ(前編)
2「さてと、斉藤さん、春菜さん、薫さん、先生、私達は楽しい楽しい王都の旅へ向かいましょう!」
1「そう言えば思ったんだけどなんでこんな少人数なの?もう少し入れても良かったと思うんだけど……」
2「いえ、少人数でないと行けないんです、もし盗賊に遭遇してしまっても少人数なら太刀打ち出来ますし舐められやすいですし、それに私の知っている王都には必ず入国金が必要だと書いてありました、私の能力で何かしらの食べ物屋を開けば容易く稼げるでしょうけど目指す金額ば少なけりゃ貯めやすいので」
5「成程ね…出店で稼ぐか、提供する料理の金額が少なくすみ、客も来やすい」
4「み、皆さん歩きながら喋るなんて、凄い器用ですね……」
5「なに、疲れたの?」
4「い、いえ、私は歩きながら話してしまうと舌をよく噛んでしまうので……」
2「春菜さんは歩くのに集中、もし敵が来たら能力で一掃して下さい」
4「う、うんッ……」
「にしてもまぁ東なんて、もう少し詳しく教えてくれても良かっただろ」
2「舌がないので詳しくは言えなかったのでしょう、素直に方角を教えてくれただけ偉いと思いましょう」
5「やっぱり出会った時のアレが1番効いたんでしょ俺ですら見てるだけで痛いと思ったぞ」
1「うへぇ……律ちゃんもよく見知らぬ奴の舌を引っこ抜けるよ〜」
2「フフフ……まぁ引っこ抜くのは慣れてますから」
「うっわそれだと同じ部活の正治が…はっ!辛かったな正治…」
5「あぁ、強いよ正治」
1「毎回骨を……うわぁ」
2「皆さんどうしたんですか?血相を悪くして」
「「いえッ、なにも」」
・・・
歩いて5時間経過——
2「結構歩きましたね〜、おぉぉ…ここが王都」
1「にしてもかなり並んでるね〜夢の国のアトラクション待ち並だよ〜」
4「げ、言語は、共通なんですね」
2「あら?分離壁の周りに出店が出てますね」
1「そうだね〜多分あそこで入国料を稼ぐんじゃない?」
「そうと決まれば……飯沼、出番だ」
黄泉勝利はそう言うと背中の荷物から何かを取り出す
5「何してるんですか?まさか出店を組み立てようと?」
「話が早いな斎藤、ほら早く手伝え」
2「こんな事もあろうと新島さんに出店型ハウスを作って貰ってたんです、まさか組み立て式とは予想してませんでしたが……」
4「通りで先生の荷物が異様に多いと思ったら……」
「先生、歳上なのに……パシリに使われて悲しっ」
5「歳上だからですよ先生」
・・・
組み立てを終えて——
2「……何作りましょうか、オムライスや定食系では並んでる人も気軽に食べれないですね」
1「おにぎりは?昨日の米あるでしょ!私ちゃんと猪肉も持ってきたんだよ!!」
4「サンドイッチも捨てがたいです、近くの出店に食パン売ってるか見てきます」
5「なら俺も行く、見つけたら報告するよ、1文無しだからある程度おにぎりで稼いだら手に入れる」
2「分かりました、皆さん最善を尽くしましょう!!」
しばらくして——
2「猪肉おにぎり出来ました、春菜さんこちらをお願いしますッ」
4「は、はい!こ、こちら猪肉おにぎりです!」
2「まさか……おにぎりがここまで盛況になるとは…異世界のあるある、食文化が乏しいのはここもそのようですね」
5「口動かすなら手を動かしてくれる?アッツくって俺と先生じゃ飯沼さん並みの速さで作れないの」
1「ある程度お金溜まったから春菜ちゃんが見つけたパン買ってくる!」
2「斉藤さん少しの休憩です、近くの川で草を取ってきてくださいッここは私達で何とかしますので!」
5「まっじか俺一休み行ってきます!!」
斎藤巳波は晴れ晴れとした顔をして出店から飛び出す
「はぁぁっ!?羨ましいんですけど!」
黄泉勝利は逆にトホホと言いたげな顔をしてわめいた。
4「だ、大丈夫なんでしょうか……異世界の草なんてどれが食用なのか、」
2「大丈夫ですよ、どうやらここの草は分かりやすく地球の野菜と瓜二つみたいです」
・・・
5「にしても飯沼さん何も言ってなかったけど俺でも分かるのか?…俺も何も聞かず飛び出したのはいいけど間違って毒草持ってたら大戦犯だな……アレじゃね?」
目の前ではレタス見たいな丸い、野菜みたいなのが生えていた。
5「これだろ絶対!早くサンドイッチ作って入国してやるッ」
・・・
1「食パン大量に手に入ったよ!」
5「レタスの事を言ってたんだな、頼むからちゃんと説明をしてくれッ!」
2「すみませんこちらも手こずってますので!とにかく、薫さんサンドイッチ作れますか?」
1「おにぎりより楽勝!!」
2「では斎藤さんとサンドイッチ作りに専念、すみませんが春菜さんはそのままホールを担当して下さい!」
4「はッはい!!」
5「クッソ俺らの班飯テロ異世界モノになるなんて……」
2「口を動かすなら手を動かしてください」
5「うっわカウンター返された!?」
この忙しい時間があと4時間続いたとさ
・・・
2「ひ……日が暮れましたね」
1「疲れた〜もうサンドイッチ作りたくない〜」
「先生これで究極のおにぎりをマスターしたよ……」
5「それで堕ちる女は居ないよ」
「俺の生徒達辛辣すぎて言葉が出ない……」
4「あ、足が……もう動けない」
2「ずっと運んで貰ってたので春菜さんが1番大変でしたね」
「先生がおんぶしてやりますか?」
4「……」
5「うわセクハラだ」
1「セクハラ教師ぃぃッ!!」
「それは流石に酷くない!?」
5「…………」
1「ヘタレ男……」
2「私達のクラスって何故こんな奥手な男性が多いんでしょうか」
4「み、巳波君は優しいよ!!」
1「この中で春菜ちゃんが1番積極的だ〜」
「いやこれで積極的なら君らも充分奥手だよ」
1、2「「セクハラフラレ教師ほど、憎しみが押し寄せる奴に言われたくないね(ですね)」」
「ハハハッ恋愛のレの字も知らないお子ちゃまにあーだこーだ言われる筋合いは何処にも見当たら無いんだけど」
5「おいくだんないことで喧嘩すんな、早く入国してこの世界について理解するぞ」
4「な、仲良く…喧嘩しないでください!」
2「そうですね、私絡みで内線を増やしたくありませんのでここは、引き分けで」
「不服だが教師として大人の余裕を見せてやるよ」
1「ウッザ」
5「お前らッ!」
各それぞれ言い合いしている最中、皆は気付かなかった。
4「あ、あの……皆さんッ」
鉄装備の兵士達に囲まれている事を。
2「ど、どちら様ですか!?」
1「いつの間に囲まれてッ」
4「いえ、5分くらい前から囲まれてました」
「どうして早く言わないの……」
4「何度も呼んだんですけどなかなか皆さん、喧嘩に夢中になって、私の声が届いてないみたいで……」
5「もうお前らが騒ぎ立てるからッ!!」
兵「も、もうお話をしても?」
無精髭を生やす兵士が声を震わせて言う、この様子を見て悪徳兵士の考えは無くなった。
2「はい、すみませんお見苦しい所を見せてしまいまして……」
兵「い、いえ……こちらも急に押しかけてしまったので、それでは本題に移らせて頂きますね…、皆様には城に来るよう王様から指示があります、謁見はもう遅いので明日の朝、宿はこちらで御用意致しますので御同行、宜しいですか?」
2「私は構いません、まさか王族の方と謁見出来るなんて驚きです、是非ともお願いします」
1「律ちゃんが良いなら」
「おいおい保護者は俺だぞ?まぁ飯沼が良いなら俺も行く」
5「騒音問題の謝罪なら焼き土下座させます」
4「わ、私も巳波君と同じいk……え?」
兵「よし、それじゃー裏門から向かおう」
こうして王都へ入るつもりが王城へ行けるようになった。
続く