〜渦巻く画策〜②
街の中央に位置する大型の詰所がそこにはある
グリディア王国の旗が掲げられ、石のレンガで出来たような要塞だ
中には兵士が常時複数滞在しており王都の騎士詰所の支所のような存在だ
王都から左遷のような形で兵士がこちらに務めに来るので質はかなり悪い
トーマが居るのはこの詰所の地下にある拷問室だ
素行の悪い兵士達は手柄を挙げるために情報を上の者に上げず極秘に捜査する事も多い
今もまた一人、鎖に繋がれて痛めつけられている者がいる
「おい!いい加減吐けや!」
警棒のような物で殴打され血だらけで俯くのはトーマだ
「これスゲ〜な!どんな魔導具なんだ?」
痛めつける兵士が持つのはトーマのスタンガンだ
スイッチを最大にしトーマに浴びせる
「――!」
「お前だろ?セブンって、こんな怪しい魔導具にコートに仮面……ズーク宰相を何処にやった?」
何度も殴られ電流を流されているが意識はハッキリしている
ただ言い訳が通用しないのがトーマがセブンである事だ
誘拐とは関係ないがセブンである事は事実だ
今やセブンがズーク宰相を誘拐したというのが世論になりつつある、よってトーマは黙秘を続けるしかないのだ
――殴られて痛いし、電流も痛いし……さすがに一日中続くとやばいかも……ここでエリィ達と夜一緒にいたと証言するとエリィ達もセブンの仲間で尋問される可能性があるな……セブンが裏目に出たか――
エリィとコーラルは一日経っても戻って来ないトーマが心配で詰所のほうに来ている
「トーマくんに会わせて下さい!ここに居るはずなんです!」
「トーマっちは一昨日の夜ウチらと居たから関係ないっちゃ!」
詰所の兵士に聞くがそのような者はこちらに来ていないと言う
途方に暮れる二人は昨日も心配で寝ていない、結局朝までトーマを待ち続けたので心身共に疲れきっている
宿も前と同じ部屋を取っていた、トーマが帰って来てもすぐ分かるようにと二人で考えたのだ
宿に戻ってはトーマが訪れたかの確認をし、詰所に行くを繰り返していた
エリィはレイに助けを求めるため診療所を訪れるが不在、コーラルがギルドに居るのではとエリィに言って二人でギルドに向かう
憔悴した二人はギルドに入るとレイがいた
シュンカとマイメロも一緒に居て、三人で話し合いをしているようだ
「レイさん!トーマくんが……トーマくんが」
レイを見つけ取り乱したエリィは話し中のレイにお構いなしで話しかけて輪に入る
それにすぐ反応したのはシュンカだった
「彼が……!私はそのような報告を受けてないぞ!」
「彼の問題行動が疑いを膨らませたのでしょう」
マイメロは冷静に分析する
「トーマくんは身元がハッキリしてませんからね、エレノア……彼は何者なんですか?」
「……」
エリィは答えられない
「彼はきっと「アゥフ」になるよ、まだ完全ではないが片鱗を見た」
シュンカがそう言う
「アゥフ!トーマくんが……」
レイが驚愕し黙り込んで考えを整理しているようだ
マイメロはやはりと納得して沈黙する
「私がなんとかしよう、ついて来い!」