〜差別と暗黙の国〜⑧ 初依頼
ギルドに着くとトーマは視線を感じる
つい先程あのシュンカ・オーシャンと壮絶な戦いをし、すっかり有名になってしまったのだ
それを気にせず受付カウンターに向かう
「依頼を受けたいんですけど、どういうのがありますか?」
綺麗なカウンターの受付嬢が感じ良く対応する
「トーマ様とコーラル様はEランクですのでまずは指定の薬草採取や街の大工仕事、低級の魔石を納品する事が主な仕事ですね、指名があれば高ランクの仕事も請け負うことが出来ますよ」
――やっぱ最初はコツコツと積み重ねだな――
「質問ですが、今現状一番難しい依頼は?」
「今ある中だとAランクの依頼ですね、依頼主はこの街の町長からです、西にある「スクワ森林」で魔獣ビッグレグストが出没したので討伐して欲しいとのことです、ただビッグレグストはAランク魔獣なのでかなり難しいですね」
「Aランク魔獣ってやっぱり強いですよね?」
「そうですね、Aランク冒険者のパーティ4人でやっとってところですね」
「街が被害に遭ってるんですか?」
「はい、ビッグレグストは魔石が好物なので討伐しておかないとどんどん魔物を襲ってしまって街の資源が無くなってしまうのです」
「そうなんですね、早く解決するといいですね」
「はい、トーマ様のご活躍楽しみにしています」
「頑張ります!じゃあ、あの掲示板で仕事探してここで受付するって感じでいいですか?」
「そうですね、ではあちらの掲示板でお探し下さい」
綺麗な受付嬢の指差す方向を見ると
「アンタほんとにこんなんで間に合うと思ってんの?バカじゃないの?」
「ああ?うるせ〜なぁしょうがねぇだろが!忘れて来たんだからよ〜」
「ホンット信じらんない、なんでこんなヤツとあーしが行動しなきゃなんないの!」
――うそだろ……!?――
トーマは目を疑った、掲示板の前には見慣れた服装の男女がいたのだ
黒髪のボブスタイルにピンク色のインナーカラーが入り、ミニスカートはチェック柄でハイソックス、カーディガンも着てリボンタイもしている
どう見ても女子高生のブレザーを少しアレンジした雰囲気だ
口調や目つきはキツいのでかなり気が強そうに見える
「オレもテメーとなんてまっぴらゴメンだ!」
こちらもかなり気が強そうな雰囲気だ
ツンツン尖った緑色の髪、耳には複数のピアスに昭和のヤンキーのような学ランを着てブーツでアレンジした男、歳は二人ともトーマと同じくらいに見える
――おいおい、なんで「アース人」がいるんだ!……いやここはグリディアだからそんなはずは無い、レイジンもグリディアにはアース人はいないって……んっあの子……よく見ると尻尾がある、獣人?でも耳は無い……――
トーマが二人を見ていると
「ちょっとアンタなにこっちジロジロ見てんのよ!」
「んっ何見てやがんだコラ〜!」
――この二人……気が合ってるのか合ってないのか……――
「ああいや、黒髪なんて珍しいなぁと」
「はぁ?黒髪なんているわけないでしょ!アンタだって染めてんでしょ!バカじゃない!」
――いや……クチ悪っ……じゃあもとはピンクで黒に染めてるんだ、中だけピンク残すとかオシャレ〜……っていうか黒髪いないの?やばっ――
「そうそうオレも染めてて、内側だけ染めないなんてオシャレだなぁと」
「はぁ?……アンタなかなか分かってんじゃない!」
黒髪の女の子はちょっと気分を良くしたようだ
トーマは二人の依頼書と先程の会話から推測して聞いてみる
「依頼出すの?どんな依頼?」
「ああ?テメー、ランクは?」
「Eランク」
「雑魚じゃねぇか!これは最低Cだ!テメーにゃムリだ!」
あまりにもガラの悪い二人なのでコーラルはたまらずトーマの袖を引っ張る
「ちょっとトーマっち!普通の依頼探そうっちゃ!」
「――っ」
「「トーマ?」」
二人が反応する
「アンタ……トーマって言うの?」
「そうだけど……」
――今日の試験で有名になり過ぎちゃったかなぁ?――
トーマは内心嬉しい
「おもしれぇ!この依頼テメーに指名するぜ!」
「えっいいの?」
「おお!トーマっち初指名きたっちゃ!」
コーラルはトーマの腕にしがみつく
「そのかわりオレ達も一緒に行くぜ!四人でやるぞ!」