〜差別と暗黙の国〜⑨ ミミとグリム
依頼書を受付に持って行き、正式に初依頼初指名を受ける事になった
推定依頼ランクはC、内容は緑魔石以上を今日中に最低百個依頼者に譲渡すること
かなり厳しい依頼だ
――緑魔石ってことはツチノコくらいか……ただ量が多いな……でも四人なら――
「オレはグリム!この女がミミ!」
「オレがトーマでこの子がコーラル、んじゃよろしく」
「アンタさ〜、人族なのに獣人族連れてるなんて珍しいじゃん!」
目的地のスクワ森林に向かいながらミミは目線を合わせず聞いてくる
「そう?」
――コーラル!離れろ!こんなところエリィに見られたら――
コーラルはちょっと二人が怖いらしくトーマの腕にしがみついたまま歩いてる
「たしかになぁ獣人は強ぇからか?っていうかめっちゃくっ付いてんなぁ」
「?、人族とか獣人族とか関係あんの?」
トーマは質問返しする
「関係あんだろ、普通」
「関係ないだろう、普通……コーラルだから一緒にいるんだよ」
「「――っ」」
「トーマっち!」
コーラルはトーマの首に抱きついた
「こらっコーラル!離れろ!歩きにくい」
トーマはなかなか離れないコーラルを引き剥がすのに必死だ
「ふ〜ん、いいんじゃん!そういうの!あーしは混血だからね」
「混血!どうりで……」
「どうりで何よ!」
「ああ、どうりで可愛いって思っただけだ、混血は可愛いって相場が決まってるからな!」
トーマはエリィ以外には平気でそんな事を言える
というより人と接することに抵抗が無くなってきて、素が出てきているように感じる
「なっ可愛いってアンタ!その子がいるのに……バカじゃない!」
「トーマっち……ウチというものがありながら……」
「ちぃこのスケコマシが!」
そんなこんなでスクワ森林に到着した
「オレに作戦があるんだが……まずミミとグリムは凄く強いよね」
「ほぅ、分かんのか……で?」
「オレには敵の位置が把握できる能力がある!だから三人に指示出すから動いてくれない?」
トーマの作戦は司令塔を三人が囲み、スクワ森林で敵を倒しながら走り進むこと
チームワークと司令塔の正確性が重要だ
「この作戦なら目標の魔石数をかなり時短で稼ぐ事が出来る」
「わかった……いいかミミ」
「しょうがないわね!」
「いいっちゃ!」
「じゃあ行くぞ!」
――魔物の気配だけに集中する……範囲を広げて正確に……集中……集中――
「走るぞ!魔石回収は後で!オレの指差しと声を良く見て聞いて!」
グリムは槍、ミミは槌、コーラルはトンファー
「そっち、右にコーラル、左前ミミ、グリムは木の上!」
――ホントに強い!この二人、コーラルもかなり強いのにレベルが違う!しかも全然本気じゃない――
圧倒的な殲滅力と的確な指示により数時間で目標まで魔物を倒すことが出来た
ほとんどの魔物はフラッディークで本来ならレアな魔物なので遭遇することも難しいが、トーマの能力によりこちらから倒しにいけることが短時間でのこの戦果だった
後は倒した魔物の回収だが、ある程度の場所が分かるように森林内を円を描くように動いていたので回収も楽に出来るというトーマの作戦は三人を驚かせた
「やるなぁテメー」
「なかなかやるわねアンタ!あーし達を使うなんて」
「トーマっち!天才っちゃ!」
――粘液ベタベタの手でくっ付かないでコーラル――
すべての回収を終え、これで依頼完了というところで寒気がきた
「――っ」
「みんな最後にとんでもないのくるぞ!」