〜差別と暗黙の国〜②
到着したのは診療所、もう診療時間は過ぎているがエリィは扉を叩き呼ぶ
「レイさん!レイさん!お願いします!」
――えっレイさん?――
「どうされたのですか?エレノア、そんなに慌てて」
扉から出て来たのはレイ
ギルドでトーマ達を助けた治癒士だった
「レイさん!彼女を……コーラルを助けて下さい!
男達に襲われてボロボロに……レイさんなら助けられるって……」
トーマはなりふり構わずレイにお願いする
「落ちついて下さい、コーラルさんは血だらけですが、もうほとんど完治してますよ」
レイは優しくトーマを宥める
「――っ」
――えっコーラルの顔……きれいに……なんで?――
「どっどうして……」
「とりあえず中に入りましょうか」
レイの指示でまだ意識のないコーラルをベッドに寝かせ、レイとエリィで体を綺麗に拭いてあげる
トーマは部屋を出て待合で座って項垂れている
少し経って部屋からエリィとレイが出てきた
「もう大丈夫ですよ、というかここに着く頃には治癒は完了していたので……君のおかげですね」
「おっオレ治癒なんて……出来ないです……」
「エレノアが言ってましたよ、君が物凄い魔力を纏っていたと、君の彼女を想う気持ちがすべてを癒したのでしょう」
トーマは気持ちも落ち着きコーラルの側に座って意識が戻るのを待つ
服はエリィが今補整してくれている、レイも血や汚れが付いたタオルなどを片付けている
コーラルが助かったと思うと今度は怒りが込み上げてくる、拳を握りしめて怒りを抑え込む
――許せない……少しでも遅かったらコーラルは死んでいた……目星は付いている……アイツらだ――
トーマはこの街でこの国でいろんな感情と戦っている
蔑まされ暴行されても耐えるのか、反撃して反撃されて憎しみの連鎖に入るのか
戦争も同じ、殺して恨み殺されて恨み、どれが解決なのかわからない
レイジンは言った、「戦争だからな」と
こういう事なのか、殺されるから殺すしかない
コーラルは言った、「相手をどうにかしたいんじゃない、自分たちのような思いをしてほしくないだけ」
と、仕返しをしたいわけじゃない
エリィは言った、「大丈夫です」と
トーマを信じトーマなら乗り越えられると
――あぁ……コーラル……冒険者バッチ盗られちゃったんだ……このブローチよりバッチ守れよ……オレは……――
トーマはブローチを強く握りしめて立ち上がった
「トーマっち……」
立ち去る腕を掴まれた、コーラルが目を覚ましトーマの腕を離さない
「コーラル!大丈夫か?どこか痛むか?……良かった目を覚まして……怖かったろう……もう大丈夫だぞ……傷も綺麗になった……安心していいぞ」
トーマは優しく手を握る
「……トーマっち……ありがとう……意識なかったけどわかったソ……トーマっちに抱かれて温かかったソ……優しくて……」
コーラルはしっかりトーマを見つめ
「だからね……ウチのためなんかで問題起こしちゃダメっちゃ……明日、冒険者になるソ……ウチらの目標を見失っちゃダメなソ……」
――オレがあの男達を殺す……コーラルに悟られたか……だが許すことは出来ない…………だからか……だからゼロは居なくなったんだ!……このどうしようもない連鎖から抜け出すために……だったら!――
「大丈夫だぞコーラル!ゆっくり休め……寝たほうがいい、傷は無いが体力が回復してないからな」
トーマは優しくおでこに手を置き、もう片方の手はコーラルの手を握ったまま側に座った
――この世界で秩序や良心を持った人は沢山いる、国のトップにもいるだろう……だがそうでない者達が戦争をして、とてつもない規模の憎悪が生まれる……だったら……何にも縛られない「いち個人」が秩序を正せば?……帝国にも獣王国にも王国にも属さない「ヒーロー」がいれば……すべての悪に対する共通の敵……オレにしか出来ないんじゃないか?……アース人のオレしか……創るしかない――
読んでくださりありがとうございます。
今作を読んで
「面白そう!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ってくれたら↓の★★★★★を押して応援してくれるととても嬉しいです!
ブックマークもお願いします!
あなたの応援が、作者の更新の原動力になります!
よろしくお願いします!