〜孤児院〜
エリィの提案で孤児院にも顔を出すことになった
孤児院といっても過去に国が運営していただけはあり、広い敷地に平家の立派な建物だ
敷地内では子供達が楽しそうに遊んでいる、エリィを見つけるとたくさんの子供達が集まって来た
トーマとコーラルも囲まれて質問攻めをされる
孤児院の子供達にとっては獣人族への偏見は無いように感じる
ネネが居たことやエリィとレイのおかげなのだろう
「ねぇ、お兄ちゃんってもしかして騎士様?」
「うん、その予定だよ!でも今はまだ冒険者!」
「マジで〜カッコいい!みんな〜エリィ姉ちゃんのカレシが騎士様になるって〜!」
「――!」
――なっ!かっカレシ!……オレが?……そう見えるのか……なんていい子なんだ!よし!もっと言いふらせ!――
「トーマっちはウチのでもあるんっちゃ!」
「――!」
――何〜!なんてこと言うんだ!腕を組むな!腕を……でもってなんだ……こんなのまるでオレが二股してるみたいに……――
「……お兄ちゃん……サイテー!」
子供達の中の一人の女の子が軽蔑した眼差しでトーマを見る
「待っ!違っ……」
「お兄ちゃんスゲ〜!スゲ〜モテてる!やっぱ騎士になる男は違うぜ〜」
「はぁぁ?何言ってんのアンタたち!エリィ姉ちゃんとコーラル姉ちゃんが可哀想なんだから!」
男子と女子がお互いの信念により大討論が勃発している
「あっあの〜君たち……ケンカは良くないよ……」
トーマは宥めようとする
「「お兄ちゃんのせいだよ!」」
「――!……申し訳ない……」
子供達に怒られ、その後なんとかエリィとコーラルのフォローにより収まった
「お兄ちゃんって強いんだよね〜?実はお願いがあるんだ」
「――?お願い?」
「こら!ロン、トーマ様はエリィ様との「務め」があるのですよ!」
始めにトーマに話しかけて来た子供のロンが、孤児院のシスターに押さえられている
エリィと話していたシスターは無理なお願いをロンがしていることに焦ってこちらに来たのだ
「ロンくん、どうかしたのですか?」
エリィはトーマに駆け寄る
「うん、なんかお願いがあるみたいなんだ」
「何かあったソ?」
「メリンダさん、お話しだけでも聞きましょうか?ねっトーマくん!」
――ねっトーマくん……ねっトーマくん……エリィ……ねって……なんか……なんかすごく近く感じる……ああ、どんどんエリィの言葉遣いが砕けてきたら……ねっロンのお願い聞いてあげようよ〜、エリィ、ロンのお願いもエリィのお願いみたいなものだよ、えっだったら……ああ、もちろんいいよ、ありがとうトーマ!、エリィ!……トーマ……エリィ……――
「お〜い!お〜い!トーマっち〜!」
「おぁ!……うん、聞いてみよう」
孤児院のシスターメリンダは申し訳なさそうに、それではと孤児院の中にトーマ達を案内した
「それで、ロンくんお願いって?」
「うん、じつは最近この街に吸血鬼が出るんだよ!」
「「「吸血鬼!?」」」
「それでね……退治して欲しいんだ!」
「ここからは私が説明しますね……」
メリンダが話しを続ける
最近ミストの街では夜になって出歩くと吸血鬼に襲われるという事件が多発している
特に若い女が狙われるらしいが、男でも安全ではないらしい
被害者は皆、後ろから狙われており姿を見たものはいない
被害者の首には牙による血を吸った痕があり、幸い死者は出ていないらしいが血を吸われたものは貧血状態で何日か寝込んでいるということだ
「吸血鬼って魔族だよね……街に居たりするの?」
「考えられないですね……それに吸血鬼は最高位魔族ですから人を襲うというより、もっと計画的に血を求めるでしょうね」
――そういえばネネちゃんの時も国との軍事的な取引だったよな……――
「吸血鬼だよ!絶対!オレ知ってるんだ!」
「ロン!憶測で疑うものじゃありません!」
「だってさ〜!あの人が引っ越して来てからなんだよ〜……一人ぼっちだし……」
ロンの話しによると街の外れに最近引っ越して来た者がいて、街の人々が吸血鬼ではないかと噂をしているらしい
「それにその人、魔法使いってウワサだよ!」
「「「魔法使い!」」」
「グリディアでは珍しいですね、人族の魔法使いの方は」
「だから〜魔族だって〜」
「ロン!」
とりあえず話を聞いたトーマ達は、そのあと孤児院の子供達と少し遊んで別れを告げた