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〜異世界ラビス〜

――あれ?……オレ死んでない?……空気が違う感じがする……撃たれたよな?……痛……くない……草の匂い?……いや森……どれくらいたった……あの子はどうなった――


 斗真はうっすらと目を開けると少し眩しい光に目を細めた、恐る恐る肩に触ると撃たれた跡がない

 横になったまま背中を触るとやはり傷が無い、服には銃痕(じゅうこん)はあるようだ


 ――あのゲートみたいなので異世界に来たってこと?……でも……ラビストリップって意識だけをアバターに飛ばすとか言ってたけど……オレ……どう見てもまんまこっちに来てる?――


「目が覚めましたか?」

覗き込む透き通るような声、繊細ながら良く通る声

 水を汲みに行ってのか片手にお椀のような物を抱えてもう片方にはスーツケースを持っている

 警戒した様子で「大丈夫ですか」と聞いてきた


「あっ……傷が無いんだけど……銃で撃たれたとこ……かなり致命傷だったと思うけど……」

 斗真は怖がらせないようになるべく優しく聞いた

「わたしには治癒魔法が使えるのでなんとかなりました、ただ魔法はアースでは使えないのでこちらに来てもらったのです、わたしを(かば)って怪我をさせてしまい申し訳ございません」


 ――治癒魔法……ほんとに異世界……ここが?――


 彼女は綺麗な姿勢で頭を下げている

「いっいやオレのほうが申し訳ないです……今までずっと適当に生きてきたから……あんなことになっちゃて、本当にご迷惑をおかけしました……みんな死んじゃったかも……」

 そう言葉に出すと先程の惨状を思い出し急に震えてきた 


 ――そうだ……目の前で頭を撃ち抜かれたり……血がいっぱい……うっ――

男達の頭を撃ち抜かれた姿、血の惨劇を思い出した斗真は吐き気がしてみっともなく嘔吐する

 「ハァハァ……あっあれ?」

 涙も出た、なんとなく生きた末に人の命を奪うようなことに加担した自分自身へ後悔が押し寄せて情けなくなった

 斗真はまだ十六歳の少年だ、怖かった、許して欲しかった、誰かに「許す」と言ってもらわないと前に進めない未熟者だ


 ラビス人の女の子は目閉じてしばらく斗真自身に考えさせる時間を与えてから目を開くと諭すように言う


 「あなたはわたしの命の恩人です、過程はどうあれ、あなたが居なかったらわたしはたぶん死んでいたかもしれません」

 ラビス人の女の子は優しく微笑んでいる


「わたしは(むし)ろ感謝してますよ」

 彼女は膝をついて目線を合わせる

「適当に生きてきて後悔されてるのでしたら、今から真剣に生きてみたらどうでしょう」

 斗真は顔を上げた

「真剣に……?」


 ――ああ、なんだこの子……言葉がなんだかスッと入る、オレが真剣になった事がないから?……真剣に考えた事がないから?――


「やり直していいの?あんなことしたのに……」

 斗真は再び(うつむ)いた


「それはあなたが決める事ですよ」

 彼女はじっと見守り、斗真を優しく見つめる


 ――そっか……オレがこの子を助けたように、この子は今オレを救おうとしてくれてるんだ……優しいな……オレも……こんな風に……誰かにしてあげれたら……――


 少しして斗真は立ち上がった、涙を拭いて「ありがとう」とだけ伝えると彼女は「いいえ」とだけ言った

 

「おっオレ……宗谷斗真(そうやとうま)って言います、十六歳です……こっちのこと全然分からないのでよかったら教えて下さい……(ちな)みに向こうに帰るつもりはありません」

 手を差し出し頭を下げた


「エレノアです……エリィとお呼びください」

エリィは両手でそっと握手して離すと手を胸にあてた


「ようこそ「ラビス」へ!」

優しい笑顔でそう言った 

 

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