〜新たな関係〜
ガーリア帝国へ向けて走る二頭のラーダーに「父と子」が並んでいる
レイジンは全てを語った
無言の時間が過ぎていく
気持ちを整理する時間も必要だろう
「……そっか……親父だったんだ……なんか初めて会った時から他人じゃない気がしたんだよ……そっか……」
トーマは走るラーダーから目の前の地平線を見つめたまま話し出した
「……苦労かけた……」
「レイジンは知らなかったんだろ?……オレの事」
「……知ったのは五年前だ」
「「神託」があったのもあるだろうけど……オレをこっちに連れて来てくれてありがとう……今、オレはスゲ〜幸せだよ!」
「……そうか……」
「帝国にムリヤリ連れて行こうとするんだもんな〜……そんなにグリディアが嫌い?……まあ確かにほとんどの人が差別体質だったけどね……グリムに殺されかけたけど……」
「……すまん……」
「オレね……ドイルさんの大剣使ってるんだ!」
「……知っている」
「レイジンってサラちゃんの仇になるんだよね?」
「そうだな……」
「でもこっちに来て分かった……多分みんな立場が違うだけなんだ……ドイルさんもたくさん帝国兵を殺してきたと思う……レイジンもそう……そしてオレも……生まれた場所が違うだけなんだ……だから……レイジンは悪くないよ!ってオレが言うのもなんだけど……恨んだりしてないよってこと!サラちゃんもきっとね……コーラルが教えてくれたんだ!そういう「気持ち」!」
「……いい「出会い」と「仲間」を持ったな」
「うん!……あと「大切な人」がいる……絶対に守りたい……だから……ごめん……母さんを死なせて……レイジンの「大切な人」を守れなかった……」
走るラーダーは涙を飛ばして行く
「……お前のせいじゃない」
「ずっと待ってたよ……母さん……ずっとホステスして待ってたよ……「大好きな人」と出会った場所だって……」
トーマには二人の想いが分かった
信じて待つ母を愚かだと思ってた
父親に関して何も語らなかったのは行方不明の原因が危険な内容だったからだと今知った
だから
だから申し訳なかった
もっと自分がしっかりしていれば
もしかしたら何か変わってたんじゃないかと
「大切な人」が自分に出来て初めて分かる
「母さんに会わせてあげたかったなぁ」
地平線からは目を離さない
隣を見ると母親の笑顔を思い出し涙が止まらなくなるから
「ありがとう……お前は紀子に似て優しいな」
父と子というにはあまりにも共に過ごした日々がない
「記憶」が人を作ると言われる、だったら「記憶」が関係も作るのだろう
レイジンは語った斗真の知らない過去の「記憶」を
斗真は語ったレイジンの知らない未来の「記憶」を
二人を繋ぐ「紀子の記憶」が二人の中の「紀子」を作り「新たな関係」を作っていくのだろう




