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〜其々の今〜

――大厄災(だいやくさい)崩壊(ほうかい)が近付く時……「神託(しんたく)」がソレを止めるだろう――



「エリィ……「神託」が降りたんじゃない?」

「……うん……よく分かったねトーマくん」

「いつもエリィのこと見てるから分かるんだよな〜」

「――!トーマくん……わたしもいつも見てるよ……ちゃんと帰って来てくれたし、嬉しくて……ふふ」

「エリィ……おっ……おっ……オレ……エリィのことが……す……すっ……」

「トーマっち〜!おはよう〜!っちゃ」

「どわっ!……コーラル!今、大事な事を伝えてる最中(さいちゅう)に!」


「なんて〜!油断も(すき)もない男っちゃ!数々(かずかず)色恋沙汰(いろこいざた)を持っているにもかかわらず絶世の美女であるエリィちんにまで手を出そうとは!……く……トーマっち……さすがイケメンに成り上がった男なソ……噂は聞いておるか?ビビりんさん」


「うむ、コーラルどん!この男はな……なんと結婚の約束を……」

「どわ〜!ちょっと待ったぁ〜!……ビビさま……コーラルさま……ちょっとこっちにいいですか?」

 斗真はエリィをその場に置いて二人の手を引くと、その場を少し離れる


「結婚の約束?……」

 エリィはビビの言いかけた言葉が気になり落ち着かない様子だ


「……あの……お二人はもしかして……アンバーのことを……」


 コーラルは斗真の肩にそっと手を置く

「トーマっち……ウチはそんなこと気にせんっちゃ!」


「――!ぜ……全部知ってるの?」


ビビが首筋を噛んで血を吸いながら答える

「トーマ……エリィだけが知らない……一日三吸いで手を打つが?」


 斗真の表情が青ざめていく、血を吸われているからではない


「トーマはんは罪な男どすなぁ……これだけぎょうさんの女の子に好かれるとは、うちも混ぜて欲しいなあ……こないな色男とは思わしまへんどした」

アイボリーがどこからともなく現れる


「あ……アイさんまで……ということは……」

 

「さあ……説明してもらいましょうか?トーマさん!姉さんがこの場にいない間に僕が聞いておきましょう」

「……イルミナくん!」

 イルミナが鋭い目つきで見つめるが、斗真と目が合うと顔を赤らめて視線を逸らす


「フフフフ、クォークよ!お前はあれだな?甲斐性(かいしょう)なしだな!」


「――リット!くっ……屈辱」

リットはアイボリーに抱かれている、基本的には斗真と離れられないが数十メートルくらいは自由に出来るのだ


「オレはいったいどうすれば……」


「トーマくん……ちょっといい?」


「――!は……はい!」

 斗真は全てを話す時が来たのかとエリィに呼ばれてびくびくしている

 だが話の内容は「あの話」ではなく「神託」に関するものだった


「トーマくん……「神託」のことなんだけど……「ラビス」に大厄災が訪れると……」


「――!あっそうなんだ……そっちね……でも覚悟はしてたよ!オレがここに居る理由だね!「ラビス」を救うために存在するんだって!」


「――ち……違うよ!トーマくんはそのために存在してるんじゃない!」 


「うん、分かってるよ!みんなと出会うため……だよね」

「うん!でも……どうしよう……」

 エリィは不安な面持ちで斗真を見る

 

「とりあえずレイジンとシュンカさんに伝えてくるね」


 今、斗真達はゼグ獣王国にいる

イルミナ達をブラウン地下迷宮で保護し、獣王国へ帰還した後に斗真は単身「アース」に乗り込み「エリ」を救出して帰って来たのだ

 生身(なまみ)の「エリ」に会った美々とグリムは嬉しさのあまり泣き出してしまい、当然「エリ」も号泣していた

 自分の姿を悲観していた「エリ」は、自分がそう思い込んでいただけで十分(じゅうぶん)顔立ちやスタイルも良く可愛らしい女の子だ


「「エリ」、もう慣れた?」

「宗谷くん!こっちに来てから……なんかね……チカラが(みなぎ)ってるよ!へへ」

「でしょ!オレもそうだった!……「エリ」は寂しくない?親御さんに会えなくて……」

「……うん、わたしね嬉しいの!寂しいよりも嬉しいが勝っちゃって……ありがとう宗谷くん!迎えに来てくれて」


「「守るって約束しただろ」」


「――えっ?……なんか今……」

「ん?どうした?」


「……ううん……宗谷くんは「ラビス」を救うの?」


「「エリ」……オレはみんなを「守りたい」だけだよ……それが「ラビス」を救うことならそうしたい」


「わたしも一緒にいていい?」

「「ん?当たり前だろ、また美々とグリム呼んで料理作ってくれるんだろ?」」


「……うん!……そうだったね……へへ」


「アンタ、そういうとこなのよ!」

「美々〜!」

 エリはいつものように美々の腰へ抱きつく

 

「もうお前も大丈夫か?美々」

 

「ハァ?あーしを誰だと思ってんの……いつでも戦えるわよ!」

「トーマ!テメ〜、サトエリと二人だけで何してんだ……ま……まさか………こ……告白……」


「グリムくん?」

エリはグリムの発言には基本的に鈍感だ

 

「グリム、お前までオレのことを……そんな風に思って……」

 

 美々とグリムは重症だった、帝国でインディゴを退(しりぞ)けたが、その後の「新型トリッパー」には対応出来なかった

 イルミナの「未来視」とアイボリーの「幻惑」により二人を救出してなんとか逃げ切ることは出来たが「新型トリッパー」があまりにも強力でこれ以上戦うことは不可能と判断して身を隠すことを決めたのだ

 

 緊急事態の際にはブラウン工房の地下へ行くことは決まっておりイルミナ達は最下層で身を(ひそ)めて美々とグリムの応急処置をして対策を考えていた

 

 レイジンの空間転移により合流した際のイルミナは張り詰めた緊張から解放され斗真に抱きつきその胸で泣いた、安心させるように包み込む優しさの中に斗真の治癒は全員を癒していった

 

 二人の意識が戻るのを待ち空間転移で無事に脱出しゼグ獣王国へ帰還することが出来たのだ


「美々、レイジンとシュンカさんは?」

「「ボブ獣人王」と応接室よ……何かあったのね?」

「ああ、一緒に行くか?」

「……そうね……みんなで聞きましょう」


 応接室にはレイジンとレイ、シュンカに加えてセピアスがボブ獣人王と話をしている

 レイジンは「ゼロ」としてその姿を出してるので獣王国では「英雄」だ

 美々とグリムのことも知っているのはシュンカだけで「魔将校」とは誰も知らない


 斗真は応接室に入ると席に座ることもなく話し始める


「ボブ獣人王、大事な話があるので聞いてくれますか?」

「おぉ!斗真殿、どうされたのだ?」

 

 斗真はゼグ獣王国にとって「ゼロ」と同じように「英雄」だ

「新型トリッパー」の進軍により蹂躙(じゅうりん)された兵士達を助け、敵を全て撃破するという「ゼロ」と同様の活躍を見せた斗真は「次代の勇者」と呼ばれている


「「セブン」殿!お疲れ様です!」

 助けられた騎士長セピアスも「唯一無二の強さ」を目撃して斗真に対して尊敬の眼差しを向ける


「セピアスさん、オレのことは斗真でいいですよ……「セブン」がずいぶん広まっちゃったな……」


「そうですよね!「セブン」はコードネームですから、やはり「斗真」殿と呼ばせて頂きます!」


「……うん……コードネーム……なんか恥ずかしい……」


レイジンは優しい目で斗真を見つめる

二人っきりで行動して以来少し距離が縮まったように思える

 レイも斗真とは目配せをして頷き合うくらいには仲良くなっている、もちろん命の恩人でありエリィの事を任せたいと思っているからだ

 レイの復讐心が消えたわけではないが、ゼグ獣王国でのこの「繋がり」が彼の心の中を少し穏やかにしているのではないかと思う


「斗真、こちらも重要な情報がある!」

「じゃあそっちから話してもらえる?」

「「グリモア魔帝国」が「アーテル帝国」と戦争になるぞ!」

「――!魔族が?……もしかして場所は「アトランティス」?」

 

「さすがに察しがいいな……魔族が恐れているのは「アーテル帝国の科学の進歩」だろう……「アトランティス」には未知の文明がある、それを手に入れられると「ラビス」を掌握(しょうあく)されると感じているのかもしれない」

 

「「アトランティス」ってどうして誰も占領出来てないんだ?」

 

「「アトランティス」には入り口というものが無い、巨大な要塞は未知の物質で出来ていて壊すことも出来ない、どうして存在するのかも分からない……つまり何も分からないから怖いんだ」


 一同は静まり返る


「リット!」

 斗真がリットを呼び出す、アイボリーに抱かれていたはずのリットは強制的に斗真のもとへ召喚される


「……おい……当たり前のように呼び出すな!」

 リットは可愛いらしい表情だが怒っているようだ


「ちょっと聞きたいんだけど、「アトランティス」ってどうやって入るの?」


「……フフフ、おそらく「クレアーレグローブ」を持っていれば入れる」

 

「じゃあ「アトランティス」って何なんだ?」


「ふん……「ラビス」が誕生したのは何十万年前かは分からないが「アトランティス」は「一万二千年前」に突然現れたとされている」

 

「「ラビス」はまだそれだけの歴史しか経っていない?……」

 斗真は熟考(じゅくこう)する


「――はっ!「アトランティス」は「アース」から転移して来た!一万二千年前に、そしてクォークが言っていた「超次元的問題」!……まさか?……」


 斗真はエリィの「神託」と自らのクォークとの会話、それにリットの知識を合わせて「最悪の考察」が思い浮かぶ


「「ラビス」が消滅する……」


「「「――!」」」

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