〜ズーク宰相〜
ズーク以外の者はあまりの理不尽に驚愕し、兵士もコーラルへの拘束は抵抗を感じつつ行なった
コーラルは拘束されながら膝をつき泣きながらやめてどうしてと懇願する
そんな兵士達も目を逸らし、泣き喚くコーラルをズークが殴った
「――っ」
「黙れ!獣は大人しく人間に逆らうな!」
ズークがコーラルを殴った瞬間!
一瞬だった、ズークは闘技場の中央まで吹き飛んだ!
「――!」
誰も動けなかった、動いているのはトーマだけ、ゆっくりと中央まで歩いて行く、とてつもない魔力が体を纏い始める!
「とっトーマっち?……」
一体何が起きたのかここに居る皆、理解出来なかった
頬の痛みに震えるズークの胸倉を掴み上げ
「お前、それでも国のトップなのか?」
トーマは鋭い目つきに冷たい声で問う
「貴様〜!何をやったかわかっているのか〜!」
ズークは怒りに震え叫ぶ!
ギルドマスターと兵士が慌てて闘技場内に入ってきて、辺りは騒然としていた!
「君!宰相から手を放しなさい!罪を重ねるな!」
そう言ってギルドマスターがトーマにゆっくり近付く
「あれ?私利私欲で無抵抗な女の子の顔を殴り、連れ去ろうとする事はこの国では犯罪ではないんですか?オレこの国、来たばっかりだから知らなかったっす」
トーマはズークから手を放し両手を上げた
「そっそれは……」
ギルドマスターと兵士達は解答に困っている
「何をやってる!捕えろ!」
ズークが命令すると兵士達は無抵抗なトーマを拘束した
「この男の資格剥奪はこの場でしろ!冒険者が王国に逆らうとどうなるか!牢屋にぶち込んでおけ!」
「宰相、この少年はまだ冒険者ではありません、明日の朝に試験を行う予定だったので、一般の人族です」
「なんだと〜!……関係ない!我に手を出すということは王国に逆らうという事!連れて行け!」
コーラルが拘束を振り払い、拘束されたトーマに駆け寄り抱きついた
「何やってんのトーマっち!……騎士になるんじゃなかったソ?……一番になるんじゃなかったソ?……ウチらを自由にしてくれるんじゃなかったソ……ウチら……同じ……目指し……ウチのせい……で」
コーラルは悔し涙を流し、トーマを連行させないようにおもいっきり抱きしめる
――こっコーラル……苦しい――
「悪い、コーラル……お前の夢……別の手考えるわ!」
トーマは笑顔で大丈夫だよと答えた
コーラルの手が緩みトーマは連れて行かれる
「お待ち下さい」
先程の治癒士の青年が綺麗な佇まいでそこにいる
「レイ・オーキッド様!?今日は別の者の予定だったはず……申し訳ありません、このような事態で……」
ギルドマスターと兵士達が動揺している
「いえ、急遽代わりに来ていたもので挨拶もせずに、ズーク宰相も来られていて驚きました」
「みっみっともないところを見せてしまいましたなぁ〜レイ殿、今、罪人を捕まえていたところでしてね〜まあ名誉の負傷ですわ〜」
ズークはグフッとニヤケ顔でレイを見る
「ああ、もう治癒済みです、そちらのお嬢さんも」
レイは近付いてもないのにズークとコーラルの顔を治癒した、いや気付かないうちに治癒が終わっていたのだ
「「――!」」
コーラルもズークも自分の頬をペタペタ不思議そうに触っている
――凄い!治癒を飛ばせる人もいるんだ!しかもイケメン……やる事もスマートだなぁ――
「失礼ながら、初めから拝見させてもらいましたが、彼は連行される必要ありません、もちろんそちらの獣人族の女性も、解放して下さい」
「「「――!」」」
「レイ殿!何を言っているのです!私はこの男に危害を加えられたのですぞ!」
「問題なく綺麗に治ってますよ」
レイは笑顔で優しくそう答えると
「ぐっ!」ズークは言葉が詰まる
「もう、これ以上身内の恥をこのような若者達に見せたくありません」
今度は声のトーンが少し低く、語気を強めて言った
――おおおおお!こんなカッコいい王国のトップもいるんだ〜……しかもイケメン――
ズークは悔しそうに何やら考えを巡らせている
「おお、そういえばその者は明日資格試験を受けるのであったな〜」
ズークはギルドマスターに確認している
「だったら、明日の試験の相手は我が選んでやる、それなら問題あるまい」
ズークはどうにかしてトーマを痛い目に合わせたいのだろう
レイはトーマと目を合わせると「いいのか」と目配せをくれたのでトーマは首肯した
「では……上で待たせてるから連れて来い!明日、朝だからの〜挨拶させておこうグフッ」
明日の試験相手が降りて来た
「グフッ紹介しよう!七星剣シュンカ・オーシャンだ!」
「はっ?」
――はぁぁぁ〜?王国最強〜!?――
読んでくださりありがとうございます。
今作を読んで
「面白そう!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ってくれたら↓の★★★★★を押して応援してくれるととても嬉しいです!
ブックマークもお願いします!
あなたの応援が、作者の更新の原動力になります!
よろしくお願いします!