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〜聴啞の騎士と盲目の少女〜③ 戦鬼ガランド


  ーグリディア王国第八騎士団ー


約一年前

 グリディア王国騎士駐屯所(ちゅうとんじょ)

「ドイル!貴様喋れんくせに第八騎士団の騎士長だと!まとめれるのか!こんな曲者(くせもの)を寄せ集めたような部隊を!喋れんやつはさっさと辞めろ!」

 激昂(げきこう)してドイルに詰め寄るのは大槍を背中に担いだ大男

「……」


 リンリンと鈴を鳴らしドイルは振り返った

 腰に下げた大剣には鈴が付いている、団員と作戦に関する打ち合わせを筆談(ひつだん)で行っているところだ


「まあ〜まあ〜そんなに興奮しないで〜ガランドさ〜ん、自分で曲者って言っちゃってるじゃ〜ん」

 

 この軽そうな男は第八騎士団員ビオルク、腰に細剣(さいけん)(たずさ)えて茶髪のロングを一束(いっそく)に結んでいる


「貴様は黙っていろ!ビオルク!決着をつけるぞドイル!」

 「戦鬼(せんき)ガランド」と「聴啞(ちょうあ)の騎士ドイル」は同期ということもあり切磋琢磨(せっさたくま)に戦果を挙げてきた 


 喋れなくなった時も同じ戦場で戦っており、首が焼ける大怪我を負ったドイルはガランドとともに大戦果を挙げていたのだ

 それ以降、「戦鬼ガランド」と「聴啞(ちょうあ)の騎士ドイル」と呼ばれるようになった

 

「貴様が負けたらこの軍を辞めてサラの所に帰れ!今すぐだ!」

ガランドが激昂(げきこう)する

 

「……」

 ドイルはガランドの目をしっかりと見据(みす)える

 

「いや〜優しいっすね〜ガランドさ〜ん、ドイルさんの奥さんの訃報(ふほう)が先日届いたから騎士長なんかせずに帰ってサラちゃんのこと支えてやれって言いたいんでしょ〜」


 素直に言ったらどうですかとビオルクは付け加えたがガランドは相手にしない


 ガランドはドイルと古い付き合いなのでカーラのこともサラのことも大事にしていたことを知っている

 

 今、ドイルがどれだけ(つら)いのかわかるからこそ無理やり引導を渡すつもりなのだ


 ドイルは軍所属だがかなりの頻度(ひんど)でカリヨンの村に帰っていた

 カーラが村の出身で村からあまり出たがらないタイプだったのでそこに一緒に住むようにしたのだ

 

 カーラと出会った時、既に喋れなかったドイルは尻に敷かれるようにカーラと結婚した

 

 娘を授かり「サラ」と名付けた

 

 ドイルは本当に幸せだった


 サラが六歳の時、目が不自由になってしまったのでドイルは引退を考えていた

 

 その思いをカーラに伝え、それが一番いいと覚悟は決まっていたのだ


「これからは毎日一緒にいれるよ」とサラに伝えようとした日に決意を(にぶ)らせてしまった


 「お父さん!プレゼントがあるの!…ジャーン!」

 サラがくれたのは「鈴」だった


「お父さんの大きな剣に付けて欲しいの」


 サラにとってドイルは英雄なのだ

こんな小さな村では特に自慢だった、目が不自由な自分には他の子に話すことはいつもドイルの英雄(たん)


 戦いから帰ってくるたびに戦果を挙げてくるドイルの噂は村まで届く

 ドイルが自身の戦いを語れないのでたまに連れて来る「ガランド」にサラは聞いていたのだ

 

「お父さんが帰って来てもすぐ分かるように鈴を付けてて!可愛いでしょ」


 ドイルとカーラは言えなかった「お父さんは騎士を辞める」そのことはサラにとって見えない世界をもっと(せば)めてしまうのではないかと思ったのだ


 その事を言えないまま、戦いに出ては村に帰りを「五年」も繰り返した

 「お父さん、ガランドおじさん!今日もお話し聞かせて〜」

 すっかりドイルの家に馴染(なじ)んでいた「ガランド」はいつものように話を聞かせた


ガランドは「サラが全盲になった」と聞いて、「引退してそばに居てやれ」とドイルに言ったが首を縦に振らない、どうしても辞めようとしなかった


 それが(あだ)となった


 カーラが魔獣に襲われて亡くなったのだ


 連絡があったドイルは失意に落ち


 サラのことが心配で村に戻ろうとした時だった


「ガーリア帝国が進軍して来たぞ」


 騎士団駐屯所に緊張が走る

 

「今から部隊編成の報告があります!第一騎士団…………………………第八騎士団の騎士長はドイルさんに任せるようになってます」


 事情を知ってる兵士が報告したので声のトーンが尻すぼみに小さくなる

 引き受ける(むね)を兵士に伝えるとドイルはこれを最後に引退しようと決めた


 翌日、激昂したガランドがドイルのところに来た

今すぐ辞めろと言うのだ

 「決着をつけるぞ」とガランドと訓練所に行く、向かいあったドイルとガランド


 聴啞の騎士ドイルvs戦鬼ガランド


鈴の付いた鞘を大事に置くドイル、背中の大槍を片手で軽々持つガランド

 ガランドが大槍を振り抜く!


凄まじい圧がドイルを襲う!


 轟音(ごうおん)とともに振り抜いただけとは思えぬほどの圧が「かまいたち」を生む!

 それを恐れず前に突っ込むドイルの顔に切り傷が無数に付き血飛沫(ちしぶき)が舞う!


 構わずドイルは(ふところ)に入り大剣を打ち下ろす!


 大剣と大槍がぶつかり合う!大槍の()でガランドは受ける!


 大剣と大槍がぶつかった瞬間、二人を中心に衝撃波が走る!

 鍔迫(つばぜ)り合いもお互いのチカラは拮抗(きっこう)している

 ドイルは大槍のリーチの長さに対して接近しての攻撃に徹底している


 ガランドはドイルの斬撃を全て大槍の柄で防ぐ!


 一撃一撃に凄まじい衝撃が走る


「いくぞドイル」

 斬撃を繰り出す中、そう言ったガランドは蹴りを出し、それを(かわ)すドイル!

 

 二人には少し間合(まあ)いが出来た!


ガランドの体を激しい魔力が包む!


 稽古場の空気がヒリついてくる!


 「破岩衝(はがんしょう)!」


 ガランドの体内魔力を大槍に乗せた大技!射程距離と攻撃範囲が大幅に上がる波動(はどう)突き!


 地を(えぐ)るほどの波動がレーザービームのように襲う回避不能の超攻撃!凄まじい波動がドイルを襲う!


 爆発音とともに粉塵(ふんじん)が舞う!

 

粉塵が落ち着き二人の姿が現れると片膝(かたひざ)を付いてるのはガランドだった


武装具(ぶそうぐ)……」


 ガランドが見たのは先程まで持っていた大剣ではなく、ひと回りも大きく青く光る大剣


「デュランダルか……」


ガランドはもう大槍を振るチカラはなく、ドイルの勝利で終わった


 武装具とは限られた者にのみ使える武器であり王国内でもドイルを入れて六人しかいない


 しかも一騎当千のチカラがあるのでガーリア帝国との戦争では欠かせない戦力になる

 ドイルの持っている大剣がデュランダルなのではなく、ドイルの右手に着けている「籠手(こて)」が武装具であり「デュランダル」だ


 発動すると持っている武器に籠手がチカラを与えると言われている


 ドイルの大剣がデュランダルに見えるのではなく「視える」ということだ


 二人には治癒班が駆けつけこの戦いは伝説となり

 ドイルは第八騎士団の騎士長としてこの戦いに参加することになった

  

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